金曜日、新聞社に就職が決まって、のぶ(今田美桜)の人生が再び走り出しました。
敗戦を境に正義は逆転しました。“愛国のかがみ”だったのぶは子どもたちに謝罪、教師を辞めました。さらに夫・次郎(中島歩)も亡くなって……水曜日、打ちのめされているのぶに語りかける嵩(北村匠海)の言葉にはぐっとくるものがありました。速記を“解読”したのぶが次郎から受け取ったラストメッセージも……。
今週も、心に残るセリフとともに振り返ります。

もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。


「先生は、間違ごうていました。ごめんなさい」

のぶ「みんなぁも知っちゅうとおり、日本は戦争に負けました。先生はみんなぁに間違うたことを教えてきました。先生は、間違ごうていました。ごめんなさい」
頭を下げるのぶ。子どもたちの間から、口々に小さい悲鳴のような声「せんせい……」

終戦から5か月(1946年1月)ふかし芋を買ったのぶの手から、それを奪って走り去る子ども。追いかけていくと、5~6人の子どもたちが分け合って食べていた。
このころ、どこにでも「戦争孤児」と呼ばれた子どもたちがあふれていた。空襲で親を亡くしたり、はぐれたりした子どもたちだ。

「今から先生が言うところを、墨で塗りつぶしなさい」
学校では終戦後の教科書のいわゆる「墨塗り」が始まっていた。GHQの指示で、軍国主義教育からの転換が図られたのだった。
「みんなが使いよった教科書は、間違っちょったがや」
このドラマ冒頭の嵩の言葉「逆転」が始まった。

のぶは次郎が入院する海軍病院にいた。病気はよくなっていないようだ。
次郎は何かを書いている。中身はのぶには見せない。
病院で出る食事は粗末なもので、薬も足りない。む次郎にのぶが近づこうとすると、次郎は「近づくな」と手振りで示した。
当時の結核は命にかかわる病気で感染力も強く、恐れられていた。

朝田家の夕食でもそのことが語られる。
二人の妹たちは洋服だ。蘭子(河合優実)は青、メイコ(原菜乃華)はグリーンのカーディガン。(それぞれの“色”は守っている)
蘭子が、学校も大変らしい、教師を辞める人も多い、と言う話をする。
釜次(吉田鋼太郎)「のぶは“愛国の鑑”やき、大変やろにゃぁ」

次郎に、芋の煮っころがしを差し入れるのぶ。
「よう芋が手に入ったね」
のぶは「闇市で買いました」
以前、子どもに芋をられたことを話す。
そして「次郎さん、今まで黙っちょってすみません。うち、教師を辞めたがです」
次郎「やっぱりそうか。そんな気がしよったがよ。すまん、僕のせいで……」
のぶは違う、と言って「うちは子どもらぁに間違うたことを教えてきました。日本は必ず勝ちますと、男の子には立派な兵隊さんになってお国のために頑張りなさいと……」
子どもたちの目を見たら、何も言えなくなって、その時に教壇に立つ資格はないと思った、という。
「君らしいね。僕も、船の上から戦況を見て、この戦争は悲惨なものになると思うちょった。けんど、何もできんかった」
「うちは、子どもらぁまで巻き添えにしてしまいました」
これからの話をしよう、という次郎。

ノートに何か記号のようなものを書く次郎だが、のぶはなんだかわからない。検査の時間になって、答えはお預けになってしまった。
その夜、次郎は喀血かっけつする。

次郎の母(節子・神野三鈴)が食料を持ってのぶを訪ねてきた。
一緒に料理をしながら、母親は次郎が書いていたのは速記だろうという。
「うちんくに、次郎が使いよった速記の本があるき、今度持ってくるきね」
そこに電報が。
「ワカマツ ジロウサマ キトク スグ コラレタシ」

火曜日、病院に駆けつけるのぶと次郎の母。
力なく「のぶ……」と呼ぶ次郎。のぶの手を取って……力が抜けた。
脈をとっていた医師が小さく首を振る。
その場にへたり込むのぶと節子だった。


