漫画家 やなせたかしさんとその妻・暢さんをモデルにしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。6月14日、やなせさんの出身地である高知県香美市の主催で、「あんぱん」トークショーが開催されました。俳優の中沢元紀さんらをお迎えして過ごした楽しいひととき。その様子をご紹介します。

(※NHK財団ではこのイベントの企画を担当しました)


難しかった土佐ことば 「兄貴、またせたにゃあ」

ゲストは、「あんぱん」で嵩の弟・千尋を演じた俳優の中沢元紀さんと、ドラマで“土佐ことば”を指導している俳優の西村雄正さん。
会場の高知工科大学の講堂には、約4倍の倍率で当選した、およそ600人のファンでほぼ満席となりました。

香美市制作の「やなせたかしさんの功績を紹介する映像」と、これまでの「あんぱん」の振り返り映像のあと、お待ちかねの中沢元紀さんが登場。会場は大きな拍手と歓声に包まれました。

聞き手はNHK高知放送局の熊井幹アナウンサー。「あんぱん」の大ファンで一日に4回見るという熊井アナ、質問にも気合いが入ります。

オーディションでの様子や、温かな雰囲気で進む共演者やスタッフとの撮影現場の様子などをお聞きした後、土佐ことば指導の西村雄正さんをお招きして3人のトークになりました。

中沢さんは、土佐ことばのイントネーションがとても難しかったこと、西村さんがセリフを吹き込んだ録音を自宅で何度も聞いて練習していたこと、また西村さんが撮影中、つきっきりでフォローしてくれたことなどを明かしました。

西村さんからは「方言の演技は大変難しい。まず方言を覚えて、それに演技、感情をのせなければならない。それを中沢さんは完璧に応えてくれました」と話し、会場からも大きな拍手が送られていました、

そこで熊井アナウンサーから生セリフを“おねだり”。
中沢さんは土佐ことばでひとこと、「兄貴、待たせたにゃあ」
会場は大喜びでした。

続いて中沢さん、「あんぱん」の千尋以外で演技してみたい役はありますか、という質問に、少し考えたあと「ヤムおんちゃん」。千尋とは違った自由な生き方の役柄も、見てみたいですね。


「圧巻の15分」兄との対話 演技の裏に……

また、イベントの直前の週、6月12日に放送された千尋と嵩が久しぶりに再会したシーンでは、当初、セリフはすべて土佐ことばだったものの、千尋が軍人となっていたことを踏まえてあえて標準語を使い、感情を込めるときだけ土佐ことばを使うように変更した、という撮影秘話も紹介してくださいました。

このシーンについて、テストの時は泣いてしまったそうですが、本番では涙は流しませんでした。中沢さんは、「弟としてではなく、軍人としての感情での演技から、涙を流さなかったのではないか」と話していました。(中沢元紀さんのインタビュー記事

最後に西村さんから、この先、役者としても「あんぱん」に登場することが初めて公表されました!
「どんな役柄かお楽しみに」とのこと。中沢さんからも引き続き「あんぱん」をお楽しみくださいとのメッセージをいただきました。

「千尋」の土佐ことばあり、撮影の裏話あり……来場したみなさんにも楽しんでいただけたようです。


お別れに、会場の皆さんとともに「たまるかあ」の掛け声で記念撮影を行いました。(冒頭の写真です)
千尋は戦死してしまったけれど(泣)ドラマの今後に期待がふくらむトークショーでした。

トークショー会場は高知工科大学の講堂でした。

これからドラマは戦後が描かれます。のぶと嵩が“逆転しない正義”をどのように見つけ出していくのか、見守りたいと思います。

(取材・文 展開・広報事業部 冨澤緑)