「愛国のかがみ」ともてはやされ、もはやそこから下りることなど考えもつかないのぶ(今田美桜)。東京から、“自由な空気”と友人の健ちゃん(辛島健太郎・高橋文哉)を連れて御免与町に帰ってきた嵩(北村匠海)。そのまぶしさにちょっと恋してしまうメイコ(原菜乃華)。

女子師範学校卒業の間際には、黒井雪子(瀧内公美)先生のつらい過去も語られました。80年以上前も今と変わらずあった、みずみずしい気持ちの揺れがいとおしい、今週のストーリーをまるっと振り返ります。

今回ももちろん、ネタバレですのでご承知おきください。


「(嵩の絵は)やさしい。見た人が優しい気持ちになる絵を描くがやき」

のぶは嵩に電話口で怒鳴どなったことを気にかけていたが、一方で戦地から慰問袋のお礼の手紙が届き、自分のしていることは役に立っていると実感する。
夏休み、実家に帰ってきたのぶに、ヤムさんこと屋村草吉(阿部サダヲ)が声をかける。
「おい、愛国の鑑! 敬礼が本物の軍隊みたいになってきたな」
のぶは銀座のパン屋のことを確かめようとするが、相手にされない。
羽多子(江口のりこ)はあまり詮索してはいけないと、のぶをたしなめる。

夏休みは高知に帰る、という嵩に、健ちゃんがついてくる。
嵩たちを御免与駅に出迎えたのはメイコだった。朝田家に二人を案内しながら、けんしたのぶと、ちゃんと話した方がいいとすすめる。が、このとき、のぶは留守で入れ違い。

挨拶に出てきたヤムさんに、嵩もまた銀座のパン屋のことを聞くが「う~、人違いだよ。どいつもこいつも」

意地を張るのぶと逡巡しゅんじゅんする嵩。嵩が持っている、お土産とおぼしき風呂敷包み、中身が気になる~。
二人を仲直りさせようとメイコと健ちゃんは相談し、一計を案じる。

夜、柳井家ではごちそうが並んでいて健ちゃんは大喜び。その席で嵩と千尋(中沢元紀)を海へ誘う。
寛(竹野内豊)が嵩に聞く。
「ところで嵩、なんでのぶちゃんを怒らせたがな?」
嵩「銀座は自由に満ちてて、楽しいところだって伝えようと。そしたらカンカンに怒っちゃって。……へらへら浮かれてるんじゃないって」

あんぱんを売り歩くのぶとメイコ。メイコの“販促ソング”がかわいい🎵
「あ~んぱん、あ~んぱん、ほっぺが落ちたよ 朝田パン🎵」
効果てきめん! パンがよく売れること!
で、すかさずのぶに「うちのお願い聞いてくれる?」。

海岸の嵩・千尋・そして健ちゃん。
ここで初めて嵩は、豪(原豪・細田佳央太)が出征したことを知る。

嵩「俺たち、これからどうなるんだろう」
千尋「わしらぁもいずれは兵隊にとられる」
健太郎「早く終わってくれんかいな、戦争」
嵩「豪さん、ぶじにかえってくるよな」
千尋「当たり前や」
ああ、きっと日本中で、祈りとともに同じ会話が繰り返されていたのだろう。

そこに、のぶを伴ってメイコがやってきた。
微妙な空気の嵩とのぶ。

のぶがみんなにあんぱんを配って……
嵩「久しぶりだけど、やっぱりおいしいな」
そして……「のぶちゃん。このあいだはごめんなさい。恥ずかしいよ。豪さんが出征したことも知らなくて」

のぶ「うちも言い過ぎたちゃ。ごめんなさい」
仲直りもやっぱりあんぱんとともに。

話題はコンクールで佳作になった嵩の絵の話になった。
千尋「うまいとかヘタとかじゃのうて、兄貴の絵は……なんて言えばえいがじゃろ……」
言葉を探す千尋に、のぶがすかさず、
「やさしい。見た人が優しい気持ちになる絵を描くがやき」

健太郎のギターで「椰子やしの実」を歌うメイコ。仲直りして微笑ほほえみあう嵩とのぶ。
海岸のシーンはいつも、青春だ。

メイコの歌をほめる健太郎に、ちょっとドキドキするメイコ。(←カワイイ)
あれ? もしかして?
照れてころぶメイコに手を差し伸べる健太郎。
これは恋?キュンキュンの場面。
一方、健ちゃんにそんなつもりはないんだろうなぁ、 と見ているこっちはちょっと心配だけれど?(※原菜乃華インタビュー


