最終回まで残りわずかとなった大河ドラマ「光る君へ」。ドラマが大きな盛り上がりを見せるなか、12月2日に東京・渋谷のNHKホールで、「光る君へ」のファン感謝祭が開催された。
およそ2,900人の来場者が見守る中、ゲストとして登場したのは「光る君へ」主人公のまひろ役の吉高由里子、藤原道長役の柄本佑、公任役の町田啓太、一条天皇役の塩野瑛久、彰子役の見上愛。さらに斉信役の金田哲とききょう(清少納言)役のファーストサマーウイカが司会を務めるという、豪華な顔合わせとなった。
会場ロビーには、藤壺のセットが再現!
来場者を迎えるロビーには、劇中で中宮・彰子の生活空間となっていた藤壺の主座廻りのセットが再現され、「松藤」と呼ばれる中庭の藤の花房も置かれていた。熱心に見学するファンたちが列をなし、これから始まるイベントへの期待感が高まっていく。
ウイカ、金田、柄本、町田、塩野、見上に続いて、吉高がステージに!
ステージには、中央に巨大な階段が設置され、その両サイドに各4つの几帳、そして前方に色とりどりの花が飾られ、全体が薄紫色で統一されている。
そして開演。登壇する出演者たちの名場面がモニターに流されると、金田とウイカが大階段の最上段に現れ、ウイカが金田の手を取ってエスコートしながら階段を降り、会場は笑い声に包まれた。
今回の観客者数が約2,900人なのに対して、応募総数は約28,000件。1件につき2名入場可能のため、当選倍率は約18倍だったことが金田から明かされると、会場からは大きなどよめきが起きた。
続いて登場したのは、町田、柄本、塩野、見上の4人。大歓声を浴びながら階段を降りた町田が「熱気がすごすぎて、笑みが止まらなくなりました。かっこよく登場したかったのに……」と漏らす場面も。また、やや髪が伸びて日焼けした柄本に、ウイカが「黒くなっていませんか?」と問いかけると、柄本は「実資(秋山竜次)さん寄りにしたくて、島で焼いてきました」とおどけてみせた。
さらに観客全員が声を合わせて「まひろー!」と呼びかけると、大歓声のなか、吉高が階段を降りてきて、「みんなと一緒に降りたかった」と照れ笑いを浮かべた。ウイカが、この日のファン感謝祭が「『チーム光る君へ』からドラマを愛してくださった皆様に感謝を伝える会」であることを宣言、一夜限りのプログラムがスタートした。
名場面を出演者の生解説付きで
最初の企画は、イベントに応募したファンが選んだ「もう一度見たい名場面ベスト10」の発表。最初に10位から5位までがスクリーンに投影され、それぞれについて出演者がコメントを寄せる。
9位の「狂気の呪詛」では、伊周役の三浦翔平が呪符をかじる写真に盛り上がり、柄本が「(呪詛は)僕がいちばん受けていたけれど……」と漏らすと、金田が「でも呪詛チカ(呪詛する伊周)の呪いは、道長には効いてなかったよね」と冷静なツッコミを入れる。
また、塩野は8位の「ききょうの生き様」を挙げ、「香炉峰の雪」のシーンがすてきだったと回顧。見上は7位の「道長の出家」について、自分がその現場に立ち会っていたときの気持ちを明かした。
町田は5位の「打毬の青春」で、このシーンを撮影したときに、「今日の試合はなかなか良かった」などと、アドリブの会話を入れていたことを告白。しかし、平安時代には存在しない言葉が多かったため、全部がアフレコになったという裏話を語った。
このシーンを紹介するときには、背後のモニターには、斉信、公任、道長が上半身をはだけて汗を拭く画像が映し出される。それを見たウイカが、「トレーディングカードにしてほしい」と言うと、あちこちで大きくうなずく観客の姿があった。
因みに、10位は「直秀(毎熊克哉)の死」、6位は「雅な世界観」だった。4位以降は、その場面を映像で見ながらのやりとりに。
4位の「望月の歌」では、柄本が「あれ、俺の声、こんなに小さかった?」「息子たちの衣装が豪華だったなー」と視聴者目線で感想を語り始める。そして、道長がまひろを振り返るカットになると、吉高が「恥ずかしくて見られない」と、実況中継のような状態に。柄本によると「1人だけ前に出てセリフをしゃべるので、卒業式みたいな感じだった」そうだ。