「お国のためじゃろうと、なくしてえぇ命らぁひとつもない」

次郎の初七日が過ぎ、朝田家を訪ねてあいさつするのぶ。
釜次がこれからどうする? と問うと、なるべく早く仕事を探したい、という。
出ていこうとするのぶに羽多子(江口のりこ)とメイコが大根の煮物を持たせようとするが遠慮するのぶ。
蘭子が「とにかく、食べてねむる。こんなとき、そうするしかないがやき」
泣き出すのぶの肩をそっと抱く蘭子だった。

御免与駅にぼんやり座っているのぶの脇を、復員兵が通り過ぎる。嵩だ。ひげが伸びている。
立ち止まる嵩に気づかず高知行きの汽車に乗るのぶだった。

嵩が柳井家に戻ってきた。
「柳井伍長、ただいま帰還いたしました」
千代子(戸田菜穂)は泣き出しながらその場に座り込み、叫ぶように「ご苦労様でございました」と頭を下げ、嵩に抱きつく。泣きながら「よう帰ってきたねぇ!」
まず、千尋(中沢元紀)のことを聞く嵩。「伯母さん、千尋は?」

中に入ると千尋の写真が……伯父・寛(竹野内豊)の写真と並んでいる。とうみょうのろうそくが一本……。
つぼを明けると「海軍中尉 柳井千尋霊位」と書かれた木片が一枚入っていた。
※北村匠海 振り返りインタビュー

夜、月明かりの下で話す嵩。
「戦地で飢えて死にそうになった時、夢に父さんが出てきたんです」
千代子「清(二宮和也)さんが? その手帳は清さんの?」
嵩「千尋が小倉まで会いに来てくれて、ぼくにくれました」
千代子「嵩さんはお父さんが守ってくれたがやね」
嵩「なんでだろう。父さん、ぼくなんかよりずっと優秀な、千尋を守ってくれればよかったのに。生きて帰ってくるなら、ぼくじゃなくて、千尋ならよかったのに」
千代子が泣きながら「嵩さん! そんなこと言うたら、お父さんや寛伯父さんに叱られますよ」
おしん(瞳水ひまり)ちゃんが「うちは、戻りたいがです。寛先生がお酒を召し上がって、奥様と嵩さんと……千尋さんが笑いよった、あのころに、戻りたいがです」と泣く。

翌日、嵩は朝田家を訪ねる。釜次が石を刻んでいた。
「お久しぶりです」
「千尋君は残念じゃったね。あのラジオも、パンい競争のとき、千尋くんがのぶに譲ってくれた景品じゃったね」とラジオを振り返る。
釜次「お国のためじゃろうと、なくしてえぇ命らぁひとつもない」


「もし、逆転しない正義があるとしたら、全ての人を喜ばせる正義。僕はそれを見つけたい」

若松の家では、のぶが机に突っ伏している。傍らには次郎ののこしたカメラ。そして……
フイルムを取り出し現像を始めた。写っているのはのぶばかり……。1枚だけあった次郎の写真に
「ごめんなさい次郎さん。これはうちが撮ったき、ピンボケやね」と言ってまた泣くのぶ。

朝田家。洗濯物を畳んでいる羽多子とメイコのところに蘭子が帰ってくる。
メイコは仕事をして自分でお金を稼ぎたい、と言い出す。
しかし蘭子は、男性が戦地から戻ってきて女性の働き口はない、という。

釜次と話した嵩は、シーソーの空き地に行く。
最後に会ったときに、千尋が「わしは、もういっぺん、シーソーに乗りたい。もういっぺん、のぶさんにあいたいにゃあ」と言っていたのを思い出し……。

焼け野原になった高知の町を力なく眺めていたのぶのもとに、嵩が現れた。
「嵩、生きちょったが」4年ぶりの再会。

のぶ「ご苦労様でございました。どういて、ここが?」
嵩「釜次さんから聞いたんだ。次郎さんのこと」
のぶ「わざわざ、ありがとう。嵩、うち、教師辞めたが」
嵩「そう」

のぶが言う。
「子どもらぁに、もう、向き合えんようになってしもうた。うちは子どもらぁに取り返しのつかんことをしてしもうたがや」
「あの子らぁ、戦争に仕向しむけてしもうたがはうちや。
うちは立ち止まらんかった。立ち止まって考えるのが怖かったがよ。
あの子らぁの自由な心を塗りつぶして、あの子らぁの大切な家族を死なせて、
うち、生きちょってええがやろうか。うちは、生きちょってええがやろうか」

