ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、まひろ役・吉高由里子さん、ききょう役・ファーストサマーウイカさん、藤原ふじわらのあき役・吉田羊さんから!


吉高由里子さんの第16回振り返り

――亡くなったたね(竹澤咲子)は、まひろにとってどんな存在だったのでしょうか?

まひろには、自分よりもはるかに貧しくて、文字の読み書きのできない身分の低いたねを、何とかしてあげたいという気持ちがあって。それは正義感なのか、母性なのか、はっきりとは言えないけれど、いろんな感情を全部たねが教えてくれたのだろうなと思っています。たねが見る見るうちに字を覚えて、書けるようになって、教えることの喜びも感じたはず。

そうやって大切にでてきたたねが、突然の病で命を奪われてしまった。まひろは子どものころに目の前で母親を殺されて、なおひで(毎熊克哉)の死にも直面して、大抵のことでは驚かない人になっていると感じていたのですが、まだまだそんな場面に出会うとは……。やはりつらいですよね。

これからの人生の中でもまひろはたねのことを思い出すだろうし、自分のやるべきこと、身分のことだけじゃない、大きな視野の広がりをくれたのが、たねだったと考えています。まひろが母親になる日が来た時に、大きな影響を与えるんじゃないでしょうか。


ファーストサマーウイカさんの第16回振り返り

――ききょうがさだに仕えることになりました。宮中に入った感想は?

年齢で言うと一回り年下の人にお仕えするわけで、ちょっと想像しにくいんですけど、いわゆる“し(憧れの対象)”と置き換えるとわかりやすいのでは? と思っています。

たとえば年下のアイドルが“推し”の場合、その子の言動に感動して、握手会にもいくし、言っていることは全肯定。「考え方が素晴らしい」とか「一生ついていきます!」みたいな気持ちになるものですよね。まさに、ききょうと定子様の関係はそれ。出会いのシーンからして、尊い! って感動していますし。

そう考えると、 せいしょうごんの“推し”の定子が“推し”ている一条いちじょう天皇も尊い。どうか幸せになってくださいませ。“推し”の兄弟(藤原伊周これちか隆家たかいえ)も美しいですし、ありがたいありがたいと思っています(笑)。

だから、『枕草子』でも“推し”の悪口はぜったい書かないわけです。もし現代のSNSで書いたとしても「うっかりミスをしてしまっていたけど、そこがわいかった」みたいな(笑)。「次はもっと頑張れるよ、私は見ていたよ」っていうまなざし。そんなことが、宮中で繰り広げられているのだと、私は解釈しています。

そこで説得力を持たせてくれるのが、定子様を演じている高畑充希さんや一条天皇役の塩野瑛久さん、定子様の兄・伊周役の三浦翔平さん、弟・隆家役の竜星涼さん。本当に美しい方々なので、リアクションにうそがなくお芝居できるのがありがたい。すごいラクですよ、みやびな人たちに囲まれているときのお芝居は(笑)。


吉田羊さんの第16回振り返り

――詮子と定子の関係が、かなりギクシャクしています。

そうですね。詮子の気持ちを道長(柄本佑)以外に誰も理解してくれないし、周囲の対応がすごく冷たいので、詮子を演じるほどに私は寂しくなるんです。それで一度、脚本家の大石静さんに相談したことがあるんですよ。「(詮子を)やればやるほど、孤独を感じていくんですけど、どうしたらよいでしょうか?」って。

そのとき大石さんがおっしゃったんです。「人間って相手によっていろんな顔があって、必ずしも一つの顔じゃない。相手によって言い方を変えたりトーンが変わったり、言葉選びも変わるのが人間で、それを隠さず相手にぶつけてしまう詮子の素直さこそが彼女の面白さであり、チャーミングなところだと思っている」と。今はその言葉を信じてやっています。

台本には「詮子が登場すると場が冷める」みたいなト書きが結構あって(笑)。でも、定子と一条天皇がワイワイしているところに詮子が現れると、シーンと静まり返るみたいなことって、現代のよめしゅうとめ関係でも当然あり得ること。姑は嫁に小言を言うものだし、嫁は姑を煙たがるものなので(笑)。

遠い1000年以上も前の話だけれども、現在にも通じる普遍的な家族の物語として見ていただけるところかなという気がします。

――定子役の高畑充希さんの印象は?

美しいですねぇ。まっすぐで純粋な方なので心苦しいんですよ、彼女を袖にするのが(笑)。まっすぐな目を向けられれば向けられるほど、私は心が痛いです(笑)。

でも、この気持ちって、きっと詮子も持っていたと思うんですよね。すごくいい子だからこそ息子にふさわしい。でも義母として姑として、しっもあり認めたくないという思いも。それは裏返せば「認めている」ということだと思いますね。