のぶ(今田美桜)は高知新報で新聞記者として働き始めました。相変わらず猪突猛進、自分が“やらねば”と思いこんだことに忠実なのぶです。そして今週のおしまいに、同じ新聞社の入社試験を受けに来たのは嵩(北村匠海)! やなせたかしさんの著書によれば、実際に、暢さんと出会ったのは新聞社に入社してからのこと。
ドラマでも、2人の未来がようやく交わりそうです。今週もセリフとともに振り返ります。
もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。
「俺らぁが拾うは、うそ偽りのない生の声や」

いよいよ、高知新報での仕事が始まった。初めての女性記者2人のうちの1人だ。
小田琴子(鳴海唯)は初めての就職だと自己紹介した。
あいさつの言葉に詰まってしまったのぶに東海林(津田健次郎)が言う。
「いっぺん聞いた情報はいっぺんで頭に叩き込め。記者の鉄則や」

早速取材について行くと……町では社会部の記者たちが進駐軍に話を聞こうとしているが、ほぼ何も聞き出せない。しかし進駐軍は女性の記者がいることに興味を示した様子。
社会部の記者たちはのぶに向かって捨てゼリフ
「女はええにゃあ。笑いよったらええがや」
夕方、のぶは早々に帰される。
朝も、出社するとお茶くみは同期の琴子がすでにやっていた。

何をすればいいかと東海林に聞くと
「闇市、行ってこい。……現場へ行け、足で稼げ、目と耳で感じろ。そこに答えがある」
闇市へ行って仕入れについて話を聞こうとすると、子どもが芋を奪って走っていく。
店で散らばった商品を元に戻す手伝いをしていると、盗った芋を持って子どもが戻ってきた。
「おっちゃん、困るかな、思うて」
のぶ「君は関西の子? どういてここにおるが?」
子どもに話を聞いて新聞社に戻ってきたのぶは、原稿を書き始める。
しかし、東海林は「話にならん」
孤児は日本中にあふれている、どうやって読者の興味を引く記事を書くのか、という。
翌日も、のぶは闇市にいた。
昨日、芋を盗んだ子ども(=ユキオ)が、野菜売りの男のもとで働いていた。
「盗んだもんを返しにくるらぁて、度胸のあるやつやと思うての。手伝うてもらうことにしたがじゃ」
「たまるかぁ」
記事を書くと今度は、
東海林「長すぎる。朝刊一面、お前の記事で埋めるつもりか」
さらに夜中まで記事を書くのぶ。(鉛筆で文章を書く時代が新鮮だ)

朝、机で寝入っていたのぶの手元から出来上がった記事を取り上げて読む東海林。
「ダメやなぁ。お涙頂戴の記事らぁて、鼻紙にもならん。けんど……温度のある記事や」
これを明日の朝刊に載せるから、一度帰って短く40行にして持ってこい、という。
見ていた岩清水信司(倉悠貴)もよかったね、と声をかける。

夕方、同僚の琴子がのぶを飲みに誘う。
豪快に「カストリ」(粗末な密造酒)を一気飲みした琴子は
「猫かぶっちゅうと疲れるわぁ。こっちがほんとの私やき、琴子って呼んで」
と酒の飲み方をのぶに教える。
女学校を出たあと花嫁修業をしていたが、男たちは兵隊にとられ、相手がいなかった。新聞社に就職したのは結婚相手を探すため、という。
のぶが、夫が亡くなったこと、夫が教えてくれた速記のおかげで就職できたことを話すと琴子は泣き出す。(泣き上戸だ!)
高知新報では夕刊の発行を申請することになった。戦時下では言論統制のため1県につき1紙の縛りがあったが、戦後は進駐軍が“言論の自由”をかかげ、複数の新聞を奨励した、からだ。
編集長は東海林になる予定。編集部員はもちろん、岩清水とのぶ(=猫の手、と呼ばれている)。

