まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の密通によって生まれた賢子。まひろが宮仕えに出たため、幼いころから母親不在で育ち、まひろに対してわだかまりを抱いていたが……。複雑な賢子の内面について、演じる南沙良に聞いた。
「鎌倉殿の13人」から数年を経て、成長した姿を見てほしい
──武者・双寿丸(伊藤健太郎)と急接近していますね。
クランクイン初日の撮影がロケで、双寿丸との出会いのシーンだったんです。だから、私自身にとっても余計に印象的で……。
盗賊から賢子を助けてくれた双寿丸はかっこいいですし、すごく自由ではつらつとしていて、これまで出会ったことのないタイプの人物です。賢子が心惹かれていく気持ちを実感できました。
賢子の今後に大きな影響を与えることは間違いないと思うので、これから、双寿丸とどんなふうに絡んでいくのか、楽しみに見ていただきたいです。
──「鎌倉殿の13人」(2022年)以来、大河ドラマ2作目のご出演です。前回は源頼朝と北条政子の娘・大姫役で悲しい最期を迎えました。今回の賢子役とは、どんな違いを感じますか?
「鎌倉殿の13人」は、とにかく緊張していて、最後まで夢見心地なところがあったんですが、今回は「大河ドラマの現場にいる!」ということを意識して撮影に臨めています。
大姫とは違い、賢子はこのあと女房として、そして歌人としても、幸せに生きていくことになるはずなので、温かく見守っていただけたらと思います。私自身も、「鎌倉殿」から数年を経て、少しでも成長したところを皆さんに見ていただきたいです。
──前回が鎌倉時代で、今回が平安時代。時代が近いこともあって、SNSでは「大姫の前世は賢子だったのか!」といった声もありました。
それは、私も思いました。『源氏物語』を愛した大姫が、紫式部の娘になるなんて(笑)。それに、まひろの幼少期を演じた落井実結子さんが、「鎌倉殿の13人」では大姫の幼少期を演じたんですよね。時代劇自体あまり出演する機会がないのに、不思議な縁を感じます。
所作は多少違いますが、演じるうえで鎌倉と平安にそれほど大きな違いは感じていません。ただ現代劇と比べると、どちらも言葉がまったく違います。しゃべり方も、重みが出るよう意識しながら演じています。
賢子のすごいところは、寂しさを“強さ”に変えていくところ
──賢子はどんな人物と受け止めていますか?
明るくて利発、負けん気が強くて、天真爛漫、すごく情熱的なものを秘めている女性だと思っています。そして、どんなときでも「自分を持っている」ところが魅力だと思います。ひとり落ち込んでいるときでも、母上(まひろ)と対峙しているシーンでも、その感覚は大切にしています。
——まひろとの関係については、いかがでしたか?
子ども時代には母親と一緒にいる時間が少なくて、「自分は放っておかれている」という気持ちがすごく強い子だったんじゃないかと思っています。母上は、たくさんお土産を持ってきてくれるけど、それよりも、本当は自分との時間を作ってほしいと思っていたはず。
でも賢子のすごいところは、その寂しさを自分の“強さ”に変えていくところです。私なら、きっとグレちゃうと思う(笑)。かっこいいですよね。
私自身が登場してからは、割とすぐに親子の緊張関係は雪解けしますが、それ以前のふたりの関係を意識しながら演じないといけないので、そこはちょっと難しかったです。
──まひろとのシーンで印象的だったシーンはどこですか?
第39回で、賢子の叔父で、母上の弟でもある惟規(高杉真宙)さんが亡くなったとき、泣きじゃくる母上を賢子が支えるシーンです。賢子にとっては、初めて母上が涙を流すところを見たんですよね。それでだいぶ母上に対する見方が変わったと思うんです。
それまでは、「母上にとって家族って──ひいては、私って何なの?」というひねくれた感情があったはず。でも、あの涙を見たことで、母上にとって家族がどれだけ大切な存在なのかを知ることができた。生まれてからそれまで、少しずつ心の中に積み重ねられていた母上への不信感や不満が崩れる瞬間だったんじゃないかなと思っています。
あのシーンがあって、今は、家族のために内裏で働く母上のことを、建前ではなく、心から尊敬できるようになったと感じます。といっても、いと(信川清順)や乙丸(矢部太郎)、おじじ様(為時/岸谷五朗)に対してするように、急に甘えられるわけでも、素直に頼れるわけでもないので、その微妙な距離感を出していけたらと思っています。
私自身は、母とは今でも一緒に買い物にいくくらい仲よしで関係も良好ですが、似ている部分としては、私も甘えること自体が苦手なタイプ……。そういう母と娘の、微妙な距離感は、少し共通しているかもしれません。
情熱的な恋をたくさんする“恋多き女”のエピソードも楽しみ
──ところで、賢子は、自身の複雑な出生については……。
もちろん、知らないです。ですから、私自身も、演技するうえでそこは特に意識していないです。これからは……どうなるんでしょう。私なら、「実は父親が違う」なんて言われたらパニックになってしまうと思いますし、想像もつかないです。
──史実では、賢子もいずれ内裏に出仕するので、道長と顔を突き合わせることになります。
そうなんですよね。どうなるんでしょう。楽しみです。
史実では、賢子には情熱的な恋をたくさんする“恋多き女”のエピソードもあるんですよね。私自身には、そういう要素は全くないのですけど(笑)、そんな生き方にも憧れるし、素敵だなと思っているので。こちらも、とても楽しみです。