ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、ききょう(清少納言)役のファーストサマーウイカさんから!
ファーストサマーウイカさんの第38回振り返り
——まひろ(吉高由里子)と対峙するシーンは、どんな思いで演じましたか?
ききょうは『源氏物語』を読んで、自分と作家性は違えども、「うまい、面白い」と感じたんですね。だからこそ、危機感や怒りや悲しみや色んな感情が渦巻きました。このまま、まひろを左大臣(道長/柄本佑)の道具にさせてはいけない、と。
でも、女房、作家の先輩としてのプライドがあるし、のっけから言うなんて品がない。なのでまずは「引き込まれました」と正直な感想を伝えました。「まひろさまらしい」と、“ききょう節”で牽制しながら。
「部活のOG感」とでもいいましょうか。卒業したあとに部活に遊びにきて、あーだこーだ小言を言ってくる先輩より、「いい試合だったねー」って褒めてくれる人の方が、人として器が大きく感じるし、同じ土俵でものを語らない奥ゆかしさがある。
久しぶりに会ったまひろに対して、「面白かった」と褒めることが、自分の地位を脅かさないために必要なことだった。だから余裕を見せたかったし、怒りなどの負の感情は見せたくなかたんです、本当は……。
左大臣に頼まれて『源氏物語』を書いたと知ってから「私、前から左大臣のこと嫌いだって言ってたよね。なんで? 私たち友達だったよね」と、どんどん負の感情が溢れて、無視できないところまで達してしまった。
大好きで可愛がっていた後輩が、大嫌いな奴のお気に入りになって一派に取り込まれたような感じでしょうか。
ききょうはまひろのことが好きだから、友人の才能の素晴らしさを喜びたい気持ちはあるんです。ただ、それを凌駕する裏切り、悲しみ、物書きのプライド、敗北感、無力さ、悔しさ……さまざまな感情の膿が溜まって、ききょうを蝕んでいたんだと思います。
あのシーンは、火にかけた水が、だんだんと沸騰していくような、そんな意識で演じました。