金曜日、とうとう戸田恵子さんの正体が明らかになりました。「ガード下の女王」という異名を持つ、代議士・まき鉄子。役名からはアンパンマンに登場するキャラクター「てっかのマキちゃん」しか思い浮かびません。そのプロフィールを見ると……「困っている人を助けずにはいられない正義の味方」、で「ドキンちゃんが弟子入りしたこともある」とありました。この後の展開、楽しみです。
では、今週もセリフとともに振り返っていきましょう。

もちろんネタバレですので、ご承知おきください。


「でも、そのガラクタの中に希望があった」

高知新報の入社試験。
ど緊張している嵩(北村匠海)は深呼吸をして試験用紙を吹き飛ばしたり、机に手をぶつけたり……。
試験場で見ていた琴子(鳴海唯)が廊下にいたのぶ(今田美桜)にその様子をこそっと話すと、なぜか、のぶも深呼吸。
「その……さっきの、こじゃんと深呼吸しゆうメガネの人、うちの幼なじみだが」

嵩は面接に臨むが……。
「柳井嵩さん、自己紹介をお願いします」
「じ、自己紹介ですか。柳井嵩です」(にっこり)
3人の面接官、右に東海林(津田健次郎)が座っている。
「え、それだけ?」

面接官の後ろに立って控える琴子は心配そう。
嵩「体力には……自信はありません。数学は大の苦手です」
東海林「性格の面でもいいです」
嵩「つきたての餅のような……粘り強い性格だと思っています。……あ、たっすいが、ともよく言われます」
東海林「たしかに、そう見えます」
戦争を通して思うこと、を尋ねられると、
嵩「自分が正しいと信じていたことが、実は、そうでなかったというか……例えば自分は正義だと思っていても、相手の立場からすると、自分は悪になってしまうんだと思い知らされました……何が正しいのか、逆転しない正義とはなんなのか、そもそも、逆転しない正義って……あるんでしょうか……?」

さらに、高知新報の記事の中で関心を持っているものを尋ねられ(就職面接だったら必須の質問でしょう)
嵩「漫画です」
急に生き生き話しだす嵩。
「漫画は人の心を明るくしてくれます。ぼくもつらいとき、何度も漫画に救われてきました」
これを聞いた面接官たちは「受ける会社を間違えたようやね」「最後に何か言いたいことはありますか?」

廊下で待つのぶに琴子がささやく。
「幼なじみのメガネさんはね……十中八九落ちたと思うわ」
廊下で、のぶに気づかず下を向いて通り過ぎる嵩に
「たっすいがぁはいかん!」

びっくっと振り返る嵩。
「のぶちゃん? どうしてここに?」

夕暮れの屋台で、2人でこれまでのことを話すのぶと嵩。
「なんか、また差が開いちゃったな」
ガラクタを売っているだけだ、という嵩が
「でも、そのガラクタの中に希望があった」

アメリカの雑誌がすごい、という。絵も写真も記事も、漫画も。
大勢の若者が戦争で命を落としたり、死ぬほど飢えたりしている間に、アメリカはあんなに面白いものを作ってたんだな、と思うとくやしい、と嵩は言った。
「だからぼくはいつか必ず、あれよりもっと、世界一、面白いものを作りたい」

一番大事な情熱を、嵩は持っている、とはげますのぶ。
もう、試験に落ちた気分でいる嵩に、
「あほやけんど嵩らしゅうて、うちが面接官だったら、合格や」


「結太郎、のぶをうんとほめちゃれ」

夜、夕食を食べながら、のぶとメイコ(原菜乃華)は嵩のことを話題にする。
そこで、はっと思いついて会社に戻るのぶ。

会社の古い新聞の束から、嵩が入選した漫画(第3週でした)を探し出す。

試験の結果を見ながら「あと1人」を決めかねている新聞社の上司たち。
そこへのぶが漫画を持って飛び込んできたが……

緊急事態が発生。
明日の紙面に穴が開きそうで、挿絵で埋めよう、という。
「あの! これ描いた人、挿絵も描けます!」と嵩を売り込むのぶ。

夜11時を回り、ようやく現れた嵩に、今すぐ描け! と挿絵を要求する編集部の面々。
出来上がった絵を見ながら東海林が「わるないなぁ」
すぐに印刷に回されることに。
即戦力になることが買われ、嵩は最後の1人に採用された。

