ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、ふじわらのみちかね役・玉置玲央さん、藤原あき役・吉田羊さんから!


玉置玲央さんの第18回振り返り

──道兼の死について、どのように受け止めましたか?

道兼は、第1回でまひろ(吉高由里子)の母・ちやは(国仲涼子)の命を奪っています。しかも、そこに崇高な理由なんてなくて、あるのは抑圧された自分の心だったり、結果を出さなきゃというあせりだったり、父からの愛情を十分に注いでもらってないという不満だったり。それらが積もり積もって爆発したことで、理不尽な殺人につながったわけです。

登場人物の死は、その物語に大きく関わる大事なものです。でも、道兼の死に関しては“死ぬことは特別じゃない”という思いを感じながら、お芝居をさせていただきました。諸行無常じゃないですけど、結局はみんな死んでしまう。それがあまりドラマチックにならないほうがいいというか……。

人の死には、それほど大きな理由なんてないんじゃないかなと思うんです。ちやはを殺めた道兼の死が、いん応報おうほうということではなく、「人は死ぬ時は死ぬ」という、長い歴史の中で当たり前に繰り返されてきた命の営みだった。そのように見えればいいな、と思っています。

——道兼の最後のシーンは、リハーサルで変わったそうですね。

えきびょうにかかって倒れた道兼を道長みちなが(柄本佑)が見舞いに来るシーンで、台本上は駆けつけた道長に対して道兼が「病気がうつるから入ってくるな!」と突っぱねて、道長もそのまま御簾みすごしに道兼を見やって去っていくシーンだったんです。

リハーサルのときに、佑くんが「いや、道長は御簾のなかに入る。入って兄に寄りそうよ」と、演出の中泉(慧)さんに提案してくれて、ゴホゴホせきをして倒れこむ俺を、たまらずに御簾をバッとはねのけて入ってきて背中をさする芝居をしてくれたんです。

でも、中泉さんも迷って、「考えさせてほしい」と確定せずに持ち帰られたんですね。

数日後の撮影のときに、佑くんが「やっぱり道長は寄り添うと思う」と重ねて、中泉さんも「そういう方向性もありますね」と納得して変更になったんですけど、それが道兼的には嬉しいと言うか、ありがたくて……。

もちろん当初通りの芝居もできるし、そうした方が良い可能性もあるとは思ったんですけど、佑くんが提案を貫き通してくれたことと、道長として最後まで道兼に寄り添ってくれたこととが重なって……。

第15回で「兄上は変われます」と道長から熱く説得されて変わり始めた道兼の転換点が、一方的なものじゃないと分かった瞬間でした。ブレまくっていた道兼に、道長がブレずに寄り添ってくれたことに、すごく救われました。佑くんが道長で良かったと思ったし、佑くんと共演できて良かったと思いました。

カメラが止まった後も、咳が止まらなくなっちゃったんですけど、佑くんが「つらいね、つらいよね」ってずっと背中をさすってくれて……。これで道兼としての役割と、その死を全うできるなと思えて、幸せでした。


吉田羊さんの第18回振り返り

——一条天皇(塩野瑛久)に対し、道長を関白後継に推挙する場面。どんな気持ちで演じましたか?

このシーンは、大嫌いなふじわらの伊周これちか(三浦翔平)を一条から遠ざける意図があります。一条が伊周の言いなりになっていくことを危惧きぐしたと想像しています。

周囲の意見に流されず、自分で考え、答えを導き出す人になってほしいと願ったのかな、と。が泣きながら直談判じかだんぱんしたと伝えられますが、その涙にうそはないと思います。

また、伊周の母であるたかさん(板谷由夏)の実家・高階たかしな家は、(下級貴族の)受領ずりょう階級なんですよね。なので、高階家から関白を出すわけにはいかないという思いがあったのかもしれません。

でもそれ以上に、道長がる政治を見たいと願ったのではないでしょうか。純粋に道長の能力や人間性を買っていたと思いますし、彼が上に立てば、きっとこの国は良くなるという確信に近い願いのようなものもあったはずです。

役作りの過程で読んだ資料に、詮子が亡くなったとき道長が彼女の遺骨を首にかけて葬儀の準備をした、という記述を見かけました。

史実ではなく創作だったのですが、そんな物語が生まれるほどの姉弟の信頼関係だったらいいなと思いましたし、要職に押し上げてくれた恩だけでなく、純粋に道長は詮子を慕ってくれていたのかなと想像しながら、道長役の柄本佑さんとお芝居をしています。

——一条天皇役の塩野瑛久さんはいかがでしたか?

塩野さんの一条天皇は、私が台本を読んでイメージしていた雰囲気とは、いい意味で少し違っていました。頼りなげな様子はじんもなく、真っすぐな心で、まさにいま親離れをせんとするような強さも垣間かいま見えました。

お芝居(感情)のキャッチボールを大切にされ、反応もライブそのものでしたから、私が考えていた以上の感情を引き出していただきました。

初めての共演でしたが、心通い合えるお相手で、とても感謝しています。詮子と一条について私が語ったインタビュー記事も読んでくださっていて、「ここまでイメージして演じられているんですね」って、すごくほめてくださったので「いい息子だな~」と思いながら(笑)。

そういう一生懸命なところも含めて、塩野さんに助けられました。