3位の「彰子の告白」では、彰子の一条天皇に対する「お慕いしております!」のセリフに「きゃー!」「言ったー!」と出演者たちは大盛り上がり。見上がひたすら恥ずかしがる中、「また来る」と言って去る一条天皇の姿を見て、吉高が「抱きしめろよ! 絶望的な気持ちになるよ、こっちは」とブーイングすると、塩野が「だって、急に言われるんだもの!」と汗だくで反論する。
そして、ウイカが「おふたりがいらっしゃるので」と話を振り、このシーンを生で再現してもらうことに! 見上は観客席に向かって気持ちを込めて「お慕いしております!」、さらに塩野が観客席からの「お慕いしております!」の声に「また来る」と返して、大喝采を浴びた。
2位の「源氏物語誕生」は、吉高自身もワクワクする美しいシーンでとても気に入っているものの、文字が書かれた紙がたくさん降ってくる演出に、これから文字をたくさん練習する必要があると感じ、撮影中は「もう降ってくるなよぉ」と思っていたそうだ。
そして1位は「まひろと道長の逢瀬」。モニターに映し出されるふたりのラブシーンに、柄本は「皆で見てどうするの!?」と大テレ。キスシーンが流れた瞬間に「アドリブですか?」と聞く金田に、吉高が即座に「アドリブだったら、おかしいでしょ!(笑)」と切り返し、火照った顔を自分の掌で扇いでいた。
さらにランキングに入ってない場面として、ウイカが「鳥鍋パーティー」を挙げると、「光る君へ」に登場する食べ物はすべて美味しかったと、柄本、町田、金田が盛り上がる。一方、吉高は「為時邸では、カチカチの魚でした」と自虐的に笑い、塩野も「一条天皇が食事をするシーンはなかったので、僕は何も食べていません」と寂しそうにしていた。
ゆかりの地についての話題も
続いての企画は、「光る君へ」ゆかりの地を語るコーナー。
作品にも登場した石山寺の現在の座主を務める鷲尾龍華さんがVTRメッセージを寄せたほか、ゆかりの地を訪れた出演者たちが思い出話を展開。吉高は、さまざまな場所で開かれた「光る君へ」関連イベントに出演したことで、「こんなに新幹線、飛行機に乗った1年はなかった」と振り返り、交通機関のない平安時代の旅の大変さに思いを馳せた。
飾らない言葉でドラマの裏話を織り込む吉高は、イベント前日に第46回「刀伊の入寇」が放送されたこともあって、観客席に「見た?」と問いかけ、その盛りだくさんな内容に、「できることなら、台本を見せてあげたい」と語った。
続いては、ファンの人たちからの質問コーナー。
「人生のどの瞬間が、まひろにとっていちばん幸せだったと思いますか?」という質問に、吉高は「むずっ!」と絶句しつつも、「母のちやは(国仲涼子)が殺される前の幸せな時間と……、でも、いちばんは書く喜びや楽しさに出会えたことかな」と回答。
また柄本は「道長の役職や心境がどんどん変化していく中で、どのように切り替えて演じていましたか?」という質問に「声がいちばん大きいですね。青年期は若々しく。でも、物語のなかで考えが熟成していくし、髭なども増えるので、そこまで極端に変えなくても大丈夫かな、という意識ではありました。一貫していたのは『まひろ』ということで、心に留めていました」と答えた。
そして「F4(道長・公任・斉信・行成4人の通称)の雅な裏話を教えてください」という質問に、町田が「いつも他愛ないことをしゃべっていたので、雅な雰囲気はあまりなくて……」と話し始めると、柄本が「顔を合わせたら、ずっと話していて。内容を覚えてないくらい」と受ける。すると吉高が「もう、ほぼ、おばちゃんだよね」と鋭いツッコミを。それでも町田は「F4で話しているときは庭を見ていることが多かったのですが、そのセットが年代や季節によって変わっていくんですよ。それはとても雅でした」と話をまとめた。
「彰子を演じてよかったと思った瞬間は?」と聞かれた見上は、「撮影中ずっと、そう思っていました」と即答。登場時は口数が少なく「仰せのままに」しか口にしなかったことで、「リハーサルで、皆さんが長いセリフを覚えていらっしゃるのに、ひとり罪悪感があって……」と胸のうちを明かしつつも、彰子が告白する直前に、まひろからいろんな言葉をかけられたシーンは、「演じていても『生きててよかった』という気持ちになりました」と、まひろを体現した吉高への感謝を口にしていた。
