笠置シヅ子をモデルとする、戦後を明るく照らしたスター・福来スズ子(趣里)の物語を描く、連続テレビ小説「ブギウギ」。今回、スズ子の付き人・小林小夜を演じる富田望生に、役への思いや物語の見どころについて話を聞いた。


――出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
「ブギウギ」の制作が発表されたときから、ずっと参加したいと思っていたので、出演のお話をいただいたときは「きたー!」と喜びました(笑)。笠置シヅ子さんの楽曲は、私の世代でも聴いたことがあるくらいなじみがありますし、「戦時中、歌に支えられた」という話を曾祖母から聞いて育ったので、今回出演ができて本当にうれしいです。

そして台本を読ませていただき、最初の小夜の第一声を読んだ瞬間、映像がバッと広がるような感覚がありました。私の地元・福島のことばを使う小夜ちゃんに親近感を覚えましたし、自分自身と近い部分もあって、なんて奇跡のような役なんだろうと思いました。

――小夜のどんなところに共通点を感じましたか?
思い立ったらすぐに行動する性格は似ているように思います。自分の中で咀嚼する前に言葉を発することなどは私もありますね。でも小夜ちゃんほどマシンガントークではないと思います(笑)。

――小夜が使っている福島ことばは、富田さんも使われますか?
使います! 小夜がよく話している「~してくんちぇ(~してください)」は私も地元で使っていました。同じ福島の中でも、地域によって発音などが違うこともあるのですが、スタッフの方から「富田さんのことばで大丈夫ですよ」と言っていただけたので、ことばに関してはストレスフリーですね(笑)。

――小夜を演じる上で大切にされていることはありますか?
小夜は本当にスズ子さんが大好きなんです。スズ子さんのパフォーマンスを一番近くで見られることをとても幸せに感じています。そのスズ子さんを慕う思いは、最後までブレずに大切にしていきたいと思います。

また小夜のおもしろいところは、雨が降ってきたと思ったら急に晴れたりする空模様のように、コロコロと感情が変化していくこと。そして、一つのことに対してあまりひきずらないんですよね。「親に捨てられ、奉公先から東京に逃げてきた」ことも、自分の過去を語る上で言葉にしてはいますが、気持ちとしてはそこまでひきずっているわけではないように感じます。ひきずっていたらスズ子さんにいきなり「弟子にしてほしい」と志願するような、大胆な行動はとれませんから。つらいことがあっても「次は何をしようか」と前を向く小夜ちゃんの姿勢はとてもすてきだなと思います。

――そんな小夜の前向きさに、スズ子も救われているような気がします。
そうだとうれしいですね。ときおり感情を爆発させる小夜ちゃんという存在によって、よりスズ子さんの決断力、心の強さが引き立つように私は感じています。愛助さん(水上恒司)とはまた違ったベクトルではありますが、スズ子さんの輝きが届きますように!と思いながら演じています。

――スズ子を演じる趣里さんと共演されていかがですか?
最高です! ヒロインを演じるのは本当に大変だと思います。撮影スケジュールもそうですが、スズ子さんはいろんな出会いや別れを繰り返す人生なので、辛いシーンも多いと思うんです。でも、趣里さんは本当に太陽のような方で、いつもニコッと笑ってくださいます。これが人々を魅了する力、オーラなのかと思いました。こっちが思わずついていきたいと思ってしまう、そんなパワーを持たれている方だと思います。目が合うたびに、「まぶしい!すてき!」と思っています(笑)。

――他の共演者とのエピソードはありますか?
羽鳥善一役の草彅剛さんとは「宮城発地域ドラマ ペペロンチーノ」(2021年)でご一緒したとき以来ですが、「弟子にしてくんちぇー!」などと明るく話しかけてくださってうれしかったです(笑)。草彅さんは、他の出演者の皆さんにもたくさん声をかけられていて。その優しいオーラを常に身にまとわれている感じが羽鳥先生のようですてきでした。スズ子さんと善一さんの今後のセッションもとても楽しみにしています。

――そして、小夜と恋人のサムの行く末も気になるところです。
びっくりしました! 小夜ちゃんがアメリカに行くかもしれないということは、実は最初の方から聞いていたんですが、まさか米兵さんと一緒になるなんて。その決断も大胆というか、小夜ちゃんらしいですよね。これまでスズ子さんを信じて人生を共にしてきた小夜ちゃんが、今度はサムを信頼して一緒に歩んでいこうとする。当時、海外に行くことはとても勇気のいることだと思います。戦争直後で、どんな受け入れ方をされるか分からない場所に飛び込もうとするってすごいですよね。その決断力は本当に尊敬します。

――最後にメッセージをお願いします!
「ブギウギ」は映像作品ではありますが、当時の空気や時代の香りを感じられる作品になっています。スズ子さんのパワフルなパフォーマンスを劇場で見ている気持ちになった方も多いはずです。時代は離れていますが、身近に感じていただけているのではないでしょうか。ぜひ最後まで、福来スズ子の人生を追いかけていただけたらうれしいです。

富田望生(とみた・みう)
2000年生まれ、福島県出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「なつぞら」、「ペペロンチーノ」「一橋桐子の犯罪日記」「富田望生の日日是芸術」など。