12月7日(土)からスタートした特集ドラマ「コトコト〜おいしい心と出会う旅〜」。百貨店のバイヤーである主人公のゆうひろ(古川雄大)が、日本全国の魅力的な食材を探して全国各地を旅する物語だ。

12月14日(土)放送の新潟編では同県出身の小林幸子さんが、地元のスナックのママ役として出演。新潟への思いや、芸能生活60周年を迎えた今の心境などを聞いた。


――新潟県が取り上げられ、出演することになっていかがでしたか?

小林 大変光栄です! 全国放送で、新潟の食、人情、文化を伝えることができる。すごく幸せなことで、感謝しかないですね。私、ニュースで天気予報を見ると、つい新潟を見ちゃうんです。東京にいるから、新潟が雨でも晴れでもどうでもいいはずなのに。それが郷土愛なのかなって。私は新潟に支えてもらって、歌い続けることができていますから。

――9歳で新潟を離れ、東京でデビューしたんですよね?

小林 両親の実家は米農家。繁忙期には親戚の子どもたちが駆り出されて、みんなで農作業を手伝ったことを思い出します。9歳の時に新潟の実家を出て東京に行き、10歳でデビューしました。私の実家は新潟で小林精肉店というお肉屋さんを営んでいて、家族は新潟におりました。1964年にデビューしてすぐに新潟地震が起きて、実家にも被害がありました。頑張ったのですが数年で肉屋ができなくなって、家族が私のいる東京に来ました。私はといえば、デビュー曲は売れたけど、それから全然売れず、大変な時期を過ごしていました。


スナックのお客さんは、本当の常連客!

――このドラマでは、十日町市にあるスナックのママを演じていますね。

小林 撮影は、十日町市にある本物のスナックで行われました。昭和の名残がすごくある場所でした。ドラマで映っているお客さんは、スナックの本当のお客さん。みなさん勝手に水を用意して飲んでいらっしゃったし、私もお客さんに新潟弁で話しかけられて、新潟弁で返していました。楽しい撮影でしたね。

――ママがカウンターでお餅を焼いて、南蛮味噌みそという地元の郷土料理を付ける場面がありますが、とても美味しそうです。

小林 神楽南蛮という地元の伝統野菜があって、見た目はピーマンのとうがらで、すごく辛いんです。お味噌やお砂糖を入れて炒めて作るんですけど、これはお米に一番合う! 昔はみんな家で作っていました。

私は、山古志村の人たちと交流が続いているのですが、山古志のお母さんたちが作ってくれた南蛮味噌も最高です。このドラマには、新潟の隠れた名品がたくさん出てきます。

――ドラマでは、冬の新潟は雪深くて厳しいけど、みんなが支え合っていて、春になるといろんな恵みがもたらされ、人々がまたそれを分かち合う様子が丁寧に描かれています。

小林 私の歌に「雪椿」という曲があります。雪椿は新潟の県木で、雪の中に咲き、雪がとけるまでりんとした姿を保ち、枯れないんです。みんな、覚悟を持って生きているように見える、この雪椿に魅せられるのね。

2004年に起きた新潟県中越地震から20年が経ちました。当時、私は被災地や避難所に行って、歌を歌いました。一番被害の大きかった山古志村の方がいる避難所に行った時、みんな「何があっても、また帰りたい」「山古志で土をいじりたい」って言うんです。

「雪椿」に、「つらくても がまんをすれば きっと来ますよ 春の日が」という歌詞があるのですが、その部分を歌った時、みなさんがボロボロと泣くんですね。私はこれからもずっとこの歌を歌わなきゃいけないと思ったし、歌でみなさんを励ますことができるのであれば、歌い続けたいと思ったんです。

新潟の人たちには、どんなに厳しい状況にあっても不屈の心があって、ドラマでもそういった部分がしっかり描かれていると感じました。


古川さんは色っぽくて“ゲラ”!

――古川さんとは初共演ということでしたが、一緒に演じてみていかがでしたか?

小林 役者さん独特の、突き詰めていくような目をされていて、すごいと思いました。あの人、すごく男前じゃないですか! 伏し目がちで難しい顔をしていても、色っぽいんですよね。

でも、すぐに笑うゲラなところがあって、本番ギリギリまでみんなでしゃべって笑ってました。ほんとに面白かったですね。古川さんはいいやつですよ。というよりは、息子みたいでいい子でした。

――小林さんは今年、芸能生活60周年を迎えられましたが、YouTubeやTikTokなど、新しいことに次々と挑戦されていますね。

小林 大体、年齢って一体何なの? 私、よく夏木マリちゃんと一緒にお酒飲んでしゃべってるんですけど、「ただ生まれてきた年数だけだって話で、新しいことを始めるのに自分の年齢なんて関係ない。年齢のせいにしてやめちゃだめ」って言い合ってます。

体力的にしんどいなら無理しないほうがいいけど、自分ができそうで、面白そうなことがあったらやってみて、ダメならやめればいい。やる勇気とやめる勇気ね。

この間、ある雑誌の企画でギャルになったんです! 私は断らない性格だし、面白がっちゃって! 現役のコギャルたちと一緒に撮影したんだけど、「私、さちぴー! あなたたちはコギャルで、私は“古希ギャル”」って言ったんだけど、彼女たちに“古希”が通じなくて残念……。今、朝ドラでギャルが出ていますよね。私もあのドラマに出たいんですけど(笑)。

――新潟編を観るみなさんに、メッセージをお願いします。

このドラマには新潟のいいところが詰まっていて、きっと満喫できるはず。「コトコト」を世界に発信していきたいです!


【プロフィール】
こばやし・さちこ

1953年、新潟県生まれ。'64年に10歳でデビューし、'79年に「おもいで酒」が200万枚突破の大ヒット。「NHK紅白歌合戦」には34回出場。舞台、テレビドラマ、声優、バラエティーなど多方面で活躍。近年ではニコニコ動画やYouTubeチャンネルの反響も大きく、若い世代からも人気。今年芸能生活60周年を迎えた。

特集ドラマ「コトコト~おいしい心と出会う旅~」

【新潟編】12月14日(土)BSP4K 午後9:00〜9:59
     12月15日(日)NHK BS 午後4:30〜5:29
※総合にて、2024年度冬放送予定

【新潟編のあらすじ】
新潟県十日町市にやってきた東京の百貨店バイヤー・結稀宏人。宏人は食材探しの中で、縄文土器にかれて新潟へ移り住んできたあい美羽みう(高梨臨)と出会う。美羽は雪に囲まれるこの町で孤独を抱えていた。
宏人をきっかけに、地元で長年暮らすおばあさん・チヅ子(藤田弓子)や女子高校生の恵菜えな​(新井美羽)たち、4人の不思議な関係がうまれる。そして、宏人がつくる一杯のスープが、雪国で凍ったそれぞれの心に変化をもたらす。

作:坪田文
音楽:光田康典
制作統括:堀内裕介
プロデューサー:田島彰洋、郷原陽介
演出:木村隆文、門脇弘樹、髙橋実香

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兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。