盧溝橋事件がおき、時代は日中戦争に入っていきました。豪(細田佳央太)は赤紙がきて出征していきます。木曜日、蘭子(河合優実)の気持ちが通じた場面は“よかった”けれど切なかった……。着替えを持ってきて送り出した母・羽多子(江口のりこ)さん。当時としてはものすごく進んだ人だったでしょうね。

一方、嵩(北村匠海)とのぶ(今田美桜)の心は離れていってしまったようで……。
そうそう、嵩たち学生が歌っている「図案科の歌」は、初めて聞いた時“謎!”と思ったんですが……あれ、実際にやなせたかしさんも歌った歌なんだそうです。今回は歌詞もまるっとご紹介します!

もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。


机で学ぶことは何もない。お前ら銀座に行け

東京に旅立つ嵩を御免与駅でみんなが見送る場面から。嵩はこざっぱり、髪も短くなっている。
自転車でやってくる屋村草吉(阿部サダヲ)。
「これ、オレの気持ち」と封筒を渡す。「汽車で読んでな」
嵩「気持ち悪い……」
「では、みなさん、ありがとうございます、行ってきます」

汽車の中で取り出した手紙は、のぶからのものだった。
「嵩、東京行ってもがんばりよ! うちも頑張るき! のぶ」
のぶは見送りに行かなかった。小川うさ子(志田彩良)に負けた時のことを思い出し、なぎなたの「素振り」をしていたのだった。

2年生になり、のぶたちにも後輩が!
心得を説くうさ子が先輩と後輩の役割を逆に言ってしまう場面にクスリ。
黒井雪子先生(瀧内公美)に、どんな教師なりたいか問われ、のぶは
「私はこどもらぁに体操の楽しさを教えたいと思うちょります」
「ではあなたが思う立派な教師とは?」
「それは……」「返事が遅い!」
全員が「大和魂を持つ、教師です」と唱和。
のぶは完全に乗り遅れている様子。

一方東京の美術学校についた嵩。制服にソフト帽でいっぱしの学生スタイル。
そこに受験の時に出会った“けんちゃん”こと辛島健太郎(高橋文哉)が!
補欠合格で拾われた、という。再会を喜び合うふたり。

教室に入ってきたのは、座間晴斗(山寺宏一)先生。
いきなり嵩を指さし、将来何になりたい? と聞く。
……ごにょごにょ、という嵩に、
「いいんだそれで。君らの将来は真っ白だ。何色に染まるかは君ら次第だ。……
机で学ぶことは何もない。お前ら、銀座に行け。世の中を心と体で感じてこい。話はそれからだ」(※山寺宏一インタビュー

場面は銀座。
デパートのショーウインドーを見たり、映画を見たり……
『フランケンシュタイン』(世界的に大ヒットした1931年の映画。モンスター役のボリス・カーロフも有名に)に嵩はいたく感動した様子。
そして、街を歩く女性たちに健ちゃんの目はくぎけ。
嵩はスケッチブックを取り出し、街角を描き始める。
その夜、嵩が下宿でのぶに手紙を書いていると、健ちゃんがやってきて、そのまま、転がり込んで居候(?)を決め込んだ。なかなか厚かましい。
※北村匠海 振り返りインタビュー

のぶに手紙が届く。差出人は“柳井嵩子”。
——のぶちゃん、いつか東京においで。ここには自由があるんだ。……のぶちゃんと銀座の景色を見たい。
そして、銀座には美女しかいないけどどうなっているのかと続く。
——そんなわけで、とにかく僕は楽しくやってます。
最後まで読んだのぶは「はあ?……たっすいがぁの嵩のくせに、生意気じゃ!」


ワッサワッサワッサリンノ モンチキリンノホイ 

朝田家のラジオからは盧溝橋事件関連のニュースが聞こえてくる。
1937年7月7日に起きたこの軍事衝突は日中戦争へとつながる発端と言われている。
屋村の浮かない顔がインサートされる。戦争には何か因縁があるのだろうか?

女子師範学校では黒井先生が皇国女子の心得を説く。
「男子が戦場に赴けば銃後を守るのは女子の役目……今こそ、忠君愛国の精神を肝に銘じなさい!」

一方嵩は……裸婦のスケッチをしている。初めての裸婦スケッチの時間なのか、嵩は緊張気味、健ちゃんは興奮気味。
モデルの女性をカフェーに誘おうとして断られた座間先生。自分を励ますように歌い始めたのが……ん? 意味不明の歌詞……?

