ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、猪爪花江役の森田望智さんから……。


──亡くなった夫・直道(上川周作)のことを思い出して涙する花江に、「俺、なれないかな、その人の代わりに」と想いを告げた道男(和田庵)。花江は、それをどう受け止めたと思いますか?

あのときの道男くんの言葉が、そのままその通り、心の中で思っていることではないと、花江もわかっていたと思うんです。私も、和田くんの目の奥を見て、そう思いましたから、きっと花江も気づいたと思います。

「何かにすがりたい」「救いを求めている」、そんな雰囲気でした。だから、無碍むげにはできないけれど、当然、本気にしたわけではないと思うんです。

やっぱり、すごく年下の男の子で、自分の子どもに対するのと近い感覚ですよね。「助けてあげたい、守ってあげたい。でも、どうしていいのかわからない」──というのが、あの時点での道男くんへの思いですね。

ただ、直後に腕をつかまれますよね。それは、当時の女性としては、夫であっても外で手をつなぐっていうことがなかった時代なので、直接、触られるというのは、今よりもずっと繊細だったという意味で、驚きや怖さは感じただろうなとは思っています。

──その後、はる(石田ゆり子)が出て行った道男を呼び戻して、道男も花江に謝罪。その後も、猪爪家とかかわりを持っていきます。花江はどんな思いで道男に接すると思いますか?

今となっては、道男くんは、“はるさんから託されたもの”という思いが強いんです。もちろん、道男くんのことを助けてあげたいという思いは変わらないけど、それ以上に、はるさんの願いを叶えてあげたいんですよね。

とはいえ、一緒にいる時間が長くなれば、当然、道男くんへの情も出てくるわけで、この2つがあるから、彼とのつながりはここで切れるのではなく、今後も続いていくんだろうと思っています。

でも、花江からすると、やっぱり、道男くんを通して、はるさんの気持ちのそばにいることができるというイメージが強いのかな。

──花江さんにとって、義母・はるさんは、どんな存在ですか? 猪爪に嫁いできたときからこれまでで、変化はありましたか?

花江自身が両親を亡くしているので、はるさんは義母とはいえ、花江にとって大切な「おかあさん」です。

これは私の気持ちの中だけの話なんですけど、実は呼び方が変わっているんです。最初は、「お様」、次に「おさん」。台本上での変化はそこまでなんですけど、私の中では、最終的に「おかあさん」とひらがな呼びになっていました。

あくまで「お母さん」ではないんですよね、実の娘ではないので。花江は、そこは越えてはいけない一線も感じているんです。だから、「おさん」よりは近い存在、だけど実の「お母さん」ではないから、「おかあさん」。

とにかく、花江にとって、はるさんは特別な存在です。憧れの人でもあり、目指すべき人でもある。実際のはるさんには、はるさんなりの悩みもあったかもしれないですけど、少なくとも花江から見れば、“家を守る完璧なおかあさん”。だから、自分も同じようになりたいと強く思っているんですよね。

でも、どんなに憧れて同じようになりたいと思っても、そこは別の人間だから、同じ山に登ることはできない。そこで別の山を登っていくことになるんですけど……。その山をコツコツ登って行った結果、周りからは、はるさんとよく似て見えるようになっていく。

つまり、はるさんのようになることを目指すのではなく、自分らしい母親像を目指そうと思って極めていった結果、どこか、はるさんに似てくる。これって素敵なことだと思うんです。だから、はるさんの面影を、これからの花江に感じてもらえたらいいなと思っています。

──長男の直人(琉人)と、次男の直治(楠楓馬)、息子たち2人について、それぞれどんな個性がありますか?

演じている琉人くん、楓馬くん、そのままではあるんですけど(笑)。直人は、まさに弟を大事にする優しいお兄ちゃん。直治は少しひょうきんなところがあって、現場にいるだけで空気を変えてくれるような子ですね。

共通しているのは、本当に優しくて、思いやりがあるところ。それは現場でもそうなんですけど、私が思うのは、特に画面を通して彼らを見た時です。

お父さんである直道さんが出征していくときに、「お母さんを頼んだよ」と言われたことが、 今の2人の言動にすごくリンクしているように感じます。だから、花江に優しくて、家族思いで、トラちゃん(とも/伊藤沙莉)の娘・優未思いで、という性格になっている気がします。でも、やっぱりいちばんは、本人たちが持っているものがにじみ出ているのかな。