2024年の大河ドラマ「光る君へ」の舞台は平安時代。十二単に代表される色鮮やかな装束や、趣のある貴族たちの館……ドラマを見ていて平安文化に興味を持った方も多いと思います。
NHK財団では、平安文化を見て、知って、感じてもらえる「平安貴族の暮らしと文化」展を制作しました。今後、各地でご覧いただける予定です。今回は、展示の内容をいくつかご紹介します。
知れば「光る君へ」がもっと楽しくなる! 平安貴族の暮らしって?
展示は4つのパートからなっています。
まず1つ目はパネル展示「平安時代~華やぐ文化と暮らし~」。
平安時代とはどんな時代だったのか、また平安貴族の衣・食・住、当時の流行、たしなみなどをご紹介します。写真やイラストで、平安時代について楽しく学べます。
「光る君へ」の題字・根本知さんが書く「源氏物語」
2つ目は、「書」です。
大河ドラマ「光る君へ」の題字・書道指導の根本知さんに、「源氏物語」の冒頭「桐壺」を、書いていただきました。
ドラマの中でも、主人公・まひろや清少納言をはじめ、登場人物が手紙や歌を書くシーンがたびたび登場しますが、根本さんはその指導もされています。根本さんの流れるような「平安かな」の美しさを、じっくりとご覧ください。
紫式部の書は残っていないので、想像でしかありませんが、早く軽やかにたくさんの書を書いたことが、彼女の作家性に影響を与えたと考えています。
今回の作品も、書としてみせる技術・技法ではなく、軽やかに、呼吸するようなリズムで書くことを意識しました。ぜひ、皆様にしゃべっているようなリズム感で見てもらえると嬉しいです。
美しい「やまと絵」で描かれる「源氏物語」
3つ目は、「貝合わせ」です。
「貝合わせ」は平安時代の貴族社会で発生し、長く受け継がれた王朝遊びの一つです。
平安時代においては、貝殻の形や色合いの美しさや珍しさを愛で、その貝殻を題材にして歌を詠み優劣を競う遊びでした。それとは別に、一対の貝における身と蓋を合わせる遊びは「貝覆い」と呼ばれていましたが、時代が下るとこの遊びもまた「貝合わせ」と考えられるようになりました(日本玩具博物館HPの解説より)。
今回は、有職彩色絵師・林美木子さんに『源氏物語』の場面を描いていただきました。
林さんによると『源氏物語』の「絵」には、「桃太郎」や「浦島太郎」のように、それぞれの話に対して決まった構図があるそうです。
今回は『源氏物語』全54帖の中から「桐壺」「夕顔」「若紫」など10帖を選んで描いていただいています。貝の中の、手のひらにすっぽり入る空間に、雅な平安の空気がぎゅっと詰まっています。
平安の頃、日本の四季や風物を繊細な表現で描き出し、宮廷の生活に彩をそえた絵を「やまと絵」といいます。そんな「やまと絵」の世界がわかるように、また『源氏物語』をよく知る方にはさらに楽しめるように、今に伝わる「源氏絵」を正確に貝に描くようにしています。
技法はもちろんですが、素材は更にこだわっています。さまざまな産地の蛤を取り寄せて研究した結果、(三重県)桑名の蛤が今に残る「貝覆い」の貝の形に一番近かったので、まず「桑名の蛤」を食べて、貝がらを得るところから作品作りをはじめます(笑)。技法も素材も、出来るうる限りをつくして限界までこだわり、制作しました。
平安時代のお姫様の手元に置かれていた貝覆いも、職人たちの熱い思いが注がれて、献上されたのかなと思いを馳せています。
平安貴族の“かさね”でおしゃれ
最後に、「かさねの色目」。
平安貴族は、季節によって、装束のかさねの色目を変化させて、おしゃれを楽しみました。京都・風俗博物館から借用する春・夏・秋・冬の「かさねの色目」で、合わせの色合いの美しさをお楽しみください。
【展示の予定】
9月8日(日) 大津市民会館(「かさねの色目」の展示はありません)
※開催地は随時更新します。
展示会開催にご興味がある方は、是非、展開・広報事業部までお問い合わせください。
(文/NHK財団 展開・広報事業部 土居美希)