現代社会のさまざまな闇や謎に迫る大型シリーズ「調査報道 新世紀」。デジタル時代に必要な調査報道の手法をアップデートし、国内外の研究機関やメディアと連携しながら制作してきました。

今回の「File5」では、ミャンマー軍を支える物資と資金源に迫ります。


ミャンマー国旗の隣に掲げられた日本の国旗。日本はミャンマーに多額のODA資金を投じ関係を築いてきた。

クーデター直後からミャンマーの実態を伝えてきた「NHKスペシャル」。今回のデジタル調査報道で見えてきたのは、日本のODA(政府開発援助)で作られたインフラの一部が軍に悪用されていた事実だった。

ことし夏のミャンマー最大都市・ヤンゴンの市場。

かつて“アジア最後のフロンティア”と呼ばれ、日本企業の進出ラッシュをみたミャンマー。2021年2月に軍によるクーデターが起きてから3年半、軍の弾圧と攻撃で命を落とした市民は5,600人超、避難民は300 万人に上るが、世界からは「忘れられた戦場」となっている。

今年だけで7回空爆された東部カヤー州の町パソン。
東部カヤー州パソンに住む5歳の少年は、空爆で右手を失った。

世界の目がウクライナやガザの情勢に注がれる中、ミャンマーでは人道危機が深刻化。クーデター以降、軍と民主派勢力や少数民族の武装勢力との間で戦闘が激化している。さらに軍は、あろうことか自国内での空爆を強化し、無差別に人の命が奪われる事態が続いているのだ。

欧米各国が、ミャンマー軍に対し厳しい経済制裁を課しているにもかかわらず、これほどの規模の攻撃を続けられるのはなぜか?

NHKがデジタル調査報道の手法で、衛星画像や船舶の航跡データ、税関の記録、そしてミャンマー政府から流出した文書などの解析を進めたところ、空爆に必須のジェット燃料が、制裁をくぐり抜けて一部の国からミャンマー国内に送られている実態が見えてきた。中国やロシアの支援はこれまでも言われていたが、そうした国以外からも、軍を支援する物資が流入しているのだ。

ヤンゴン市郊外に完成したバゴー橋。日本のODAを受けて建設され、ことし6月に完成した。

さらに、衝撃的だったのは、私たち日本国民の税金であるODAの一部が、軍に関係する企業に流れていた実態。日本のODAによって作られたインフラの一部が軍に悪用されていることも分かってきた。ミャンマーに対する日本のODAについては、国連や人権団体も厳しい目を向けている。

泥沼の内戦が続く、その背景に「調査報道」で迫る。

なお、取材・制作は、2021年のクーデター直後からミャンマーのデジタル調査報道を続けてきたチーム。取材の成果は番組とともに、デジタル空間上にも記録され続けている。

【番組連動サイト】
「What’s Happening in Myanmar? ミャンマーで何が起きているのか?」はこちら。※ステラネットを離れます


NHKスペシャル 調査報道 新世紀 File5 ミャンマー軍を支える巨大な闇

9月21日(土)総合 午後10:00~10:49