笠置シヅ子をモデルとする、戦後を明るく照らしたスター・福来スズ子(趣里)の物語を描く、連続テレビ小説「ブギウギ」。今回、日本随一の興行主・村山興業の御曹司で、スズ子が愛する人物・村山愛助を演じる水上恒司に、役への思いや物語の見どころについて話を聞いた。


スズ子を常に一番に考えている

今回、スズ子最愛の人物・村山愛助を僕が演じると聞いて怖さもありましたが、それ以上にうれしくて本当に身が引き締まる思いでした。“朝ドラ”に出演するのは今作が初になります。一人の人物をこんなに長い時間かけて演じ、その物語を毎朝皆さんにお届けできるのは本当にすてきなこと。そんなぜいたくな空間に参加できて、幸せな気持ちでいっぱいです。

愛助を演じるにあたっては、スズ子のことを常に一番に考えることを大切にしています。「ブギウギ」というスズ子の物語の中で、愛助は彼女にとって切っても切り離せない存在。ですから、自分が演じるキャラクターを中心に考えた役作りを今回は行っていません。

台本を読む段階から、「愛助がどのようにいたら、スズ子は楽しく生きていけるのだろうか」「このセリフは、スズ子の今後の糧となる言葉になるから明るく話そうか」といったことをずっと考えていますね。「スズ子にとっての愛助」として自分は何ができるのか、自問自答しながら演じているところです。

これまで描かれてきたように、スズ子に対して誠実に向き合う愛助の姿勢はすてきだなと思います。「人のために尽くして生きる」ってなかなか実行できないですよね。その一途な思いは、愛助を立たせていくうえで大事な部分だと感じています。また村山興業の御曹司である愛助は、裕福でチヤホヤされる存在だということもあり、自分と周りを比較して悩む一面もあります。そんな愛助の葛藤も丁寧に紡いでいきたいと思います。


「センスいいな、愛助」

趣里さんと共演するのは今回が初めてになります。実は現場でご一緒する前に、趣里さんが歌う「ラッパと娘」の音源をまずいただいたのですが、とても感動しました。すてきに歌うスズ子のことを愛する愛助を演じることができてうれしく思うと同時に、「スズ子さんを好きになるってセンスいいな、愛助」とも思いました(笑)。こんな感情を抱く役と出会えることはそうそうないのでうれしいです。

趣里さんが演じるスズ子も本当にすてきで、「スズ子にとっての愛助」をしっかり見せようという思いを新たにさせてくれます。良くも悪くも愛助は、スズ子しか愛せなかった男です。そうであるからこそなおさら、愛助との時間がスズ子の生きる原動力になったらと。趣里さんと役作りで何かお話をするということは特にありません。言葉で確認し合うのではなく、現場で生まれる感情やそのときのセッションを大事に作り上げています。

長期間撮影が続く“朝ドラ”はかなりタフだと思います。けれども趣里さんは苦しい表情を少しも見せず、撮影現場を温かく盛り立ててくださります。「ブギウギ」の撮影をすてきな時間にしたいという趣里さんの思いが強く伝わってきて、僕も励まされると同時に背筋が伸びる思いになりました。別作品の撮影と並行した時期もありましたが、趣里さんの姿に「趣里さんよりも大きいエネルギーを『ブギウギ』に注ぎ込もう」とポジティブな思いを抱くようになりました。“朝ドラ”初出演が「ブギウギ」で良かったと心から思います。


現代を生きる人たちを応援する作品

大阪ことばには、とても苦戦していますね。ことば指導の方には「七色の大阪ことばを使うな」と言われました(笑)。僕は福岡から東京に出てきていることもあり、いろんなイントネーションを出したり引っ込めたりしているようです。今、撮影終盤に差しかかっていますが、何が合っていて何が間違っているのか、まだまだわからないことも。いちばん悪戦苦闘しているところです。

物語は今、戦争が行われている真っただ中です。歌や踊りも制限され思うように活動できない、そしていつ自分の身に危険が迫るのかわからない、本当に厳しい時代だったと感じます。その時代をスズ子と愛助は手を取り合って懸命に生きていきます。

そんな2人の姿が、視聴者の皆さんの何か頑張るようなきっかけに少しでもなっていたらうれしいです。現代社会をたくましく生きる人たちを応援する作品になればと思っています。ぜひ最後まで楽しみにしていただけたらうれしいです。

水上恒司(みずかみ・こうし)
1999年生まれ、福岡県出身。NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「青天を衝け」、「アナウンサーたちの戦争」など。