そして塩野には「御簾があることでの演技の難しさは?」という質問が。「御簾の中から外は見えるので、御簾に隠れて僕の姿が見えない共演の皆さんのほうが大変だったと思う」と答える塩野に、ウイカが「位が高い人と対面するときは、目線を合わせず下を向いて話さなくてはならないので大変」とこぼし、吉高も「かつらが重くて首が折れそうになる」と呼応した。
愛おしい現場だったと語る吉高に、皆が同意
続いて、スクリーンに映し出されたのは、為時を演じた岸谷五朗からのVTRメッセージ。吉高に対して「いつも和ませてくれ、優しさにあふれる現場でした。あなたの持っている魅力が、今回の大河ドラマを優しいドラマにしてくれたと思います。撮影終了時に、メールをもらって、父親として、本当にうれしくなりました」と画面の中から語りかけた。
その言葉に、吉高も「ほっこりしますね」と感激もひとしお。町田が「共演者がクランクアップするたびに、吉高さんは必ず見送りに来てくれましたね。後ろのほうで微笑んでいるその姿を見ただけで、泣きそうになりました」と、吉高の気遣いぶりを称えていた。そのほかの出演者も「優しい現場」であったことを強調していた。
やがてファンミーティングは終演に向かう。名残惜しさから、ウイカが「千年続くイベントにしましょうよ」と会場を煽ると大拍手。そして出演者たちは、それぞれメッセージを述べた。
見上「たくさんの方に愛されたドラマに、彰子というすてきな役で出演できて、本当に幸せだなと改めて感じました。最終回まで楽しみにしていてください」
塩野「一条天皇がドラマから退場して以降、台本をもらえていないので、僕も先のストーリーを知らないんです。皆さんと一緒に最終回を見届けたいと思っています」
町田「会場の皆さんの顔を見ていると、ドラマを楽しんでくださっていることが伝わってきて、ジーンとしてしまいました。僕はこの現場の雰囲気が大好きで、参加させてもらって光栄でした」
ウイカ「この作品で私自身の平安時代の印象がものすごく鮮やかになって、身近に感じられるようになりました。千年前の作品が今も語り継がれているように、千年後の日本人も『光る君へ』を見返してくれたらいいなと思えるくらい大切な作品になりました」
金田「昔から大河ドラマファンで『まさか自分が』とプレッシャーを感じていましたが、皆さんが優しくて。このメンバーで、本当にありがたかったし、一視聴者の立場でも放送を楽しんでいます」
柄本「今日のような雰囲気の仲のいいチームで、かつ緊張感を持ちながら撮影しておりました。終わった寂しさよりも、皆さんの熱量に接してパワーをもらいました」
そして最後に言葉を求められた吉高は、「私がしゃべっちゃったら、イベントが終わっちゃうよね」と寂しげな表情を浮かべる。「来年もやりましょうよ」(ウイカ)、「来年以降は近況報告みたいになっちゃうけど(笑)」(柄本)とチャチャを入れる周囲の声を受けながら、吉高は言葉を紡いでいった。
「こういうノリで2年近く携わりましたけど、すごく愛のある現場、優しい世界だったと思います。習い事もたくさん経験させていただきました。あと2回で終わってしまうのかと思うと嘘みたいですけど、たくさんの方が見守ってくださって、私は幸せ者だなと実感しています。『光る君へ』という作品を通して、視聴者の皆さんの人生の関係者になれたことが、私のいちばんの宝物だと思います」
最後に吉高が「来年になったら、『光る君へ』のポスターがはがされると思うと、今年は夢を見ていたんじゃないかと……」と語ると、ウイカが「来年も貼りましょう!」と反応。思わず吉高が「そうか、勝手に貼っちゃおう。『べらぼう』の上から」とはっちゃけると、金田が「それは、さすがにまずいです」と笑顔で制止。吉高は「それだけ寂しく感じるくらい愛おしい作品でした。あと2回、最後まで見守ってください」と力強く訴え、会場から喝采を浴びた。
最後は、観客席も写し込んでの記念撮影。出演者たちは役名のボードを手に持ちながら、満員の客席を背景に笑顔を見せる。そして拍手に送られてステージから去る際、名残惜しそうに何度も客席に手を振る姿が、出演者にとっても内容の濃いファンミーティングであることを物語っていた。
今回のイベントの模様は、12月14日(土)午後3時5分から総合テレビで、15日(日)午前10時35分からNHK BSで放送される予定。NHKプラスでの同時・見逃し配信もある。