「うちも変わったかもしれん。けんど、嵩も変わった」

というわけで、翌日。
朝田家の朝の食卓で、釜次(吉田鋼太郎)とくら(浅田美代子)がのぶに結婚をすすめ始め、のぶが話をメイコに振ると……。
「うち、お嫁さんになりたい……相手も見つけたき」
なんとも単純でカワイイ。

「椰子の実」を鼻歌で歌いながら仕事するメイコを見ながら、蘭子(河合優実)が、(相手は)一緒に海に行った人ではないか? と言い出す。
そこへ健太郎が現れる。
「あんぱんひとつ、買いに来ました」
ここで健太郎(と嵩)は明日帰る予定だ、と知る。

東京に戻る予定が迫り、持ってきたお土産を渡せない嵩のために、
千尋が一役買って、のぶを呼び出す。出ていくのぶの背中を見つめる千尋……。
メイコ「もしかして千尋さん、のぶ姉ちゃんのこと……」
さすが、自分が恋をすると他人のことも見えるようになるらしい。
誤魔化ごまかす千尋に「誰にも言わんき、心配せんといてください」
千尋「メイコさん、ありがとう」
※中沢元紀 振り返りインタビュー

いつものシーソーの空き地でのぶを待っている嵩。
嵩は、のぶにお礼を言いたい、と切り出した。
「いつか、言ってくれただろ? 嵩は絵を描くために生まれてきた人やって。あの言葉で受験がんばれたし、コンクールで佳作になったのも、のぶちゃんのおかげだよ」
照れるのぶ。いい感じだ。

「のぶちゃんが、認めてくれたから今の自分がいる」
と言って、ようやくのぶにお土産の包みを渡す。
「これ、気に入ってくれるといいんだけど」

開けると……出てきたのは真っ赤なハンドバッグ。
(夜、銀座でショーウインドーのハンドバッグを見つめるシーンが、月曜日にありましたね)
のぶ「たまるか~。こんな美しいもん」

嵩「このハンドバッグを見た時に、のぶちゃんの顔が浮かんだんだ。のぶちゃんがこれを持って銀座の街を歩いたら、ステキだろうなって」
※北村匠海 振り返りインタビュー

しかし……のぶはここで別のモードに入る。
「こんな贅沢ぜいたくなもん、もらうわけにいかん。……どうしてもこうしても、こんなもん、欲しがったらいかんが。嵩も戦地の兵隊さんのこと考えてみいや」
「でも、戦争はいつか終わるだろ?」という嵩にのぶは、
「嵩はなんちゃあ、わかっちゃあせん。うちらとおんなじばぁの若者らぁが、お国のために戦いゆうがで。豪ちゃんも命がけで。その若者らぁのこと、考えてみいや。こんな贅沢なもんに使うお金があったら嵩も戦地の兵隊さんのために献金するべきや。そう思わん?」

「思わない」と嵩はきっぱり。
「のぶちゃんだって、さっき、こんな美しいもんって言ったじゃないか。喜んでくれたと思った。……美しいものを美しいと思ってもいけないなんて、そんなのおかしいよ。そんなの」
嵩は畳みかける。
「のぶちゃんが先生になったら、子どもたちにもそんな風に教えるの? そんな先生、ぼくはやだな。僕が知ってるのぶちゃんは、正直すぎるくらい正直で面白い女の子だった」
のぶ「うちも変わったかもしれん。けんど、嵩も変わった。もう、あの頃みたいにはなれんて、わかったやろ」
嵩「まって、のぶちゃん。これだけでも受け取ってくれないかな」
のぶ「いらんというたら、いらん。しゃんしゃん東京にいね」
とうとう……幼いころ、学校で言ってしまって後悔した(このドラマの1回目)のと同じ言葉を、また……。


「今は平行線に思えても、いつか、二人の道が交わる日が来るかもしれん」

家に帰った嵩は、勉強する千尋に、渡せなかったハンドバッグを見せ、置いていく。
「お前にやるよ」
慌てる千尋に「好きな子ができたらプレゼント、しろよ」
一方、町で健太郎に出会ったのぶは「嵩のことよろしゅうお願いします」と頭を下げるのだった。

健太郎とメイコはだんを食べながらうまく仲直りできなかった二人のことを話している。
のぶのことを「ええお姉ちゃんです」というメイコに
健太郎が「そげんいうメイコちゃんも、よか女の子ったい」
照れるメイコ。

思い立ったように立ち上がって
「うち、好きな人ができたがです。面白うて、一緒におると楽しうて、笑顔がステキで」
「メイコちゃんも、面白くてよか女の子ったい。きっとうまくいくばい」
健太郎がわかってくれたのだと舞い上がるメイコだったが……。