嵩「のぶちゃん、死んでいい命なんてひとつもない」
のぶ「嵩、うちは、どうすればよかったろうか」
嵩「どうすればよかったのか、ぼくもそればかり考えてたけど、わからない。
この先もずっとそれを自分に問いかけることしか、できないんじゃないかな。新しい世の中になっても問い続けるしかないよ。
正しい戦争なんか、あるわけがないんだ。そんなのまやかしだよ。そのまやかしの正義で、敵も味方も仲間も大勢死んだ。千尋も。
最後にあいつが言った言葉がずっと耳に残ってる。『この戦争さえなかったら、わしは愛する人のために生きたい』」

「だから、正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから。
でも、もし、逆転しない正義があるとしたら、全ての人を喜ばせる正義。僕はそれを見つけたい。千尋のために、そうすることしか僕にはできないと思って。何年かかっても、何十年かかっても、みんなを喜ばせたいんだ。そう思ったら、生きる希望が湧いた。絶望なんかしてられないって。だから生きるんだ。千尋の分も、みんなの分も。のぶちゃんも、生きてくれ。次郎さんの分も、のぶちゃんが大好きな子どもたちのためにも」

そこに、空襲のとき迷子になっていた子ども、なおきが母親と通りかかる。
「ハチキンのおねえちゃん。ほいたらね」と手を振る。

嵩「ハチキンのおねえちゃん、か」
のぶ「うるさい(泣笑)……嵩、ありがと」

「ほいたらね」「ほいたら」
嵩を見上げるのぶの目に、光が戻ってきた。

夕焼けをそれぞれの場所から見つめる嵩とのぶ。
嵩はシーソーに一人座って。
のぶは空襲の焼け野原の向こうに。
※今田美桜インタビュー
※北村匠海 振り返りインタビュー


「自分の目で見極め、自分の足で立ち、全力で走れ。絶望に追いつかれない速さで」

うちに帰ると、玄関に一冊の本が。節子が次郎の速記の本を置いて行ったのだ。
それをもとに、次郎が最後まで書いていたノートを読み始めるのぶ。
一字一字、対照しながら読み解いた言葉は
「のぶへ。自分の目で見極め、自分の足で立ち、全力で走れ。絶望に追いつかれない速さで。それがぼくの最後の夢や」。
朝になっていた。
※今田美桜・中島歩 振り返りインタビュー

速記の勉強を始めたのぶ。
羽多子が様子を見に訪ねて行くと、手伝いにきていた節子と一緒になり、勉強しているのぶをみて安心する。
節子は、“のぶはまだ若いので若松の家に縛られて欲しくない”、という。
羽多子は深々と頭を下げるのだった。

嵩の元に、健ちゃん(辛島健太郎・高橋文哉)が訪ねてきた。
福岡の自宅は焼けてしまったが家族は無事だったという。
さみしかった~!と嵩に抱きつく健太郎。
なぜか「一緒に仕事探しに行くばい!」「え?」

そこで畑仕事から戻ってきたメイコと再会。
泣きながら健ちゃんに駆け寄るメイコ。
「うちのこと覚えちょりますか?」「もちろん、のらくろん(の)メイコちゃんやろ?」
生きて戻ってきてくれて、ありがとうございます、と涙ながらに言うメイコだった。

のぶは速記の腕も上達し「リンゴの唄」に合わせて歌詞を書きとれるまでになっている。

町に出て、屋台の焼き鳥屋で店主と客の会話を速記していると、そこに演説をぶっている男(東海林明・津田健次郎)が……。

目が合うと、何をメモしているのか? 敵国のスパイかっ!
男「さっきから何しゆうが?」
のぶ「いろんな人の話を聞きゆうがです」
男「なんで?」
のぶ「家が焼けてもへこたれず、たくましい人らぁの会話を書き取りよったら、うちも励まされるがです」
男「見せて」

「君、速記できるがか? 素晴すばらしいなぁ。好奇心、探求心、しぶとさ、ずうずうしさ。新聞記者に必要なものを全て持ち合わせちゅうき! キミのような人をわが社は待っちょった! 採用!」連れの男(岩清水信司・倉悠貴)が止めるのも聞かず、名刺を渡す。
「あす、わが社の編集局に来たまえ。待っちゅうきな」
渡された名刺には「高知新報編集局 主任 東海林」とあった。

