スタートしました、連続テレビ小説「あんぱん」。
ご存じ『アンパンマン』の生みの親、やなせたかしさんの妻・暢さんがヒロインのモデルです。スタート週は「人間なんてさみしいね」。これ、やなせたかしさんの詩集のタイトルですね。涙なしでは語れない感動のスタート週でした。やなせさんの言葉も随所に散りばめられています。
珠玉のセリフとともに振り返ります。
(もちろん、ネタバレありですのでご注意ください♪)
「正義は逆転する」

可愛らしい、線画アニメで幕を開けた「あんぱん」。(初期の絵本のアンパンマンが動いていた!)冒頭のセリフは
「正義は逆転する。信じられないことだけど正義は簡単にひっくり返ってしまうことがある。じゃあ、決してひっくり返らない正義ってなんだろう?」……北村匠海が演じる柳井嵩のこの言葉、脚本家中園ミホは「冒頭に絶対に持ってきたかった」と語っている。(※中園ミホインタビュー前編)
「ちっとも強そうじゃなくて、かっこ悪いけど、そこがいい」とエールを送る主人公、のぶ(今田美桜)。そして……「お腹すいた!」
舞台は「御免与町」
さて舞台は主人公のぶが「ハチキンおのぶ」と呼ばれていた昭和2年の高知県御免与町(架空の町。「ごめんよ」って、ちょっとかわいい)。黄金の稲穂に真っ赤な彼岸花、走るのぶ(永瀬ゆずな)を追い越す蒸気機関車……もうこの画面だけで、ふくいくたる朝ドラの香り。

駅から降りてくる松嶋菜々子と傍らの阿部サダヲ。走り込むのぶがぶつかったのは「たかし」と呼ばれる男の子。松嶋菜々子はこの子の母親らしい。
のぶが息せき切って駅に駆け込んだのは、帰ってくる父親の結太郎(加瀬亮)を迎えるためだった。

父と帰った自宅は石屋を営んでいる。ここで、のぶの家族が明らかに。
おじいちゃんで石職人の釜次(吉田鋼太郎)と、住み込みの弟子・原豪(細田佳央太)、おばあちゃんのくら(浅田美代子)、母親の羽多子(江口のりこ)と、2人の妹たち。え? お母さんの名前って羽多子……バタコさん??

場面かわって、松嶋菜々子演じる柳井登美子と嵩(木村優来)が向かったのは医師・柳井寛(竹野内豊)・千代子(戸田菜穂)が営む医院。
嵩が父親と死別し、母子ともども亡き父の弟(嵩にとっては叔父)の家に身を寄せたことがわかる。そこには嵩の弟・千尋(平山正剛)が先に養子に来ていたことも。
松嶋菜々子(「ひまわり」)と戸田菜穂(「ええにょぼ」)、2人の元朝ドラヒロインが共演! さらに昭和初期の上流家庭の女性が着る着物にも注目したい。大胆であでやかな柄の着物は、二人をさらに引き立てる。

転校生として、のぶと同じ小学校に転校してきた嵩は“東京もん”として高知の“悪ガキ”どもにいじめられ、お弁当をとられてしまう。それをかばうのが、のぶ。
そして嵩は絵がうまい!
家族を描いた絵を眺めている嵩のもとに、謎の男・阿部サダヲが登場!
嵩に、パンをふるまってくれる……おいしそうな香りが画面からあふれ出てきそう!
子どもたちにはタダ、大人たちには10銭を請求するこの男の名は、屋村草吉。のぶたちから「ヤムおんちゃん」と呼ばれるように。もうこれは、間違いなくジャムおじさん(笑)(※あんぱんプレトークショー)

「女子も大志を抱け」「たかしは、うちが守っちゃる」
ここで、のぶの父・結太郎が、嵩の叔父・寛に診療を受けるシーンが挿入される。「脈に乱れがあるね。無理せんと、まぁ、たまには休め」……「休んでら、おれるか。今が勝負どころや。来週は南京豆の買い付けに行くき」これはちょっと不穏なフラグ?……。
その夜のこと。結太郎は、のぶに自分の夢を語る。「アメリカにもイギリスにも負けん、貿易会社を作る」そして「女子も大志を抱け」と話す。(※加瀬亮インタビュー)
そのころ、嵩は亡くなった父親・清(二宮和也)と家族一緒に銀座であんぱんを食べた、幸せだったころを思い出して絵を描いていた。(※二宮和也インタビュー)