その瞳をじっと見つめた健太郎は突然
「誰かに似とうと思いよったら、メイコちゃん、目がキラキラして、“のらくろ”みたいばい」
『のらくろ』(田河水泡の漫画)の主人公、犬の絵を描きだす健太郎なのだった。
※高橋文哉インタビュー

がっかりするメイコだったが……
「嵩さんら、最終の汽車でかえるがやって。うちは、好きな人に気持ち伝えたで。その人にはうち、漫画の犬に見えゆうみたいやけんど、それでも、伝えることができてよかった。のぶ姉ちゃんは嵩さんとけんしたままでええが?」

夕暮れが迫るころ、突然駅に向かって駆け出していくのぶ。
御免与駅に駆け込むと、(予定を早めて)ひとつ前の汽車で嵩たちが行ってしまったあとだった。会えなかった。
最終の汽車で帰ると言っていたのに……と居合わせた寛(竹野内豊)が首をかしげる。
のぶ「うちのせいです。……嵩さんにひどいこと言うてしもうたき」
寛「ひどいこと?」
のぶ「しゃんしゃん東京にいねって」
「そうかい」と笑う寛。

のぶ「うち、子どものころからちっとも成長してのうて、また、嵩さんを傷つけてしまいました」
寛「のぶちゃんと嵩の仲や。今度んて来た時に仲直りしたらええやいか」
のぶ「今度おうたら、もっとひどい喧嘩してしまうかもしれません。うち、きっとまた、ひどいこと言うてしまうような気がして。嵩さんとはいつの間にか、考えや進む道がちごうてしもうたみたいながです」
寛「そうか。のぶちゃんは信じう道を正直に走っていけばえい。嵩は自由気ままにのんびり自分の道を進んでいくやろう。そのうち、どっちかが立ち止まることがあるかもしれん。今は平行線に思えても、いつか、二人の道が交わる日が来るかもしれん」
「わしはのぶちゃんにお礼が言いたいがよ。生まれたところも別々で、性格も正反対の嵩が、この町で……のぶちゃんに出会うて、ぶつかりおうて、一緒に涙を分けてきたがや……ほんとに、ありがとにゃ、のぶちゃん」

こんなこと言われたら、のぶでなくても泣きます。寛伯父さま……(涙)
※今田美桜・竹野内豊 振り返りインタビュー


「勝利の日まで一命を賭して銃後を支え、学びの庭で頑張りぬきます」

金曜日冒頭で、夜、一人で寝所を抜け出した蘭子が豪の仕事着、半纏はんてんを握りしめる姿が描かれた。そう、帰ってこない豪。

のぶの女子高等師範学校卒業を間近に控えた昭和13年1月、黒井先生がのぶたちの部屋に入ってくる。“柳井嵩子”の女名前がバレて、手紙を見せることになった。

黒井先生に問い詰められ、
「私が子供のころ、この人の絵に救われたがです。私がしんどい時、いつもそばにおってくれた人です。けんど、もう手紙が来ることはないと思います」と、涙ぐむのぶ。
“結婚して子どもを産み、忠良なる日本国民に育て上げるのも忠君愛国の道”と言い置いて去ろうとする黒井を引き留めるのぶ。
「ひとつ、伺ってもよろしいですか? 先生は、なぜ、そちらの道を選ばず、教師になったがですか?」
黒井がみしめるように答えた。
「一度、結婚したことがあります。女子師範を卒業してすぐに、嫁ぎました。3年間子どもができず、婚家を追われました」
生徒から恐れられるその厳しい姿は、自分を守るよろいであったのかもしれない。

のぶの配属先は出身校、“御免与尋常小学校”に決まった。のぶが望んでいたところだ。
うさ子(志田彩良)は学校に残り、黒井を支え後輩の指導をすることになった。

卒業式の日、黒紋付にはかま姿の黒井から覚悟を問われたのぶは
「勝利の日まで一命を賭して銃後を支え、学びの庭で頑張りぬきます」
と答える。
そして戦争の目的を問われると全員で
「東洋の平和、世界の安泰、御国の栄光」と唱和した。
校門を出るのぶに、黒井が言う。
「朝田さん、愛国の鑑たれ!」
※瀧内公美 振り返りインタビュー

のぶが実家に帰ってくる。釜次・くらは大喜び。
父・結太郎(加瀬亮)の帽子に敬礼するのぶと羽多子だった。

そしてのぶは、地元、御免与尋常小学校で3年1組の担任となった。


すっかり“愛国の鑑”が定着したのぶ。嵩との道が再び交わるのはいつになるのか……。
来週は第8週「めぐりあい わかれゆく」。予告映像では、のぶに縁談があるようでしたね。こちらが出会い、なのだとしたら、別れは一体……? では、また来週! ほいたらね。