東海林は、夕刊の編集局を物置に引っ越すことにする。
片付けが一段落したところで、東海林は語り始める。
「おれは、新聞を信用してない」「え?」
東海林「戦時中は戦争をさんざん美化して推奨して、扇動して。戦争が終わったら、それまでのこと全部なかったみたいな顔して、正反対のことを書く。そんなうそまみれの新聞らぁて誰が信じるがで……おれは自分に愛想がつきちゅう」
のぶ「記者は、どこまでいっても世の中に問い続けるしかないがやないでしょうか」
東海林「おまえは、夕刊に何を書きたい?……猫の手にも早う戦力になってもらう。否定されるがを恐れな、記者の鉄則や」
のぶ「私も、東海林さんとおんなじです。教師をしよった時、学校で間違うたことをたくさん子どもらに教えてきました。それで、戦争が終わったら、全部なかったような顔をして生きちゅうがかもしれません。そんな私が自分の言葉で記事を書いて、人の心に訴えかけるがは、正直、恐ろしいです」

東海林「よし、決めた。俺らぁが拾うは、うそ偽りのない生の声や。戦後の今を生きる人々の、声にならん声や」
岩清水「いいですね、それ」のぶ「精一杯がんばります」
東海林「掃除、終わったら、取材や」
「ある人が教えてくれました。絶望の隣は希望やって」

嵩は、進駐軍から廃品として回収した雑貨を漫画売る店を健太郎(高橋文哉)と開いていた。リヤカーを引いてきた嵩は浮かない顔。結構立派な照明スタンドの蓋(?)などが積まれている。
「これさ、アメリカさんにとってはゴミなんだよ? ……そりゃ、日本も負けるわけだよ」
康太(櫻井健人)も仲間に入っている。
捨てられた雑誌(タイトルは『HOPE』!)を手に取って夢中で読み始める嵩。
街頭に「リンゴの唄」が流れてくる。当時の「のど自慢」のラジオ放送らしい。
同じころ、御免与町の朝田家でもメイコ(原菜乃華)とくらばあ(浅田美代子)がラジオを聞いていた。
進駐軍から大きな板チョコをもらって、早速ほお張る子どもたち。
のぶはインタビューを試みている。
のぶ「この町はどうなってほしい?」
子どもは口々に言う。
「元に戻いてほしい」
「暖かい布団で寝たい」
「お父さんを返して欲しい」

朝まで原稿を書いていたらしいのぶ。
「子どもらぁの声や顔を忘れんうちに書いちょこうと思うて」
ところが、そこに暗い顔の東海林が……

いつか夕刊に載せてもらえたら、とのぶが原稿を渡すと、それに目を落としながら、何か言い出しあぐねている様子の東海林。コーヒーを淹れようと他の部署に行くと……みんなの様子がおかしい。
琴子が寄ってきて、やけ酒なら今夜付き合う、という。
「大風呂敷ひろげちょいてそれはないでねぇ」
不審顔ののぶ。

部屋に戻ると、実は、夕刊の発刊が中止になったと聞かされる。東海林は霧島局長(野村万蔵)から、夕刊は土佐新報だけが出すことに決まった、と言われたのだ。また遊軍記者にもどることになる。

昼休みに屋台で琴子と“やけ雑炊”をすするのぶ。
琴子は「新聞社に入ったのが間違いだった」とくだを巻く。
有体に言うと、新聞社に入っても結婚相手にふさわしい男がいない、ということだ。
「もう、ボタン付けるがも、白湯配るがも、資料整理もあほらしゅうて。のぶちゃん、やけ食いじゃ」

編集部で東海林と岩清水が文字通り「たそがれて」いると、
のぶが元気よく戻ってきて、“取材してきたから原稿を書く”という。
無駄になるかも、と心配する2人に、のぶは
「ある人が教えてくれました。絶望の隣は希望やって。こんなの絶望のうちに入りませんき、元気、出しましょう」
“ある人”とはもちろん、寛(竹野内豊)だ。
「いっぺんでえいき、心が震えるようなことをしてみたいがよ」

