ドラマ「岸辺露伴は動かない」シリーズの最新エピソード「密漁海岸」の記者会見が4月22日に行われ、主演の岸辺露伴役・高橋一生さん、共演の泉京香役・飯豊まりえさん、脚本・演出の渡辺一貴さんらが出席した。

同作は、漫画家・あらひこさんの大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのスピンオフ『きしはんうごかない』が原作。

主人公の漫画家・岸辺露伴は、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』(第4部)の登場人物のひとりで、相手を“本”にして、その生い立ちや秘密を知り、書き込んで指示を与えることができる“ヘブンズ・ドアー”という特殊な能力を持っている。そんな彼が奇妙な事件に遭遇し、立ち向かう姿を描いている。

これまで2020年末に第1期(第1~3話)、’21年末には第2期(第4~6話)、’22年末に(第7~8話)、’23年には映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が制作され、原作ファンはもちろんのこと、回を重ねるごとに熱心なファンを増やしている。

【第9話「密漁海岸」のあらすじ】
露伴邸の近くにひっそりとオープンしたイタリアンレストラン。その店を訪れた漫画家・岸辺露伴(高橋一生)と担当編集の泉京香(飯豊まりえ)が出会ったのは、供する料理で客の体の悪いところを改善させる不思議な力を持ったシェフのトニオ・トラサルディ(Alfredo Chiarenza)だった。
トニオは露伴に、どんな病気でも治してしまうという伝説のヒョウガラクロアワビを手に入れようと密漁を持ちかける。実はトニオには、重い病気を抱えたフィアンセ・森嶋初音(蓮佛美沙子)がいたのだ。

会見冒頭、制作統括の土橋圭介さんが、コロナ禍にスタートしたシリーズが、今作の撮影で初めてマスクなしで行われたことの感慨深さを語った。

そして、以前からファンの間でドラマ化の要望が高かった人気作「密漁海岸」には、そう簡単に手を付けられないと考えていたものの、回を重ねてようやく取り組めたとコメント。脚本・演出の渡辺一貴さんも同様の気持ちを語った。

「やろうと思っていても手の届かない存在だった『密漁海岸』に、ようやく5年目にして手が届きました。4年間の蓄積が出ていますし、新しい露伴、京香の一面も出ています。たぶん今までで一番体を張っていただいているかなと思いますので、安定感に加えて、新しいチャレンジも楽しんでいただけたらうれしいです」(渡辺さん

高橋さんも、マスクなしの撮影で、ようやくスタッフの顔を見られるようになったことへの喜びを語った。

「チームのスタッフさん一人ひとりのお顔が見られるのは、僕の中でも感動する出来事でした。スタッフは最初のお客さんだと思っているので、笑顔や充実した表情を現場で確認しながら撮影をしていけることは、僕にとってはお芝居を楽しいと思えるエネルギーにもなります」(高橋さん

飯豊さんは、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の撮影の時点では、まだドラマ新作の話が決まっていなかったことを明かした。

「こんなにも早く新作を、そして『密漁海岸』をみなさまにお届けできるのはすごくうれしいですし、5年も続いているチームで出来上がった絆があれば、なんでもできるんじゃないかと確信しています」(飯豊さん

会見には、トニオを演じたAlfredo Chiarenzaさんも駆けつけた。トニオは『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部「ダイヤモンドは砕けない」のキャラクターで、今作にも登場する。

配役が発表された時、SNSでは「トニオそのもの!」と絶賛されており、本人も「トニオというキャラクターは原作でも人気なのでプレッシャーを感じますが、皆さんに気に入ってもらえたらうれしいです」とコメント。高橋さんや、飯豊さんも彼の熱演を絶賛した。

「Alfredoはすごく実直で真面目であの役に取り組んでくださっていて、会った瞬間トニオだと思いました! 彼が海面でうつ伏せになるシーンがあるのですが、本当におぼれているんじゃないかっていうギリギリまで浮いていました。

今回は彼が主役で、作品のグレードを上げてくださっています。人柄のよさもにじみでていると思うので、ぜひ楽しんでほしいですね」(高橋さん

「セリフの量が多くて、日本語で大変なのに、完璧にこなされていて、撮影をスムーズに進められるようにかなりの努力をされていると感じました。トニオの衣装がぴったりで、原作のままでした!」(飯豊さん

「密漁海岸」は海中での描写があるため、実写化が難しいと思われていた。実際、9話目にしてようやく登場したわけだが、予算の問題だけではなかったと渡辺さんは話す。

「どのエピソードにしようかという話をした時、『密漁海岸』は人気が高いものの、岸辺露伴がどういうキャラクターで、どんな能力があるかを知らない人も大勢いる中で、最初にエピソードをやるにはハイブローではないかと。

