3月18日、東京・渋谷のNHKホールで、現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」のキャストが番組の魅力を語り合うファンミーティングが行われた。これは、NHKの多彩な番組を一堂に体験できる「超体験NHKフェス」のステージイベントのひとつとして開催されたもの。

ステージに登場したのは、「光る君へ」主人公のまひろ(紫式部)を演じる吉高由里子、ふじわらの道長みちなが役の柄本佑、ふじわらの公任きんとう役の町田啓太、ききょう(清少納言)役のファーストサマーウイカで、ドラマで語りを担当している伊東敏恵アナウンサーが司会を務めた。

この日は、「光る君へ」の第11回「まどう心」が放送された翌日。会場に集まったのは、応募倍率約8倍の抽選をくぐり抜けた2438人のファンだ。開演前には、NHKホールのロビーに展示された出演者の全身パネルや着用衣装と写真を撮ったり、第4回「五節の舞」のロケ収録の様子をVR映像で体験したりする姿も見られた。

またステージ後方の大型モニターでは、これまでの物語の見どころをまとめた映像を紹介。ファンミーティングに向けて、イベントを楽しむムードが高まっていく。

今回のステージ装飾は、去年の「第74回NHK紅白歌合戦」の美術セットを一部リユースしたもので、伊東アナの招きに応じて、吉高、柄本、町田、ウイカが、紅白歌合戦の出場歌手のようにステージ後方の階段から登場。いよいよイベントが始まった。

最初は、テーマごとに出演者がそれぞれの思いを語るトーク。「自分が演じる役をどんな人物だと考えているか」という問いに対して、まず吉高が、自分が考える紫式部の人物像を言葉にしていった。

そこで「平安時代、生きるのが大変な女性だったのかも……」と語っているときに、客席から赤ちゃんの声が聞こえて、それが猫の鳴き声に聞こえたことから、ウイカとともに思わず「小麻呂?」(源ともの飼い猫)と反応。ここから一気にトークの雰囲気が和らぎ、自由気ままなトークが始まる。

吉高は「小麻呂を追いかけちゃうと、嫌な話を聞いちゃうから。2人の……」と、第7回「おかしきことこそ」で()きゅう後に公任たちから“品定め”されたシーンを持ち出し、柄本と町田に「いいかげんにしてよね、あんたたち」と笑顔でツッコミを。

焦る柄本は「俺(道長)は、あんまり言ってないよ!?」と反論。すると吉高が(公任を演じる町田の方を見て)「まっちぃ(町田)が、いちばんヤなことを言ってた」と主張して、町田が「いやいやいや……」と弁解モードになるなど、会場は爆笑に包まれることになった。

吉高に続き役柄について聞かれた柄本は「何を言おうか考えていたのに、今の(やり取り)で頭から飛んでる」と笑いつつも、「道長は平安時代の大権力者でヒール(悪役)という一般的な印象もあるけれど、それと真逆な人間性、三男坊ということで一歩二歩引いて兄たちを見ているような、根っこにはのんびりした人間性があることを意識して演じています。文献に残っている道長像よりも、大石静さんが書いた『三郎くん』と向き合えばいいのかなと思って」と、役と向き合う気持ちを語っていく。

彼の中にしっかり道長が根付いていることが伝わってくるよどみない説明に、吉高らも「絶対、覚えてたよね(笑)」と応じていた。

続いて「平安時代の衣装の着こなしの苦労」を聞かれ、吉高は「動きの中で(着物の)そでを押さえる仕草を意識しているから、プライベートでもついやってしまいます。トレーナーを着ているときに(袖を押さえてしまって)『ないじゃん!』って」というエピソードを披露。その発言に、柄本も「あるあるだよね」と同意していた。

一方、ウイカは「やはり十二ひとえ。まひろさんはお貧しいから、まだ十二単を着ていませんけど……」と、前日放送された「まどう心」の内容(まひろの父・ふじわらの為時ためときが職を失い、困窮した生活を強いられることになる)に触れつつ、「宮中の女房になると十二単が20キロ近くあって、それを着て板の間に座るのは大変ですね。自分の体重プラス20キロが足の甲にかかるんですよ。それが痛くて」と収録中の苦労を告白。

