1923年に発生した関東大震災を由来とする9月1日「防災の日」より、東京・日本橋の「UNPELアンペル GALLERYギャラリー」にて、NHK財団が企画協力する「明治の災害とメディア」展が始まりました。

展覧会の開始を間近に控えた8月末にギャラリーを訪問し、今回の展覧会を担当される、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の広報部広報室の三浦美紗さんに、見どころを紹介していただきました。

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、同社が所蔵する「旧同和火災コレクション」を活用し、京都文化博物館で開催された「伝える災害の記憶展」(2021年3月20日~5月16日)を皮切りに、全国で展覧会を開催しました。NHK財団では、各地の博物館で開催された展覧会と併せて、同社が「UNPEL GALLERY」で実施する、防災・減災に向けた啓発活動を兼ねたメセナ事業にも企画協力しています。

会場をご案内いただいた、あいおいニッセイ同和損保・広報部広報室の三浦美紗課長。

「災害資料コレクション」が伝えつなぐもの

——三浦さんはいつからこのメセナ事業に関わってこられたのですか?

私自身が担当させていただくのは、今回が初めてです。コレクションを活用した展覧会は2021年から毎年開催していて、今回が4回目になります。毎回、30点前後の資料を出展してきましたが、今回は33点の資料を展示しています。

会場の様子(UNPEL GALLERY)

——今回の展覧会名「明治の災害とメディア」に込めた思いをお聞かせください。

本展⽰では明治以降の近現代に、「メディアがどのようにして災害を伝えていったか」という視点で歴史的な資料をご紹介しています。江⼾時代までは、災害の有様は主に⽊版などで刷られた瓦版などで伝えられてきましたが、明治維新後はより繊細な表現ができる⽯版や銅版に替わり、やがて写真入りのものが登場します。

メディアは技術を駆使して災害を⽣々しく伝えることに注⼒するようになります。多種多様に発刊された新聞や雑誌による詳細な報道と惨状を描いた克明な画像は、災害支援活動や全国からの義援⾦を募る原動⼒となりました。

皆様と⼀緒に災害に対する⼼構えや備えについて考えるきっかけとなれば、との思いを込めています。


明治時代の2つの震災にフォーカス

災害資料(UNPEL GALLERY)

——今回の企画展は明治時代の2つの震災資料を中心に出展されていますが、そのねらいは?

明治24(1891)年の濃尾地震も、明治 29(1896)年の三陸沖を震源とする地震による⼤津波も、どちらも甚大な被害をもたらした災害であり、当時の惨状を克明に表現した資料が多く残されています。その資料からは当時のメディアが何を目的に、どのように災害を伝えようとしたかが読み取れます。

——今回の出展資料で、三浦さんが特に見てもらいたい作品はありますか?

三浦さんが注目する「岐阜県愛知県大地震実況」図。

一つは「岐阜県愛知県大地震実況」図です。この資料は濃尾地震について、岐阜県と愛知県の被害の様子を書き記した錦絵です。資料の中に登場する地名は「名古屋」「岐阜」「大垣」などがあり、長良川に架かっている橋も崩れている様子が描かれていて、被害が広範囲で発生したことが克明に表現されています。

また、本文記述にある「前代未聞の珍事」の表現からも被害の甚大さが伝わってくると感じています。

明治三陸津波後の被災地の様子を描いた「明治丙申三陸大海嘯之実況」図。

もう一つ、『めいへいしんさんりくだいかいしょうじっきょう』もぜひ見ていただきたい作品です。こちらは明治三陸津波後の被災地の様子を描いています。

炎を上げて倒れる家屋の中で逃げ遅れている人や、津波にのまれている人の様子など、目を伏せてしまいたくなるほどの状況が描かれていますが、その理由が本文記述に「此同胞の急を救助するの義務を尽くせられんことを希望す」とあり、あえてせいさんな描写を使い、全国に救助を求めていたことが伺えます。

被災の様子が生々しく描写されている。

8K災害の記憶デジタルミュージアムも展示

江戸の震災資料を体感できる8K災害の記憶デジタルミュージアム。

——ギャラリーではデジタルミュージアムも出展されていますが、特徴を教えてください。

「8K災害の記憶デジタルミュージアム」を展示しています(参考:「国立科学博物館『災害の展示-伝え方の歴史-』に出展しました」)。

NHK財団の8K超高精細映像技術と、「翻刻文」のAI音声合成技術による読み上げにより、災害史料にせいに描写された絵図や古文で記録された災害情報を分かりやすく学ぶことができます(参考:「みんなで翻刻」プロジェクト※ステラnetを離れます)。

昨年の10~11月に国立科学博物館に出展し、期間中に約5万人の皆さまに体感いただきました。江戸時代の震災に関わる災害資料が中心ですが、昨秋に現地にて体感いただけなかった方も、また、もう一度見たいという方も、作品の精緻な描写やAI音声による説明を、8Kならではの高画質と大画面で体験していただければと思います。

——WEBサイトで展開されるデジタルミュージアムにも、コンテンツが追加されましたね。

かつて本ギャラリーで開催された展覧会「水害と向き合う」(2022年9月)の出展資料をデジタルミュージアムとしてサイト公開してから、1年3か月が経過しました(参考:「世界初のAI合成音声と高精細画像により、VR空間でよみがえる『災害の記憶』」)。

今回の展覧会に先立って「8K災害の記憶デジタルミュージアム」にある資料を「江戸災害に学ぶ」として追加しました。ご自宅や移動時間などにもPCやスマートフォンでご利用いただけます。
参考:デジタルミュージアムを体験できる、UNPEL GALLERY ※ステラnetを離れます

「江戸災害に学ぶ」を追加した記憶デジタルミュージアム。

明治時代のメディアが残した災害資料を展示公開する「明治の災害とメディア」展は、9月1日(日)から9月29日(日)まで開催されます(入場無料)。テレビやラジオなどのメディアがない時代に、防災・減災への願いを伝え繋ごうとした人たちの思いに、皆さんも触れてみませんか。
資料提供:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

「UNPEL GALLERY」スタッフの井上英里さん(右)と三浦さん(左)。

「伝える―災害の記憶」あいおいニッセイ同和損保所蔵災害資料「明治の災害とメディア」展

会期:2024年9月1日(日)~29日(日)毎週月曜日は休業
会場:UNPEL GALLERY
主催:UNPEL GALLERY
企画協力:NHK財団
入場時間:午前11:00〜午後7:00 最終日の9月29日(日)は午後5:30まで
※詳しくは、展覧会公式ページ「伝える—災害の記憶」あいおいニッセイ同和損保所蔵災害資料「明治の災害とメディア展」をご確認ください(ステラnetを離れます)。


展覧会の開催についてのお問い合わせは、NHK財団 展開・広報事業部へどうぞ。               

(文/展開・広報事業部 社会貢献事業部)