「青のオーケストラ」 
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/


うぉぉぉぉ、いろんな人が一気にしゃべったー!!

えっ、そこなの!? そう突っ込みたくなる気持ちは、充分わかります。でもね、羽鳥も姫ちゃんも滝本かよ(彼らの呼び方については、原作準拠にしています)も、海幕高校の新入生に対する部活動紹介の演奏会の場面以来、これまで姿は何度も画面に登場しているのに、ずっとセリフがなくて。彼らを含めて、上級生の主要キャラクターながら今回初めて声を聞けたのが、なんと7人。7人ですよ!! 各キャラクターがそれぞれ個性豊かで、「青のオーケストラ」という物語に鮮やかな彩りを添えているだけに、原作ファンとしては待望の「初鳴き」となりました。

しかも7人とも、声優さんの声が、キャラクターのイメージにすごく合ってた! これは否が応でも今後のストーリー展開に期待が持てますね。というか、このキャスティングがまた豪華な顔ぶれで、1年生を演じている声優さんたちにとっても、大きな刺激になりそうな……。それは、今回放送された第9話「先輩」の中で、青野くんたち1年生が2年生の圧倒的な演奏を目の当たりにして、これから挑む壁の高さを感じたことにも重なる気がしています。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

というわけで、第9話「先輩」の流れをおさらい。


オーケストラ部が開催する夏の定期演奏会まで、2か月を切った。そのメイン曲となるドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の演奏メンバーは、オーケストラ部内のオーディションで選ばれ、学年とは関係なく実力で席順が決まる。3年生のパートリーダーたちが参加した幹部会で、その詳細が話し合われている間、ヴァイオリン・パートの練習は、次期パートリーダー候補の2年生・裾野姫子(声:金澤まい)が仕切ることになった。オーディションの曲目は「新世界より」の第3楽章。この第3楽章は、2年生にとっても初めて挑戦する楽曲だが、コンサートマスターの座席に着いた羽鳥葉(声:浅沼晋太郎)をはじめとする2年生たちは、見事なアンサンブルを披露。その迫力に、青野一(声:千葉翔也)や佐伯直(声:土屋神葉)、秋音律子(声:加隈亜衣)、小桜ハル(声:佐藤未奈子)たち1年生は、強い衝撃を受ける。


原作の漫画「青のオーケストラ」作者である阿久井真先生が物語を描くときに、当初の「きり」と考えていたのが、海幕高校オーケストラ部の定期演奏会(詳細については、こちらを参照)。コンマスを務める原田蒼(声:榎木淳弥)ら3年生にとって定期演奏会は引退前の大舞台で、下級生たちが3年生と同じステージで演奏するためには、まずオーディションをクリアする必要があります。
その原田先輩は、にこやかな笑顔を浮かべつつ、1年生を2年生たちと競わせる気満々。あっ、この人、優しいだけじゃなくて、根っこは相当厳しいぞ……。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

なお今回のアニメ化では、この定期演奏会に向けて24回の物語が進むと発表されたので、これからの展開は一気に熱を帯びていくものと想像できます。互いに切磋琢磨しながら成長していく構成は、ある意味、青春部活ものの王道と言えるかも?

ということで、2年生たちが聴かせた演奏は、後輩たちの度肝を抜くのに充分なインパクト。

♪ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』第3楽章」(弦楽器パート)
指揮:吉田行地 
演奏:洗足学園フィルハーモニー管弦楽団

ああ、これはもう、明確な意思の主張がありますね。この人たちに勝たなきゃいけないのか……。
ただ、彼らが1年生たちに「敵意」を持っているかというと、それは違っていて。次期コンマスと目される技量の持ち主である羽鳥は、チャラい言動が持ち味ながらも、青野くんにも積極的に声をかけてくれる面倒見の良い先輩。単なる対立軸として描かれるのではなく、きちんと青野くんのことを認めていますね。これまで登場していなかったタイプのキャラクターでもあり、その存在感が際立っています。それは、青野くんと一緒にお昼を食べた姫ちゃんも、滝本かよも同じ。羽鳥以外のキャラクターの人物像も、これから膨らんで、各々の輝きがひとつになって海幕高校オーケストラ部の魅力がより増していくと思われます。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

ところで。
第5話のオケ部の体験入部のときには、デュオ演奏で全く音が合わない「演奏バトル」を繰り広げていた青野くんと佐伯が、今回は、2人だけの練習でぴったり音を合わせていましたね。第9話の前に「イッキ見 一挙放送」の後半が放送されて、そこに「演奏バトル」が登場していたから、見ていた方は、演奏の違いがよりはっきりとわかったはず。そうか、それぞれの演奏を担当している東亮汰さんと尾張拓登さんがちゃんと合わせようとすると、ここまで音が重なって芳醇な響きになるのか!! すっげー。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

あと、さりげない描写かもしれないけれど、前回のラストで「誰かのためにヴァイオリンを弾いて、自分を好きになれた気がした」ハルちゃんが、オーディションと聞いて少し弱気になるりっちゃんをしっかり励ましているところも心に残りました。りっちゃん役の加隈亜衣さんが「律子は高校に入って、自分の下手さにへこむことも増えてくる」と語っていた(詳細は、こちらを参照)ように、りっちゃんの「揺らぎ」もハルちゃんが受け止められるようになっている、と。あのとき流した涙は、いずれ……(おっと、その話は、ここまでだ)
そんなりっちゃんの「揺らぎ」は、次回、6月11日に放送される第10話「初心者と経験者」でクローズアップされそうですね。


定期演奏会に向けてのオーディションまで1週間を切り、部員たちはそれぞれ熱心に練習に取り組んでいた。緊張感に気を引き締めながらも「自分は上手くなっているのだろうか?」と不安に駆られる律子は、焦りから思うように弾くことができない。律子と同じ2ndヴァイオリンで、5歳からヴァイオリンを始めた経験者の立花静(声:Lynn)は、初心者にもかかわらずオーディションに挑戦しようとしている律子に対して、いらだちを隠さない。やがて、練習への取り組み方をめぐって、2人は衝突する。


©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

うわぁ、りっちゃんと立花さんが、正面衝突! でも、それは好き嫌いじゃなくて、演奏経験からくる音楽に対しての考え方、練習が持つ意味や向き合い方の違いからくる衝突なんだよね。だとすれば、お互いの立場を理解し合うことで、きっと見えてくるものがあるはず。それがどのように描かれていくのか、めちゃくちゃ楽しみです。
なお定演に向けて、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の練習風景は何度か登場するものと思われるので、予習も兼ねて、第10回の直前に放送される「N響×青のオーケストラ コンサート」をぜひご覧いただければ。

第9話「先輩」の再放送は、Eテレ 6/8(木曜)午後7:20~7:45。
見逃し配信は、NHKプラスで6/11(日曜)午後5:25 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023060433299?cid=jp-3LMR2P87LQ

*第1話「青野ハジメ」~第7話「小桜ハル」も、今なら見逃し配信可能です!
配信期限は、6/10(土曜) と6/11(日曜)。
詳細は、https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/plus/

追記
安済知佳さんが声を担当すると発表された3年生の町井美月先輩は、今回、声を聞けた7人の中には入らず。1stヴァイオリンのトップサイド(次席奏者。コンマス・原田先輩の隣)席に座る実力者で、先々の物語で重要な役割を担う魅力的なキャラクターなのですが、原作通りの展開だとすると、登場がもう少し先になりそう。いっそ、アニオリで先出ししてくれないかなぁ……(←無茶なこと言ってます

カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。

☆これまでの感想記事は、ここに(https://steranet.jp/list/category/stera_aniken )。