「ブギウギ」のヒロイン・スズ子(趣里)の父・梅吉。映画と芝居とお酒が好きな道楽者だが、情にもろく愛情深いお父ちゃんだ。そんな梅吉を演じているのが、俳優の柳葉敏郎さん。梅吉というキャラクターをどのように受け止めているのか。役への思いや印象に残っている場面などを聞きました。


梅吉はピュアで屈託のない男

梅吉は本当にピュアな男。良いところも悪いところもあるけれど、ありのままで生きている人です。愛情表現は下手かもしれませんが、人を愛することに少しの抵抗もなく、自分の思いをまっすぐにぶつけます。記憶喪失のゴンベエ(「はな湯」の従業員/宇野祥平)に救いの手をすぐに差し伸べたエピソードからも分かるように、目の前の出来事に対して悲しんだり喜んだりと素直に感情を出す、屈託のない人物なんです。

ですので、演じる上でも、相手の言動に対して梅吉が感じた思いをそのまま返すことを心がけています。僕も意外とピュアな人間なので(笑)、梅吉の素直な気持ちは理解しながら演じているつもりです。


ツヤちゃんにぞっこんです!

ツヤちゃん(水川あさみ)との夫婦関係は、梅吉が完全にぞっこんなので、彼女にしがみついて生きています(笑)。ツヤちゃんがいないと、梅吉は本当にダメなんでしょうね。

梅吉が田舎を出るときに、ツヤちゃんが追いかけてくれましたが、そのときの互いを信じあう気持ちを今でも持ち続けている夫婦だと感じています。そんな2人だからこそ、スズ子と六郎(黒崎煌代)は、他人の気持ちを考え、思いやることのできる人間に育っているのかな。

また、水川さんにはどれだけ助けられたか。現場では、ツヤちゃんそのものでずっといてくださいました。演じるうえで意見交換もいろいろとさせていただいて。どんなお芝居をしても反応してくださる、頼りがいのある方。花田家の温かい空気感を作り上げ、スズ子の基盤となる大阪時代をしっかり支えたのは、水川さん演じるツヤちゃんでした。


スズ子の強さを象徴するシーンは——

梅吉は、スズ子がやることを決して否定せず、心から応援しています。そんな梅吉の子どもたちへの愛情は、僕自身が自分の子どもに抱いている思いとまったく同じ。だから、スズ子が成長して大きな舞台に立ったシーンを見たときは、本当にうれしくて胸がいっぱいになりました。

ヒロインのスズ子は本当に強い人物です。彼女の強さが大きく表れたのが、梅吉とツヤの実の娘ではないことを知った場面。スズ子は家族のことを思い、真実を知ったことを両親には伝えない決断を下します。この決断は心が強くないとできないこと。のちの大スター・福来スズ子のベースとなるたくましさを垣間見た気がしました。


今後の花田家の家族愛にも注目

第5週で、スズ子の東京行きにツヤちゃんが大反対するシーンが描かれました。ツヤちゃんが最後まで抵抗したのは、娘を手放したくないという思いがあったと想像します。おそらく母性本能なんでしょうね。母親にしかわからない気持ちがいっぱい詰まった場面に感じました。このシーンは、どう演じようとしているのか、水川さんに聞けないくらいの緊迫した空気感で。ここでの趣里さんと水川さんの演技は、本当にすばらしかったです。

第1週から第5週までの、スズ子が東京へと旅立つ前までの物語は、スズ子がのちに大スターとなるための土台づくりをしないといけないと常々考えていました。日本中を明るく元気にする歌手になるわけですからね。今後スズ子は、東京でもいろんな苦労をすると思いますが、スズ子、六郎、ツヤちゃん、梅吉の絆は強くつながっています。その家族愛も楽しんで見ていただけたらうれしいです。


そして柳葉さん自身についてのお話と、ドラマ撮影の裏話についてもお聞きしました!

──柳葉さんの朝ドラ出演は、1986~1987年放送の「都の風」でヒロイン・悠の初恋相手役を演じて以来、3作目。“朝ドラ”の現場に戻ってきていかがですか?

「都の風」で経験した緊張感とはまた違った緊張感をもって、毎日撮影に挑んでいます。現場もとても引き締まっていて、そこに自分なりのスパイスも入れこみながら演じることができて、楽しいですね。
大阪ことばは、正直に言ってしんどいです(笑)。感情もきちんと乗せたうえで、話すのがすごく難しくて。またリアクションなども大きくしようとすると、さらにこんがらがってしまう…。気持ちのメリハリをつけるのに苦労しているところです。

──花田家のシーンは本当に笑顔があふれていて、撮影現場も楽しそうです。花田家での撮影エピソードはありますか?

撮影以外でも、花田家の皆さんとは本当に家族のつもりで過ごしています。だから、休憩中に話をするときも「スズ子」「六郎」「ツヤちゃん」と呼んでいます。趣里ちゃんと呼んだことはないかもしれません(笑)。

“朝ドラ”のヒロインを務めるのは本当に大変だと思います。いつも笑顔で撮影を行っている趣里ちゃんを見ていると、彼女のためなら何でもしてやろうという思いになりますね。本当に、趣里ちゃんのお父さんになったような心持ちです。ほんの少しでもいいから、趣里ちゃんの心のよりどころとなる存在でありたいと思います。