さて、ここで登場した謎の歌。
カタカナばかりの呪文のような言葉が座間先生によって黒板一面に書かれる。

座間先生は『図案科の歌』と紹介する。
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5/6(火)に放送された“板書”より

実はこれ、実際にやなせたかしさんの母校、東京高等工芸学校図案科に代々受け継がれた歌なんだとか。やなせさんの著書にも登場する。そう、実在するのだ!
また当時やなせさんはこの歌に独自の解釈をつけていたそうで、それがそのまま、嵩が翻訳した(?)セリフになっている。

5/6(火)に放送された嵩の“訳”より

この自由さ! のぶが苦しむ「忠君愛国の精神」を思えば対極だ。

夜、カフェーでギターを伴奏にこの歌を歌っているところに陸軍の軍人たちが入ってくる。
「ふざけた歌はやめろ。うるさくて話ができん」
意に介さず、もう一遍いっぺん、最初から歌い始める座間先生。この歌はきっと「自由」の象徴なのだ。


戦争なんて、いい奴から死んでいくんだかんな

豪に赤紙が来た。口々に、しかしためらいながら「おめでとうございます」という朝田家の人々。そこに蘭子が帰ってくる。
「おめでとうございます」と深々と頭を下げた。
豪の両親はすでにないが、足摺岬に一人で暮らす祖母がおり、入隊前にそこに寄る、という。

のぶが、蘭子に聞く。“好きな人”とは豪のことではないのか、と。
蘭子「何言いゆうがで……そうやとしても、どうにもならんがやない?」
ちゃんと気持ちを伝えるよう促すのぶ。
「蘭子の気持ち知ったら、豪ちゃん、なにがなんでも死なんとんてくるかもしれん。……戻んてきてほしいがやろ?」
ヒグラシのカナカナという声が響く夕暮れ。

出征が決まった豪に、屋村は、石で足にけがをするとか、しょうゆを飲んで倒れるとか、行かずに済む方法を勧める。
「行くな。戦争なんてろくなもんじゃねぇよ」
豪「気持ちはありがたいですけんど、わし、もう覚悟はできちょります」
そして正座して「ヤムさん。今までお世話になりました」
屋村「なんでそんな澄んだ目ぇしてゆうんだよ」

最後まで石屋の仕事をするという豪を屋村が釣りに誘う。
屋村「勇ましく戦おうなんて思うなよ。逃げて逃げて、逃げ回るんだ。戦争なんて、いいやつから死んでいくんだかんな」
豪「ヤムさんは戦争に行ったことがあるがですか?」
屋村「……(無言)……ま、地獄に行くと思って、やりたいこと全部やってから行った方がいいぞ。食っときたいもんとか、会っときたい女とか、いねぇのか」
豪「毎日会ってます」
屋村「誰よ?」
豪「いいませんき」
屋村「のぶじゃねぇな。メイコ(原菜乃華)はガキだし」
豪「それ、いつか当たりますき、やめてください」
屋村「あ、年上好み? 羽多子さん?……」
暗くなりそうな空気を笑いで包む二人。

朝田家の夜。みんなが寝静まったと思った蘭子が起き上がり、階下でまだ起きて帳簿をつけている羽多子のところへ。聞きたいことがあるという。
「おとうちゃんとおかあちゃんはどうやって結婚したが?」
そっとのぞいていたのぶとメイコも合流した。

二人の出会いはお見合いで、しかも初めて会ったのは結婚式だったという。
そこで羽多子はあの、手紙がぎっしり入った箱を取り出す。
「お父ちゃんは結婚してから、あてに恋をしてくれたがやって。あてもおんなじや。嫁いだ日に初めて会うて、それからゆっくり、お父ちゃんを好きになった。あての初恋の人や」

結太郎(加瀬亮)の声。
「ここは毎日氷点下の寒さですが、貴女あなたをおもえばわしの心は温こうなります。どんなに離れちょってもあなたはわしの此処ここにおります」
冷やかす姉妹3人。そして……寝床に戻っていくのだった。

豪の壮行会当日。仕事から戻った蘭子にのぶが想いを伝えるよう背中を押す。
のぶ「心に思うちゅうことを伝えんがは、思うちゃあせんのと同じことやき」
何かを決意したように蘭子は豪の元へ。
「豪ちゃん」「はい」
「うち、ずっと……」
そこで豪が「蘭子さん」
蘭子「なに? 豪ちゃん」
豪「ずっと……長い間お世話になりました」
蘭子「いえ、うちこそ」
二人で深々とお辞儀じぎ……。
「そろそろ壮行会始まるね」
「そうですね」「ほいたら」「ほいたら」
え~! ここで言えないの~!!!