健太郎が進駐軍の廃品を売っているところに東海林が現れた。雑誌『HOPE(=希望)』を手に取り5円で買って、持っていた新聞を忘れていく。
雑誌が売れてしまったことに嵩ががっかりしていると、健太郎が、進駐軍からの掘り出し物、万年筆を差し出す。
「雑誌ばっか見とれとらんで、漫画書けばよかろうもん。いつまでもこげな生活ば続けられるわけでもなかっちゃけん。東京下宿おったころ、しょっちゅう書きよったろ?」
誕生日プレゼント、という健太郎にポカンとする嵩。
東海林が置いて行った新聞を出して、今日の日付を見せる。嵩の誕生日なのだった。
「おめでと」「ありがと」
メイコは蘭子(河合優実)に向かって突然、畳に両手をついて「お金貸してくれん? 必ず返すき」
蘭子「いいよ。何買うが?」
メイコ「うち、東京行きたいがよ」
蘭子「東京? なにしに?」
どうしても必要なら貸す、という蘭子に
「ラジオののど自慢に出たいがよ」
くすっと笑って相手にしない蘭子。
そのやりとりを、階段下で心配そうに聞いていたのはくらばあだった。
のど自慢に出たい、というメイコの希望は釜次(吉田鋼太郎)に一喝されるが、
「うちは真剣じゃが!」

一方、夕刊が出ないことになって、今後を心配しているのぶと岩清水だったが、そこへ東海林がやって来て「編集長と呼べ」と言い出した。
夕刊の代わりに、進駐軍から許可がおりて月刊誌を出せることになったのだ。

そこに母・羽多子(江口のりこ)から電話。メイコが家出した、という。
雑誌を出せることで浮き立つ東海林と岩清水だったが、のぶは仕事が手がつかない。
のぶが家に戻ると、そこに家出したはずのメイコが待っていた。
「うち、のど自慢に出たい。じゃき東京に行く」そう思って御免与町を出たが、ちょっと不安になり、のぶの高知のうちに来たという。
家族に話して笑わなかったのはくらばあだけだ、という。
くらばあが東京までの汽車賃を渡していた。
「あの子は昔のあて(私)な」
くらばあには夢があった。
くらばあは京都の撮影所に行くのが夢だった、という。
銀幕の向こう側に行ってみたかった。
「あてができんかった冒険、メイコにして欲しかったがよ」
メイコは今の自分の気持ちをのぶに伝える。

そこに羽多子が訪ねてくる。
「おかあちゃんごめん。けんどもう、御免与にはいなん」
「うち、戦争のせいにするのは嫌や。日本が負けたきってうちまで負けてしまうがはいやや。何かに挑戦して、味噌っかすの自分を変えたい。いっぺんでえいき、心が震えるようなことをしてみたいがよ」
高知で仕事をして自分で東京に行くお金を貯める、というメイコは、
「のぶねえちゃん、うちをここにおいてください」
メイコはのぶのうちで暮らしながら高知で仕事を探すことになった。
「たまるかぁ。嵩、どういてここにおるがで?」

『月刊くじら』が動き出した。
のぶは闇市の子どもたちを、岩清水は闇市の仕入れ関係を取材、そして東海林は広告を出してくれる会社を探し始めた。
次々に指示を出す東海林だが、広告が足りない、という。
のぶも広告とりの営業に参加し始めたが……門前払い。
琴子の夜のお誘いにも応えられない。
一方、メイコの職探しも難航している。夕食を食べながら
のぶ「絶望に追いつかれん速さで走らんと……」
次郎(中島歩)の言葉をつぶやく。

翌日も雨の中、営業に出ていくのぶに、琴子が知り合いの質屋を紹介すると申し出る。
「実は屋台で知りおうた、おんちゃん。会社の皆さまには内緒でお願いしいたします」
というわけで、琴子と2人、質屋に向かうと……そこは前に断られた店だった。
ところが、店主「えいですよ。広告、おたくにお願いします」
あら、あっという間に快諾。
「こんなレディーらぁが、雨の中わざわざ来てくれたがや」
笑顔が出るのぶだった。

うちに帰ると、メイコは食堂の女給の仕事を決めてきた。
ラムネで乾杯しながら嵩(と健太郎)のことをメイコは思い出していた。

高知新報の入社試験。のぶも手伝うことになり、試験会場で解答用紙を配っていると……そこに入ってきたのは……。

のぶの心の声「たまるかぁ。嵩、どういてここにおるがで?」
試験会場に現れた嵩! かつて(第7週でした)寛伯父さんが言っていた言葉「今は平行線に思えても、いつか、二人の道が交わる日がくるかもしれん」が現実に……? そして、予告には戸田恵子さんの姿もありましたね。次週は「いざ東京」のぶの新たな活躍を期待しましょう! ほいたらね。