嵩「ぼくが受かるなんて、奇跡だよ」
のぶ「クビにならんよう、がんばり」
のぶがこんなに陰で活躍したことは、もちろん内緒である。
※今田美桜 振り返りインタビュー

一方で『月刊くじら』創刊号の校了が迫っていた。果たして売れるのか、編集部は疑心暗鬼に陥っている。
東海林「誰もが活字に飢えちゅう、面白かったら読む……俺らの雑誌は面白い、ためになる。そう信じて残りの期間、作りきるだけや!」

のぶの企画記事は戦災孤児たちの対談だ。新聞社の1室に集まった子どもたちが訴える。
「わしは、働かんでも飯が食いたい。毎日しんどいき」
「うちも。大人らは靴磨いてもお金払わんこともあるがで」
論説委員から掲載に反対されるなどの横やりが入ったものの、なんとか締め切りの日を迎えることができた。ところが……
“内田先生”(おそらく文筆家?言論人?)が原稿が書けずに逃げ出す事態が発生!
ページに穴が開いてしまうことに。

どうするか……そこで頼ることにしたのは、嵩だった。
編集部に呼ばれて机に座らされ、
「漫画を描け! 50分で」
兵隊に行ってから一度も漫画を描いていない、という嵩だが意外にもサクサク描き始める。
「困った時のメガネくんやなぁ」
そして雑誌は無事校了をむかえたのだった。

雑誌が発売され、朝田家でも読んでいる。
羽多子(江口のりこ)「2冊もうてしもうてこのご時世にもったいないねぇ」
一家の喜びが伝わってくる。
そこへ蘭子(河合優実)も買って帰ってきて、3冊になった。
嵩の漫画も載っている。
蘭子「この女の子、おねぇちゃんみたいや」
羽多子「このびっくりしちゅう男の子は嵩君やねぇ」
と大笑い。
そこでき込む釜次(吉田鋼太郎)。

釜次は結太郎(加瀬亮)の帽子の下で、雑誌を見せるようにしながら話し出す。
「のぶが次郎さんに先立たれて教師の仕事を辞めてしもうたときはどうなることかと思うたけんど、こんな楽しい雑誌を作るらぁて、結太郎、のぶをうんとほめちゃれ」
また咳き込む釜次を心配そうに見るくら(浅田美代子)だった。


「この人とやったら不幸になってもえい。それが本当に好きやということやないろうか」

嵩が、社会部から月刊くじら編集部に異動してきた。
「ぼくもここに来たかったので」

創刊号2千部は2日で売り切れた!
そこでめでたく、次の8月号は、4ページ増えることに。
しかしそれを埋めるのにどうするか……編集部は悩み始める。
岩清水(倉悠貴)が、東京で活躍する高知出身の代議士を取材したらどうかと言い出す。
東海林「おまえ、東京行きたいだけやないがか?」
東京に行きたいのは編集部みな同じ。
旅費や滞在費は?「なんとかなるやろ」

そこで“質屋に広告費を取り立ててこい”と言われ、出ていくのぶ。ついていく嵩。
琴子の紹介で店主がほいほい払う、と言っていた、あの質屋だ。
店に行くと番頭は全く払う気がなく、のぶたちを追い払おうとする。
「商売の邪魔じゃ。いね」
嵩「払ってください」
番頭は嵩の漫画も馬鹿ばかにし始める。
番頭「紙の無駄遣いや。こんなもんに金払えるか」
そこでのぶの怒りが爆発!
番頭の手をハンドバッグを持った手で振り払い
「くだらん漫画ですか。ちゃんと読みもせんと、何がわかるがですか。うちらはアメリカに負けん、世界一の雑誌やと思うて作っちゅうがです」
番頭「なんな女のくせにその態度は。思い知らせてやらぁ」