今夜はもんて来んでええ

壮行会が始まった。羽織はかまで酒を注がれる豪。
蘭子を心配するのぶとメイコ。

釜次(吉田鋼太郎)「15のときにうちに来て、実の息子より息子らしゅうしてくれましたき」(※吉田鋼太郎インタビュー
くら(浅田美代子)「結太郎がのうなって、豪ちゃんまで兵隊にとられるらあて」
今度の戦もすぐに終わる、と豪を励ますだん屋の万平(小倉蒼蛙)に、屋村がかみつく。
「黙れ、団子屋。勝とうが負けようが、兵隊は虫けらみたいに死ぬんだよ」
不吉なこと言うな! と怒り出す釜次に、めでたい席だから、と止める周囲。
「敵と殺し合いに行くのに、どこがめでたいんだよ」
取り繕うように羽多子が豪に挨拶を促す。

豪「親方、みなさん、今日はこのように立派な会を開いていただき、ありがとうございます。……お国のため、みなさんのため、わしは戦こうてきます。親方、おかみさん、羽多子さん、ヤムさん、お世話になりました」
屋村が出ていく。
「のぶさん、メイコさん、……蘭子さん(少し泣き笑いの顔)ありがとうございました」
下を向く蘭子。

よさこい節をみんなが歌っている間に、一つため息をつき、いたたまれない様子でそっと席を外す豪。
荷物を肩に、宴席が続く朝田家に向かって一礼して去ろうとする……気づいて追いかける蘭子。
「豪ちゃん!」
「豪ちゃん……は、足が遅いき、弾に当たらんか心配や。きっとんて来てよ。きっとやのうて、絶対や」

豪「蘭子さん。わしからも、お願いがあります。無事、戻んてきたら、わしの嫁になってください」
突然の……
「え?」っとあとずさって、困った顔をして頭を押さえる蘭子。
蘭子「豪ちゃん。どういて今そんなこと言うが?」
豪「すいません」
ふりかえるとのぶが見ている。
「蘭子、ちゃんと返事せんと、豪ちゃん行ってしまうがで」
うなずく蘭子
「うち、おまえさんのこと、うんと好きちゃ。豪ちゃんのお嫁さんになるがやき、戻んて来てよ」
「蘭子さん。ありがとう。戻んて来ます、絶対に」

そこに羽多子が走ってくる。
「間におうた。これ、着替え」……
「今夜は戻んてこんでええ。豪ちゃん、蘭子をよろしゅうお願いします」
「花嫁衣装も用意しちゃれんで、ごめんで。早う行き」
豪は蘭子の手を取り、見つめあって二人で消えていく。
なみだで見送る羽多子とのぶ。二人は夜汽車で寄り添って……よかった……けれどつらい木曜日。
※細田佳央太インタビュー
※河合優実インタビュー


愛国の鑑

女子師範学校の寮。戦況を新聞で見ながら、のぶは慰問袋を作るのはどうか、と思いつく。
翌日、うさ子と一緒に同級生たちに呼びかけ、みんなで作ることになった。
ビラを作って協力を呼び掛け、学校全体で取り組むことに。
※黒井雪子 振り返りインタビュー

町に出て、献金運動まで始める。
それが新聞に載り、校長先生(おかやまはじめ)がのぶを「愛国のかがみ」とほめる。

朝田家には、新聞に載ったのぶの写真が額に入れて飾ってあった。
相変わらずパンを作る屋村。
のぶに向かって
「俺は、お国のための献金なんかしないからな!」
嵩からの手紙で、銀座のパン屋の写真の中にヤムさんの姿があったと知らされたのぶが尋ねる。
「ヤムおんちゃん、銀座のパン屋さんで働きよったことあるが?」
屋村「銀座のパン屋なんてしらねえな」

嵩は図案コンクールで佳作に入選し、50円もの賞金をもらって気が大きくなっていた。
仲間と来ていた銀座のカフェーから高知の柳井家に電話をかける。
千尋(中沢元紀)に、のぶを電話口に呼び出してもらうが……周囲の学生仲間たちがうるさくて話がうまく聞こえない。

怒り出すのぶ「嵩は東京になにしに行ったがで」
「それは……のぶちゃんも来たらわかるよ。街も、お店も、道を歩いている人もみんなすごく素敵すてきなんだ。ここには自由がある」
「自由?(半笑い)」
のぶがキレる。
「嵩、お国のために働きゆう兵隊さんのこと、ちっとでも考えたことあるがか?……そんなときに嵩は何をしゆら。たっすいがぁのどあほ!」
二人の考え方が隔たってしまったことを、お互いが自覚したのだった。


銀座の自由な雰囲気に次第に染まっていく嵩と、“愛国の鑑”と言われて軍国主義の波に飲み込まれていくのぶ、出征していった豪と帰りを待つ蘭子……それぞれが次の方向へ、歩みを進めていきました。それがどういう方向であれ……。
さて次週は「海と涙と私と」。やなせたかしさんの詩集『愛する歌』第4集に収録されている詩のタイトルで、合唱曲にもなっています。
メイコが恋? のぶと嵩に和解が? 戦争が日本中を覆いつくすまで、もう少しの間、自由な空気が楽しめるのでしょうか。ほいたらね。