3人の娘を入内させ、一族から帝を出すという栄華を極めた源倫子だが、夫・道長(柄本佑)の気持ちを振り向かせることはかなわなかった。最終回を前に、まひろ(吉高由里子)と向き合うことになった倫子の思いについて、演じる黒木華に聞いた。
道長がまひろに贈り物をし始めたあたりから、ふたりの関係に勘づいていた
——第47回のラストシーンで、まひろに「あなたと殿は、いつからなの?」と詰め寄る、衝撃的なシーンがありました。最終回で直接対決という展開を、どう感じていらっしゃいますか?
台本をいただいたとき、私もちょっと驚きました(笑)。というのも、私自身は、倫子は最初からそのことは割り切っているんじゃないかと思っていたので……。
平安時代の貴族社会でのことですし、たとえ、道長が外にそういう関係を作っていたとしても、それを乗り越えられるくらい、道長と倫子は夫婦として、とてもいいパートナーシップを築けていましたしね。
だから、「今なんだ」って(笑)。でも、そこはやっぱり大石(静)さんが見どころだと思って持ってこられたのだと思います。
──倫子はいつごろから、ふたりの関係に気づいていたと思われますか?
第36回の敦成親王の「五十日の儀」で、道長とまひろが歌を交わしあったときには、すでに「あーあ、周りにバレバレじゃないの。仮にも左大臣なんだから、そのあたり、気をつけてくださいね」という気持ちだったので、その前には気づいていただろうと思います。
たくさん贈り物をし始めたあたりから、あやしいとは思っていたんじゃないでしょうか。それに、まひろも同じ家の中にいたわけですから、どうしたって何か耳に入ってくるでしょうし、薄々勘づいていたと思います。それで、何かというとまひろのことばかり見ている道長を見て、「もう、浮かれちゃって」と思っていたのではないかなと、私は解釈していました。
妻として、母として、倫子は倫子の人生を全うした
——これまで1年間、演じてこられた源倫子という人物について、いま改めてその魅力はどこだと思われますか?
史実でも、道長は、「倫子の後ろ盾があったからこそ、自分は成功することができた」というような言葉を残しているんですよね。倫子は、それくらい内助の功を尽くした人。そういう賢さ、愛情の深さ、懐の深さが魅力だったのではないかと思っています。
倫子は、自分以外に道長には愛する女性がいることには早くから気づいていたし、その部分では寂しさもあったと思いますが、彼女は彼女の人生を全うしています。好きな人を夫にし、子どももたくさん授かって、さらに娘を入内させたばかりか、孫を帝にまでしました。妻として、母として、できることは全部やったわけですから。
──道長と倫子のシーンで印象的だったシーンは何でしょう。
彰子(見上愛)の最初の懐妊を、道長が告げにきてくれた時ですね。カメラには映っていませんでしたが、ふたりで抱き合って涙を流したほどでした。夫婦としてひとつのことを一緒に成し遂げた、ふたりの気持ちが通じ合ったと、心から思えたシーンでした。
もちろん、当時の倫子は、まひろと道長の関係も知らなかったわけですけど、そういう夫と気持ちが通じた思い出があったからこそ、倫子は最後まで夫を愛し続けられたのだと思います。
──倫子はずっと道長のことを愛し続けているのに、道長のほうは「親の勧めで結婚してよかった」とドライな感想を言ったりしています。この温度差をどう感じますか?
悲しいですよね。倫子は、やっぱり夫の愛情を欲していたと思うので。
だからこそ、夫が目指す道を一緒に歩んで、その中で自分にできることはやってきたと思うんです。そうして迎えた後半生だから、これからは二人きりで過ごそうと言っているのに、道長にはかわされてしまって……。仕方ないと思ってはいるでしょうけど、寂しいですよね。
──まひろに対する思いに変化はありますか?
最初にサロンで出会った時には、「面白いおなごが来たな」という印象ですよね。身分も下だし、サロンでの身の置き方がわからない様子も何ともかわいらしくて、サロンの主人としては面倒を見なくちゃいけないという姉のような感覚もあって。そして、その中で、彼女にはほかの女の子たちにはない才能や面白さがあることに気づいた。
娘の彰子の面倒を見てもらうことになってからは、とても頼りになる存在として見ていたと思います。しかも、自分がサロン時代に認めていた才能が、思っていた以上のものだったことにも驚いたでしょうね。
そんなまひろが、道長の想い人だったことがわかって……どうなんでしょう。それは、あまりいい思いはしなかったでしょう。でも、彼女には自分にないものがあることはわかっているので……。友達のように親しく接していた分、つらいとは思います。ひと言では難しいですね。
吉高さんとふたりきりでお芝居をするのはサロン以来なので楽しみ
──いよいよ最終回でまひろと直接対決となります。対決といえば、道長のもう一人の妻・明子(瀧内公美)とのさや当てシーンも話題になりました。あの時は、どんな感じでしたか?
明子とは、自分たちの子どもを挟んでだったり、病に倒れた道長を挟んでだったり、何度か対決するシーンがありました。瀧内公美ちゃんとは、「ただわかりやすくバチバチやるよりも、微笑んでいるほうが怖いよね」と話していました。ジトっと、いや〜な感じにしたいね!って(笑)。
——まひろとの対決はどんなシーンになっていますか?
吉高さんとは、それほどお話する機会がなくて。ふたりきりで面と向かってお芝居をすること自体が、サロン時代ぶりだったので……。お互いに成長した上でのお芝居となるので、どんな顔をして互いの話を聞くのか、語るのか。ぜひ楽しみにご覧になってください。