そんな中、「しばらく高知の町に用事があるから」と嵩の母(松嶋菜々子)が出かけていく。実は再婚のため、嵩を置いて家を出たのだった。何かを察した嵩はしばらく追いかけていくが……彼岸花咲く田んぼの道を行く、白いパラソルと色鮮やかな着物姿を見送る子どもたち。印象に残る風景だ。
茶飲み話をする大人たちが「あの子、置き去りにされたがじゃと」と話すのを聞いたのぶ。心配したのぶが見つけたのは、夕焼けの中、シーソーに座り込む嵩の姿だった。「シーソーはふたりで乗るもんやき」「たかしは、うちが守っちゃる」のぶの言葉が沁みる。きっと一生続く、ぎっこんばったんの始まり。
「恨みは恨みしか生まんがよ」

学校ではいつもの悪ガキが嵩の弁当を取り上げようと寄ってくる。いじめに立ち向かったのぶは岩男(笹本旭)にけがをさせてしまう。弱い者いじめをした方が悪い! と素直に謝らないのぶに、母の羽多子が諭す。
「なんぼ自分が正しい思うたち、乱暴はいかん。痛めつけた相手に恨みが残るだけやき。恨みは恨みしか生まんがよ」

そんな折、のぶの父・結太郎(加瀬亮)が「朝鮮の京城」へ出張、ひと月家を空けることになった。
父・結太郎出発の日。駅まで見送りに来たのぶ。
「うちの夢ってなんじゃろ?」
結太郎「ゆっくり見つけたらえい。見つかったら思いっきり突っ走ればえい。のぶは足が速いき、いつでも間に合う」
離れがたい様子ののぶの頭に結太郎は自分のソフト帽を載せたのだった。

それからひと月後のある晩、柳井医院に電話が……
寛「はい、うちの患者ですが……」
のぶの家に向かった寛は
「結太郎さんが、帰りの船の上で、心臓発作を起こいて……息を引き取られたそうです」呆然とする朝田家の面々。
ああ、嵩だけでなく、のぶまでも……。
「たった一人で生まれてきて、たった一人で死んでいく。人間なんておかしいなぁ」
第1週を締めくくる金曜日は、結太郎の葬儀場面から。
光明真言を唱えながら歩く和尚(斎藤暁)を先頭に、葬儀の行列は刈り入れを終えた田んぼの道を進む。続く家族は、白い着物に四角い布を頭に載せている。のぶ(永瀬ゆずな)は、泣かなかった。
息子・結太郎を亡くしたくら(浅田美代子)は眠れない、食べられない。そしてつぶやく。「結太郎は、何のために生まれてきたがやろう」
のぶを心配する嵩に屋村が言う。
「たった一人で生まれてきて、たった一人で死んでいく。人間ってそういうもんだ……人間なんて、おかしいなぁ」
夜、今度は寛が言う。
「それが生きちゅうことやないかえ。生きちゅうき、悲しいがや。生きちゅうき……笑える日がくるがや」
「生きているから悲しい……」やなせたかしさん作詞の「てのひらを太陽に」の一節が浮かぶ。

石屋の釜次は、息子・結太郎の墓石を彫っている。
家の中にいたのぶは不意に立ち上がって全力で駆けていく。駅で必死に父を探すのぶ。居合わせた嵩が一枚の絵を差し出す。それには、あの日、父がソフト帽をかぶせてくれた様子が描かれていた。のぶは、大粒の涙をこぼすのだった。
しんみり帰ってくるのぶと嵩の前に現れたのはあんぱんを持った「ヤムおんちゃん」。
そのまま悲しみに暮れる朝田家へ。

あんぱんを食べて笑顔になるのぶ。これまで何も口にすることができなかった祖母・くらも笑顔に。(※浅田美代子インタビュー)
「結太郎にも食べさせてやりたかった」
何度も泣かされた金曜日なのでした。
さて、来週のタイトルは「フシアワセさん今日は」
まだ困難が続きそうな予感……では、林田理沙アナウンサーの最後の言葉に勇気をもらって「ではまた来週。ほいたらね!」