造形や表現がどれだけできるのかも未知数でしたが、4年間いろいろとトライし、積み重ねていくことで、密漁海岸の特殊造形や表現が可能になってきたところがあります。たぶん1、2年目だったら思いつかなかったんじゃないかな」(渡辺さん

海岸でアワビを密漁するシーンは、海でのロケと水深10メートルのダイビングプールで数日間にわたって撮影された。高橋さんは撮影前のテストから参加し、ダイビングプールでの撮影に挑んだ。

「見ているみなさんには大変さがあまり伝わらないと思うのですが、思った以上に息が続かない! それに、肺は本当に浮き袋なんだと実感しましたね。息を吐ききった状態じゃないと、体って沈まないんです。逆にカットがかかった後、上がっていけないっていうことがあって。息ができないと、一瞬で気を失いそうになります」(高橋さん

と、撮影の苦労を吐露。

「あとは、スタッフさんがアワビに重しを仕込んではどうかとか、僕を沈めるための対策をたくさんしてくださったおかげで、映像としては臨場感ある、かつ、芸術的なカットに仕上がっていると思います」(高橋さん

本作では極力CGを使わず、アナログ表現でどこまでいけるかを追求している側面があると語る渡辺さん。

「いまは何でもCGで表現できてしまうけど、本当にそれが面白いのかな? というのはいつも思っています。全部見せずに、隠している影の部分で想像してもらうことも大事だなと。私は今50代なので、子どもの頃に見た特撮映画はみな手作りでやっていましたが、それがチープだと思ったことは一度もないんです。

アナログで表現できる臨場感みたいなものが大切だ思っています。海のシーンで出てくるアワビは実際に作っていますし、ドラマ前半、トニオのレストランで起きる不思議な現象も、8〜9割ぐらいはその場で実際にやっていて、CGはちょっとプラスアルファーするくらいで作っています」(渡辺さん

ドラマを作るにあたって、原作の荒木飛呂彦さんと直接やりとりすることはないが、編集部とは打ち合わせをしているという。

「編集部のみなさんと綿密に打ち合わせをして、荒木先生にご報告して、リアクションいただいています。とてもフレキシブルに対応してくださり、こちらを尊重もしていただきつつ、読み間違えている部分は修正してもらっています」(渡辺さん

荒木さんと番組側の良好な関係を表すエピソードがある。2022年に放送された第7話「ホットサマー・マーサ」は、シリーズが始まった後に荒木さんが描き下ろした新作エピソードで、原作では「富豪村」にしか登場しない、露伴の担当編集・泉京香が再登場している。

「我々としてはとてもうれしいです! 荒木先生から直接ご感想をいただいたことはありませんが、ドラマをこれだけ続けられているということは、マイナスイメージを持たれているわけはないということかな、と思っています」(渡辺さん

本作がドラマシリーズとして始まり、映画化を経た上で、再び新作をドラマとして放送することについて、渡辺さんは、「原点に戻ったような感じ」と話す。

「映画は、露伴の過去や個人的な部分を掘り下げる静かな話でした。今回『密漁海岸』をやらせていただくことになり、前半部分に『ダイヤモンドは砕けない』のエピソードを入れていることもあって、原点に戻る気持ちでいます」(渡辺さん

また、荒唐無稽な部分をしっかりと説得力のある設定にして、地に足のついた変なドラマを作りたいというのは、最初にシリーズを始めた時から考えていたことだという。

「荒木先生の原作は、それ自体がとても魅力的で個性的なので、簡単なエピソードは何ひとつありません。毎回新しい宿題をいただいて、それをクリアするためにチャレンジをし続けている感じです。これどうするんだろう? と毎回思いながら取り組んでいます」(渡辺さん

新作「密漁海岸」の放送に合わせ、第3期の第7話「ホットサマー・マーサ」と第8話「ジャンケン小僧」が総合テレビで再放送されるほか、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』もテレビで初放送される。大型連休から始まる一連の放送を見て、ぜひ岸辺露伴の世界に浸ってほしい。


ドラマ 『岸辺露伴は動かない』

第9話「密漁海岸」
5月10日(金) 総合 午後10:00〜11:00
5月5日(日) BSP4K 午後1:00〜2:00*先行放送

ドラマ第3期第7話「ホットサマー・マーサ」第8話「ジャンケン小僧」(再放送)
5月5日(日) 総合 午後4:10〜5:58

映画 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
5月6日(月) 総合 午後3:55〜5:54
4月27日(土) BSP4K 午後7:00〜8:59*先行放送

ドラマ「岸辺露伴は動かない 密漁海岸」公式サイトはこちら

兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。