ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、藤原伊周役の三浦翔平さん、隆家役の竜星涼さんから!
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三浦翔平さんの第35回振り返り
——道長(柄本佑)を襲撃しようとした伊周の心境はどのようなものだと思いますか?
あのときの伊周は、完全に我を忘れています。だから、襲撃が失敗した後、隆家と水辺で話すシーンのお芝居にすごく迷いました。
僕は台本を読んで、伊周は道長の暗殺未遂によって何もかも諦めたと思って、隆家に対して吹っ切ったように「うつけ者め」と言う芝居を考えていたんです。けれども、撮影現場で監督と話し合いながら、プロデューサーにも確認したところ、「もっと狂気を帯びた感じで演じてほしい」と言われて……。
まだ先の台本がない時期だったので、伊周の最後は出世を諦めて終わっていくのかなと予想していたのですが、プロデューサーから聞かされた後々の展開はまったく違ったんです。むしろ、ここで伊周は完全に分別を失ってしまう。そのための「うつけ者め」だったことに驚きました。
台本が来たら、実際、そこからのもうひと盛り上がりがすごいんですよ。呪詛もさらにパワーアップしていきますので、注目していただければと思います。
竜星涼さんの第35回振り返り
——隆家が伊周による道長襲撃を阻止したことについて、どう感じましたか?
兄を助けるつもりでした。もちろん、道長が襲われ、仕組んだのが伊周だとわかれば、自分の立場が危うくなることもあります。でも、やっぱり人としてやってはいけないことですし、兄を止められるのは、血のつながった自分しかいないという責任感があったと思います。しかも、兄の転落の原因を作ったのは自分だという負い目もあって……。
「長徳の変」で花山院(本郷奏多)に矢を放ったことが全てではないけれど、どこかに「俺が原因で、家族もバラバラになってしまった」という思いはあったでしょう。そこで悔い改めて、各自ちゃんと行動できればよかったけれど、プライドが邪魔をする家族の性というか、悲しさがあって……。だから、一つの区切りとして、隆家が責任を取ろうとしたのでは、と思います。
——だとすると、「これが俺にできる、あの過ちの詫びなのだ」というセリフには、気持ちが乗ったのでは?
襲撃未遂後に兄と話すシーンでは、「ここで気づいてくれ」という気持ちが強かったです。若いころの華やかで、弟の目から見ても“かっこいい”伊周に戻ってもらうには、この状態を変えないと、もう無理だろうと……。周囲から称えられるような自慢の兄貴に戻ってほしい、それには改心して、新しく進むべき道を選べるかどうか、これが最後のチャンスだよ、と。
このシーンでの兄弟の会話が、最後のポイントだったと思います。隆家が本心を打ち明けて、なんか通じたかなって思っていたら、結局ダメだった……。思いを届けたくても届かないシーンで、その瞬間に「本当の意味で別の世界へ行ってしまったな、兄貴」と、どうしようもない気持ちになりました。