翌日。次郎の写真に「いってきます」と声をかけて、高知新報に。


「今度こそ間違えんように、周りに流されず、自分の目で見極め、自分の頭で考え、ひっくり返らん確かなものを」

あわただしい編集部に入っていくと……東海林が岩清水をしかりつけているところだった。
「この記事じゃ紙面に載せれんぞ~。気合が足らん。気合。魂が震えるような言葉を心からひねり出せ」
のぶが声をかけると「どちらさま?」
岩清水「声かけたのは東海林さんでしょうが」
速記したメモを読み上げ、昨日の東海林たちの言葉を再現するのぶ。
しかし……すっかり忘れている様子。
帰ろうとするのぶを引きとめる東海林。近々入社試験があるから受けてみたら?という。
「君なら絶対受かる!……気がする~」

新聞社の入社試験を受けるのぶ。試験会場にオレンジ色の着物はさすがに目立つ。
筆記試験と、町で実際に取材して記事を書く試験。
町の婦人や露店に取材して記事を書くのぶ。
メモ帳には速記の文字が躍る。

最後は面接試験。和やかに会話が進む中、3人の面接官のうちのひとり霧島(野村万蔵)が突然、
「若松のぶさん、旧姓朝田のぶさん。あなた、女子師範の学生ころ、弊社の新聞に載りましたね? 記事には、こう書いてある。朝田のぶさんは愛国の鑑である、と」
思想はそう簡単にはかわらないだろう、と詰め寄られる。
教師を辞めたのも、進駐軍から軍国主義者としてマークされたのでは? と。
のぶ「私は、子どもたちに立派な兵隊さんになれと説き、何人もの教え子たちを戦争に仕向けてしまいました。純粋な子どもたちに間違った教育をしました。ですから、もう二度と教壇に立つ資格はないと思い、辞職しました。……世の中ががらりと変わり、自分の価値観もひっくり返りました」
霧島はなおも問う。
「軍国主義から民主主義に乗り換えたとでも? 信じられんねぇ」
のぶ「アメリカの民主主義がそんなに素晴らしいものかどうか、私にはまだわかりません……
私が信じていた正義は間違っていました。やき、今度こそ間違えんように、周りに流されず、自分の目で見極め、自分の頭で考え、ひっくり返らん確かなものをつかみたいがです。今の私にはそれだけしか言えません」
霧島「もう結構です」
さっさと不採用にしようとする霧島を東海林が止める。
「彼女は、今の女性たちの代表だと言うてもええ。戦時下の教育で、多くの純粋な女の子たちが軍国少女となり、敗戦で自分たちの信じてたもんが、自分自身を墨で塗りつぶされたがです。みんな彼女と同じように打ちのめされ、彼女と同じような想いを抱えて生きてます。世の中も俺も、あんたらも、変わらんといかんがじゃないですか?」
責任は俺が持ちます、と会話を終わって……とぼとぼ帰ろうとしているのぶを追いかけてきた。

「待ちたまえ! わが社は君のような人を待っちょった。とは、誰も言わんかったが。編集局は人手不足で猫の手も借りたいくらいながや。猫の手として採用する」
「たまるかぁ」

ぼんやり帰ってくるのぶ。「たまるかぁ、たまるかぁ」やがて走り出す。

走っていくのぶを見送る嵩と健ちゃん。
「おれはね、のぶちゃんが元気ならそれでいいんだ」

朝田家で家族に報告するのぶ。
「このご時世に仕事がみつかっただけでも立派なもんじゃ」「おめでとう!」
釜次が「今日は祝いじゃぁ!」
蘭子「お姉ちゃんが記者、大丈夫ろうか?」
メイコ「たしかに、なんか、いらんことしそうやね……ま、なんとかなるやろ」
「みんな、ありがとう」うれしそうなのぶの顔。来週からは新しい世界が待っている!


いよいよ、のぶは新聞社で働くことになりました。当時としてはまだ珍しかった女性新聞記者、どんな未来が待っているのでしょうか。嵩のこれからも気になるところです。次週のタイトルは「幸福よ、どこにいる」。幸せを探して! ほいたらね。