笠置シヅ子をモデルとする、戦後を明るく照らしたスター・福来スズ子(花田鈴子/趣里)の物語を描く、連続テレビ小説「ブギウギ」。今回、スズ子とタッグを組み、数多くの名曲を生み出している天才作曲家・羽鳥善一を演じる草彅剛に、役への思いや物語の見どころについて話を聞いた。


善一は「ジャズ」そのもの

僕が演じる羽鳥善一は、いつもニコニコしている、どこかつかみどころのない人物です。大変なときもネガティブなことを言わず、明るく過ごしています。みんな深刻そうな表情をしていても、善一だけは笑っている、そんなキャラクターです。その明るさはとても魅力的ですよね。善一という役が僕は大好きで、演じていて楽しいです。彼の前向きなところなど、僕と似ている部分も多いのではないかなと思います。

善一のモデルは、作曲家の服部良一さんですが、服部さんを意識しすぎず「羽鳥善一」という新しい人物像をしっかり生み出せたらと思います。音楽を愛する善一は、いつでも音楽のことばかり考えている極端な人間でもありますが、音楽と向き合う姿勢に彼の愛情がたくさん詰まっています。スズ子とのレッスンやステージの姿を見れば、感じるものもたくさんあるはず。それこそ善一がよく言っている「ジャズ」そのもののように生きています。

善一のなかで好きなセリフは「トゥリー、トゥー、ワン」。普通なら「スリー」だと思うんですが、善一は「トゥリー」。これが、型にはまらない善一っぽさを表していて好きなんです。スズ子とのレッスンでも「福来君が好きなように歌うのが一番いいんだ」と言っているように、本当に自由なんですよね。だから、「スリー」が「トゥリー」でもいいんです。彼のキャラクター性がにじみ出ているセリフだと思います。


趣里ちゃんとは息ぴったり!

スズ子を演じる趣里ちゃんとは、今回初めて一緒にお芝居するのですが、本当にスズ子にしか見えません。これは趣里ちゃん本人にも言っているんですけれど、「福来スズ子を演じるために生まれてきた」と冗談抜きで思っています。表情などどれをとってもスズ子だ!と感じます。

趣里ちゃんとは息ぴったりにいつも楽しく、お芝居できています。僕は、役を演じているとき常に無の状態なんです。もちろんセリフや段取りはありますが、「今初めて起こったような感覚」を大事にしたいと思っています。その心持ちで趣里ちゃんの目の前に立つと、スズ子のリアルな感情がすごく伝わってきて。それがとても楽しいですね。

スズ子と善一の関係性をひと言で言い表すなら、「龍と虎」です。僕はスカジャンが好きですが、龍と虎が戦っている様子を描いたスカジャンってありますよね。そんな関係性の2人ではないでしょうか。2人とも強者で、音楽への情熱とより良い作品を生み出そうという思いを内に秘めている。共に高みを目指して、お互いぶつかり合わないと成長しあえないような間柄ではないかなと思います。


日本中を元気にするパワーがある

今後の見どころは、やっぱりステージでの趣里ちゃんのパフォーマンスです。趣里ちゃんのエネルギーは、日本中を前向きに元気にしてくれるパワーがあります。そんな番組が毎朝放送されている、こんなに幸せなことはないですよね。撮影では、生バンドの演奏が入るシーンもあって、僕自身も音楽と共に高揚しています。その躍動感あふれる「ワクワク」を引き続きお届けできたらと思います。

これまでの放送で、好きなシーンはたくさんありますが、宮本亞門さん演じる作詞家の藤村薫さんと、一緒に曲作りを行う場面はほほえましくて好きですね。亞門さんに引っ張られる形で、いろんな化学反応が起きた場面になりました。

僕も小さいときからエンターテイメントの世界で生きていますが、笠置シヅ子さんたちの活躍があるからこそ、僕たちも今この場所に立っていられると思います。その笠置シヅ子さんが生きた、エンタメの元祖ともいえる世界を、スズ子が駆け抜けていきますので、ぜひ最後まで注目していただけたらうれしいです。

草彅剛(くさなぎ・つよし)
1974年生まれ、埼玉県出身。NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「新選組!」「青天を衝け」、「ブラタモリ」(ナレーション)などに出演。主演ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」が12月16日(土)、23日(土)よる10:00から放送。