のぶに向かった平手打ちを、さっと嵩が割って入って代わりに受ける。
嵩「気がすむまでどうぞ。でも、広告費はしっかり払ってください」
そこへ質屋の旦那が登場。
「すいません、本当に忘れちょりました」
ということで、旦那がびを入れ広告費は支払われた。

たたかれて赤くなった嵩の頬を、のぶがハンカチで冷やす。
「ぼくの漫画、かばってくれてうれしかった」
「なに言うがで」とちょっと照れるのぶ。
「嵩も勇ましかったで」
そして「やってしもうた。なんでうちはいくつになってもこうながやろ。またやってしもうた」と反省するのぶなのだった。

嵩の漫画を、面白いと読んでいるメイコの傍らで、のぶは(質屋との“激闘”で)壊れたバッグを修理して……と明日からの東京出張の支度をしている。東京には次郎(中島歩)のカメラを持っていく、という。
「うち、好きな人がおるがやけんど」と言い出すメイコ。
振り向いてもらって、お嫁さんになりたい、その人と幸せになる、というメイコにのぶが言う。
「幸せになれるかどうかは、わからんで。幸せになるかどうかより、この人とやったら不幸になってもえい。それが本当に好きやということやないろうか」
つぶやくように言って、のぶは出て行った。


「柳井君は独楽こまのごたぁ。本当は自分が傷つきたくないだけっちゃないと?」

メイコは闇市の健太郎(高橋文哉)に会いに行く。
のぶの話、「この人とだったら不幸になってもいい、と思えるのが本当に好きな人」をメイコから聞いた健太郎は、(亡くなった旦那さんをそんな風に思っているなら)「柳井君の恋は絶望的やねぇ」
メイコ「健太郎さんにもそういう人、おりますか?」
健太郎「いやはや。俺は戦争で死にかけてやっとの思いで帰ってきたけん、どうせやったら幸せになりたかよ。せっかく生きとっちゃけん、幸せにならんと意味なかろうもん」
まもなくラジオで「のど自慢」が始まる、というころ、突然、闇市の元締めが“ショバ代を取りに来る”と聞いて、健太郎は猛然と店を片付け始めた。メイコとの会話は突然終わってしまう。

いよいよ、のぶたちの東京行きは明日。
岩清水は、「ガード下の女王 薪鉄子」を取材したいと言い出す。
戦災孤児や女性たちなど、弱い人たちが集まる有楽町のガード下で、彼らを助けている女性代議士なのだとか。
のぶ「こんな女性がおったらぁて、もし会えたらお聞きしたいことがようけあります」
戦争前の銀座の話を生き生きとする嵩に、東海林は「次号の表紙はお前が描け」という。「東京のキラキラ美女を」描け。

夜、嵩とみながら、健太郎は闇市の仕事を辞めてどうしようかなぁ、と悩んでいる。
そして嵩に向かって、生きててよかったじゃないか、のぶさんと一緒に働けて、東京にも行ける、と言う。
嵩「そうだね、生きててよかった。でも距離が近くなれば近くなるほど、とても遠くにいる人に見えるんだ。のぶちゃんはすごいよ。ご主人亡くしてからそんなにたってないのに、ホントは辛いはずなのに、弱音吐かないんだ」
必死に前に進もうとしているのぶがすごい、という。
「そんな人を俺みたいなやつが好きになっちゃいけないんだよ」
それを聞いた健太郎は
「柳井君はコマのごたぁ」同じところをぐるぐる回っている独楽(1人で楽しんでる)だという。「本当は自分が傷つきたくないだけっちゃないと?」

そこに酔った琴子が乱入。
「のぶちゃんのことそこまでわかっちゅうのに女心がちっともわかっちゃあせん!」
嵩に向かって「あなたが高知新報に入社できたがは、彼女のおかげですき!」
と、いきさつを全部しゃべってしまった。
銀座で長年の思いを伝えろ、と嵩を励ます健太郎だった。
※北村匠海 インタビュー


