連続テレビ小説「あんぱん」に登場するやなきよしは、ヒロイン・朝田のぶ(今田美桜)と後に結ばれることになる柳井たかし(北村匠海)の父親だ。ドラマが始まる時点で既に鬼籍に入っており、嵩の回想シーンでの登場がメインとなる。この難しい役どころを、演じる二宮和也はどのように受け止めているのか。北村とは旧知の仲である二宮を「あんぱん」の撮影現場に訪ね、話を聞いた。


この朝ドラにはワクワクできる仕掛けが詰まっている

――二宮さんにとっては初めての“朝ドラ”出演ですが、オファーを受けたときの気持ちは?

とにかく驚きました。朝ドラとか大河ドラマとか、そういった撮影が長期にわたる作品に、僕は今まで呼ばれることがなかったので。僕は結構、作品に対しての縁みたいなものを感じる人間だから、自分には出演依頼がないのかなと勝手に思い込んでいたんですよ。けれども呼んでいただいて、作品に参加できることが決まって、びっくりしましたね。

――柳井家の家族を含めて、キャストの方々も豪華ですよね。

NHKならではと言いますか、キャスティング発表だけでも「どうなるんだろう?」というワクワク感がありますよね。やっぱり朝ドラであったり、大河であったり、長期的な、いわゆるクラシカルな枠というものに、出る側の人間も一度は携わりたいという思いがあるでしょうし。

――そこに、二宮さんも加わるわけですから……。

ただね、物語が始まるときには僕が演じる柳井清は帰らぬ人になっているから、嵩の回想の中にしか登場しないんですよ。本当に、いろんな人から「朝ドラ出演、おめでとうございます」と言っていただくのですが、あまり言わないでほしい(笑)。公式にしないでください、みたいな(笑)。


できるだけ優しく、温かいお父さんにしたかった

――ヒロインの夫になる嵩のお父さん役と聞いて、どう感じましたか?

子ども時代の嵩(木村優来)と千尋ちひろ(平山正剛)を見ている清は、ちょっとしか登場しないかもしれませんけど、嵩たちのいろんな思い出を増やせたらな、というふうに思いますね。

――出演シーンとしては短かかったですが、その中で、清がどんなお父さんだったと想像して、お芝居に臨みましたか?

僕は、基本的には優しいお父さんにしよう、というふうに考えました。嵩の将来の発端となり得るきっかけをいくつも残してくださった方だと思いますし、後の嵩の作風もそうですけれども、そこに至るまでの経緯というのは、やっぱり父と母、兄弟もそうですが、そういうところからひもづいているものだと思いますので。そうした優しさや温かさ的なものはなるべく置いていきたいな、と考えました。


息子・嵩役の北村匠海くんとは“同じ属性”にいると思っています

――北村さん自身に抱かれている印象は?

クールな印象は元々あったけれども、その中でも「器用だな」っていうことをずっと感じていて。性質としては、同じ属性にいる人間だな、と感じていたので、同じシーンはないにせよ、親子として同じものを持っているのかな、と思いました。

あと、僕が見たどの作品でも一貫してクールさというか、寂しさというか、はかなさというか、そっち系のものを常に役が持っていたので、この嵩がどうなっていくのかというのは、興味があるところですね。ただただ優しいとか、柔らかいとか、温かいとか、だけではないものが見られるのではないかと期待しています。


撮影現場で感じた温かさ。それを作り出しているのは……

――今回のロケ撮影に参加しての印象は?

現場が、すごくあったかい感じですね。それは、撮影開始から数か月近く過ぎているというのも影響していると思うんですけどれも、すごく元気で活気があって「いい現場だなぁ」と思いました。それは多分、核となる2人、のぶと嵩が出している空気感なんだろうな、ということが、現場にいると分かる。すごくいい、優しい、あったかい現場だなと感じました。

――松嶋菜々子さん演じる妻・登美子とはどんな感じでしたか?

登美子さんは……、松嶋菜々子さんは別の作品の現場でご一緒していましたが、なんだか久しぶりでした。

菜々子さんも柔らかい、ゆったりしている人なので、この現場とすごくマッチしていて、僕はきょうが撮影初日だったんですけれども、全然緊張することなく「ありがとうございます」という感じで、現場に居させてもらいました。現場で普通にお話していましたが、松嶋菜々子が嫁の人生は“勝ち”です(笑)。これは自慢します。


視聴者の皆さんと一緒に笑い、泣き、驚いていくつもり

――清の登場シーンが多くない分、放送を視聴者の方と一緒に楽しめる感じもありますか?

それは本当にいいバランスと言いますか、多分、出ている人間で、これだけ放送を楽しみに待っているのは僕くらいですよ(笑)。出演している多くの人たちは、撮影に追われる日々ですから、そんなこと言ってられない、みたいな感じですけれど、僕はもう全然余裕ですから(笑)。

みんなの撮影に対しての苦労とか、実質的な時間軸は自分も経験しているので、大変なのは重々理解していますけれども。というくらい、内部の人間も楽しみにしている作品なので、これは本当に“ぜひもの”で頑張っていただきたいですね。

朝ドラを見せていただいて、これから僕も驚くようなキャストや物語の展開がどんどん出てくると思いますので、視聴者の皆さんと一緒に笑い、泣き、驚いていくつもりです。