ことし6月、大型の台風2号の影響により日本各地で記録的な大雨となりました。特に関東甲信から近畿では「線状降水帯」が相次いで発生し、24時間に降った雨量は観測史上最多。河川の氾濫、土砂災害などを引き起こしました。

このような異常気象や自然災害から身を守るために、私たちは何ができるのでしょうか。そのヒントとなるのが過去の災害の記録です。

先ごろ公開された「あいおいニッセイ同和損保―災害の記憶デジタルミュージアム」では、VR(バーチャルリアリティー)空間で過去の災害資料に触れることで、被災者が未来の私たちに伝えたかった防災・減災の声をより鮮明に感じることができます。

NHK財団の技術協力により制作されたデジタルミュージアムは、高精細画像やAI合成音声などの最新技術を駆使したVR空間になっているのが特徴。ネット環境さえあれば、直感的な操作で誰もが簡単にアクセスすることができます。

では早速、最新のデジタルミュージアムにご案内しましょう。
           ▼▼▼入り口はコチラ▼▼▼
        https://unpel.gallery/saigai-no-kioku/

ベース資料は、同社所蔵の1,460点にのぼる災害図コレクション「旧同和火災コレクション」。今回はその中から、2022年9月に同社美術館であるUNPEL GALLERYにて開催された「『伝える-災害の記憶 あいおいニッセイ同和損保所蔵災害資料』 Part2~水害と向き合う~展」の出展品26点が鑑賞できる。
 

モダンなVR空間を自由に歩いて鑑賞

床面積おおよそ90坪、高さ約4mが想定されたバーチャル空間には、額装されたコレクション資料が飾られています。順路に沿って展示品を閲覧するだけではなく、画面右下に配置されたホイールの操作で空間内を自由に散策でき、白を基調としてミュージアムの雰囲気を体感できます。リアルな美術館には見られない大きな天窓や、透明な壁面に標された作品一覧はバーチャル空間ならではのしつらえになっています。

よみがえる日本の水害の記憶

展示品は、①京都・大阪の災害史、②諸国の災害と復興、③近代の災害とメディアの3つに分類されており、大地震に伴う水害発生の記録など、「過去の災害から学ぶ」を意識した興味深い資料の出展になっています。

高精細画像で肉眼を超えた鑑賞

鑑賞したいコレクション資料の正面に立ち、右下のホイールを前方へ操作すると作品がスムーズに拡大されます。実際は小さなサイズの資料でも、拡大して細部までじっくり鑑賞できるので、リアルな展示では気づかなかった細かな描写が肉眼を超えて発見できます。
 

NHKアナの発話を学習したAI合成音声

音声ガイドももちろんあります。展示資料を説明してくれるのは、NHKアナウンサーの発話を学習したAI合成音声です。聞いてみると、どこかで聞き覚えがある滑らか口調な声が資料の概要を読み上げてくれます。
 

『i』マークボタンの秘密

いくつかの展示資料には、付加情報を閲覧する「i」マークボタンがあります。これはミュージアムの目玉の1つ「翻刻文ほんこくぶん」の提示です。

江戸時代以前の災害資料に筆記・出版される文字情報は、過去の災害時の状況を知る貴重な手がかりとなります。これらの「くずし字」を現代の活字に直し、データとして扱いやすくするのが「翻刻作業」です。

資料から文字を抜き出すだけでも大変なこの作業は、東京大学地震研究所の加納靖之先生方がリードされる「みんなで翻刻」チームによるもの。今回の資料の翻刻にもご協力いただきました。(詳しいご紹介はまた別の機会に)

「みんなで翻刻」へのリンクはコチラ↓
https://honkoku.org/

この翻刻文のAI合成音声による読み上げにチャレンジしたのは、NHK財団・技術事業本部の合成音声開発チームです。(おそらく)世界初となる翻刻文のAI合成音声を、ぜひお聴きください! 目と耳の両方から情報が届くことで、資料の理解がいっそう深まる感覚を体感できます。

このように、「あいおいニッセイ同和損保―災害の記憶デジタルミュージアム」は、展示資料を高精細画像で楽しむだけではなく、防災・減災資料を深く理解してもらうためのさまざまな工夫がなされています。

           ▼▼▼入り口はコチラ▼▼▼
         https://unpel.gallery/saigai-no-kioku/

今回は、NHK財団が制作したデジタルミュージアムの特徴をご紹介しました。
第2弾では、災害資料からの翻刻文作成のしくみと、世界初となった翻刻文AI合成音声読み上げに挑んだプロジェクトチームの開発秘話を、研究開発者へのインタビューを交えてご紹介します。次回もお楽しみに!

(取材・文/NHK財団 石井啓二)