めたらいかんぜよ」

明日の東京行きの準備をするのぶにメイコが、ついに子どものころの夢がかなうね、と声をかける。
父・結太郎と2人、お月見の夜の思い出が挿入される。
「うちの夢は四国の山を越えて、海越えて、ずっとずっと遠くの銀座という街に行って……」

のぶたちは満員電車に乗って東京へ向かった。
金曜日は横浜に到着した場面から。
汽車と船を乗り継ぎ、2日がかりで到着した東京はまだまだ焼け野原、遠くの国会議事堂まで見渡せる。
その風景に手を合わせる東海林と岩清水だった。

さっそく薪代議士を探すが、空振り。宿で休もうという男たちに、のぶが
「みなさん、たっすいがぁはいけません。3日間しかないがですよ。時間がもったいないです」
というわけで、さらにガード下で薪を探すことに。
空襲で焼け出された人たちがあふれかえっているガード下で聞き込みをするのぶたちだった。

なかいた4人はおでん屋に入る。
みんなうまいうまいとちくわなどを食べ始めたが、のぶは大根だけ。
食べ終わって薪探しを再開しようとしたところで、嵩のお腹の具合が……?
ほどなく東海林と岩清水もお腹を抱えてうずくまる。
(東京でおでんを食べて、暢さん以外全員がお腹を壊して起き上がれなくなったエピソードは、やなせたかしさんの著書『アンパンマンの遺書』にも登場しますね)

通りかかった女性(割烹かっぽうを着て手拭いを頭にかぶっている後ろ姿!)がかたないね、と彼らが休めるように自宅の部屋に案内してくれた。
そう、その女性は戸田恵子! いよいよ登場だ。もちろん、のぶたちは彼女が何者か全く気付いていない。

3人は広間にあおけに寝かされた。かなり広いうちらしい。
戸田恵子「ただの食あたりだよ。お腹のものが全部出たら、嫌でも治る」
「あんたは何で平気なんだ?」と聞かれたのぶ。代わりに嵩が「ぼくらに遠慮して大根しか食べてなかったので」
嵩はよろよろと手洗いに立つ。その様子に豪快に笑う戸田。

一方、高知では。のぶの留守宅に蘭子が訪ねてくる。
メイコは蘭子に向かって「うちも一歩踏み出すつもりや」と言い、蘭子を連れ出した。
「会わせたい人がおるがやき」
しかし……闇市の健太郎の店があった場所に、もう姿はない。店を畳んだのだ。
呆然ぼうぜんとするメイコだった。

一方、一晩たって腹痛から回復してきた3人はようやく起き上がる。
戸田(まだ名乗らない)「おでんトリオ、復活したみたいだね~! 男は戦争に負けてくたびれてるからねぇ。これからは女がしっかりしないと。戦争を始めたのも男だよ」
のぶは戸田に、ガード下の女王を知らないかと尋ねたが、しらを切られる。(彼女が当の本人であることは、見ている私たちにはとっくにわかっているんですけどね)

ガード下の女王に会うことを諦めて、高知に戻ることにした4人だったが……
助けてくれた女性(戸田)のことを記事にしたい、とのぶが言い出し、嵩と2人で彼女を探し始める。

ようやく手がかりをつかんだのぶたちが向かった先は……暗い、ガード下のほったて小屋のような場所でジャン卓を囲む4人。

1人の女性が3人の男を相手にたんを切っていた。
「あてが勝ったら、この場所は子どもらに明け渡してほしいがよ」
笑う男たちに
「なめたらいかんぜよ! ツモ!」
と1人勝ち。
白いスーツに大玉の真珠のネックレスをつけてマージャンを打っていたのは……戸田恵子=薪鉄子だった。


さあ、のぶはこの薪先生(てっかのマキちゃん)に弟子入り(?)することになるんでしょうか……?
そして次週予告には八木上等兵(妻夫木聡)の姿やヤムおんちゃん(阿部サダヲ)の姿もありましたね。みんな、生きてたんだ~そして戻ってくる!
来週は「面白がって生きえ」。新たな展開が楽しみです。ほいたらね。