関東大震災から100年を迎えた9月1日、東京・上野の国立科学博物館では「震災からのあゆみ―未来へつなげる科学技術―」 が始まりました。日本館1階の中央ホール特設会場では、10月11日から「災害の展示-伝え方の歴史-」と題し、過去から現在まで、災害はどのように伝えられてきたのか、その歴史を遡る展示を行っています。
本展に特別協賛しているNHK財団は、この特設会場で、「8Kで観よう!!『災害の記憶デジタルミュージアム』」を公開しています。

4億画素のデジタル化で記録を鮮明化

特設会場で公開しているデジタルミュージアムは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が所有する江戸時代の錦絵図などの災害資料をNHK財団の技術により約4億画素の高画質でデジタル化し、バーチャル空間上の美術館に展示する、というものです。画像はハイビジョン方式の16倍の画素数を有する8K方式のディスプレーで表示しますが、画像の任意の部分を拡大することができます。4億画素分のデータがあるので、拡大しても画質は変わりません。災害資料を実物を見るより鮮明に鑑賞することが可能になりました。

8K技術により、資料の地名や震災に巻き込まれる人々の表情など、遠目ではなかなか気づきにくい細かな描写まで観察することができます。


江戸時代の災害の記録

このミュージアムは、①江戸の大地震②地震と鯰③大火/風災/疫病の3つのコーナーで構成され、19点の災害資料が展示されています。

それぞれの資料は当時の被害状況を事細かく記録したものや、人々が災害をどのようにして受け止めているかを風刺しているものなど多岐にわたっており、現代の私たちと災害の捉え方がどう違うのか、逆にどこが似ているのかを比べてみると面白いでしょう。


さらに詳しく知るためにさまざまな仕掛けを用意

このミュージアムでは、いくつかの災害資料にNHK財団に所属するNHKの元アナウンサーの声をもとに開発したAI合成音声が読み上げる流暢な解説を聞くことができます。また、一部の資料には絵図に描かれている文章を現代文に書き起こした翻刻文を表示して、解説同様に合成音声によって読み上げる機能を備えており、災害資料が記す内容をより深く理解することができます。

このほか、会場内では、災害錦絵図のアニメーションも公開しており、デジタルミュージアムと合わせて楽しむことができます。

▼災害錦絵図のアニメーション▼

過去の災害の記録をつぶさに見ることの意義

100年前の関東大震災や2011年の東日本大震災は、地震による家屋倒壊はもとより、火災や津波による2次災害により多くの死傷者を伴う未曾有の災害となりました。このように、災害は長い歴史の中で幾度となく起こり、その都度、さまざまな記録が残されていきます。そこには当時の人々が災害にどう向き合ってきたかが克明に記されており、後世のいましめとなるような話も数多くあるはずです。こうした記録をつぶさに見ていくことが、私たちが今やるべきことや、未来の世代に向けて伝えていくことを見い出すきっかけになるのではないでしょうか。

約4億画素の高画質でのデジタル化や、NHKの元アナウンサーの声をもとに開発したAI合成音声による解説など、NHK財団の技術を活用したこれらの展示が、過去の災害を当時の人々がどのように受け止め、後世に伝えていこうとしていたのかを考える機会になればと願っています。

(NHK財団 技術事業本部 朱牟田 肇)

今回ご紹介したデジタルミュージアム、AI音声合成技術などのお問い合わせ先↓
https://www.nes.or.jp/contact/index.html