さらに現代は「靴」が履けることのありがたさを語り、「まひろさんは靴、草履ぞうりもお貧しいものを履いていらっしゃるから」と言葉を重ねて、吉高から「やかましいわ」と突っ込まれる一幕もあった。

「平安時代の貴族を演じるとき、稽古で大変だったことは?」というテーマになると、吉高は「いいんですか? 私、貴族と名乗って……。(ふじわらの兼家かねいえに)『虫けらが迷い込んできた』と言われているし(笑)」と一転して自虐モードに。

その発言に客席が盛り上がる中、(左利きの吉高は)右手で書を書くことの苦労について切々と語った。ちなみに会場には「光る君へ」の演出家たちもいたため、吉高は「今も書のシーンは手が震えてしまう。書く場面は、なるべく減らしてください」と笑顔で要望していた。

書の文字については町田も、公任や道長、ふじわらの斉信ただのぶふじわらの行成ゆきなりに、それぞれの特徴があることを解説。それを説明する中で「藤原の4人組、F4として広まっていますが……」と紹介すると、すかさずウイカから「デビューはいつですか?」という質問が。これに対して町田は「……ことしの後半には?」と切り返し、会場から喝采を受けていた。

そして、お互いの印象を語り合うクロストークのコーナーでは、収録現場の雰囲気や4人の仲の良さがさらに伝わってくる内容に。

吉高とウイカが初めて現場で一緒になったときの様子を、ウイカが吉高の口調をまねしながら再現すると「全然似てないから!」と反論したり、NHKの食堂でサイドメニューのスイカがついていないと大きな声で話しているウイカに「あ、ウチの子だわ」と気づいてスイカを譲った思い出を語ったり、ここだけでしか聞けない話題が続々と登場した。

また、柄本が使っているバッグにたくさんのキーホルダーが付けられていることに対して3人でツッコミを入れたほか、町田がウイカとは同い年なのに彼女の熱量に押されてしまってなぜか敬語を使ってしまうという話も。ふだんの4人の関係性が伝わってくる、自由闊達なトークが繰り広げられた。

観客から寄せられた質問に答えるパートでは、長い収録が続く中でのリフレッシュ法を問われ、柄本がボクシングをすることで心身を整えていると回答。その柄本に誘われて町田もボクシングを始めたと聞いて、ウイカは「道長と公任がボクシング!?」とびっくり。さらに「すると、打きゅう後のシーン(雨に濡れた狩衣かりぎぬを脱いでいる場面)より、今はもっと凄いんですか?」と重ねて、会場の笑いを誘った。

予定時間をオーバーしつつ、ファンミーティングはフィナーレ。ここで吉高は、会場を訪れたファンの人たちの顔を見たいからと、客席の照明を明るくしてほしいとスタッフに要望。ホールの3階席まで埋まった客席を見て、4人は感慨ひとしおの様子だった。

そして、改めて出演者からのメッセージが。
吉高「いま第25回くらいまで撮ったのかな? まだまだいろんなことが(物語の中で)起きると思うんですけど、みなさんが見てくださっているということが、すごく撮影の励みになっております。ですので、引き続き私たちの作品を『推し』ていただき、最後まで見守っていただければと思います。SNSには、いいことだけ書いてもらって(笑)」

柄本「きょうの時間の私たちのキャラクターは一切忘れていただいて、『道長って本当に道長だったよ。まひろは本当にまひろだった』と書いていただくように(笑)、来週からの放送もよろしくお願いします」

町田「ふだんは限られた空間の中で撮影をしてるので、こういう機会を設けてもらい、たくさんの方に見ていただいている実感がわきました。これからも魅力的な人物が登場しますので、お楽しみに」

ウイカ「私は放送後からSNSでイラストや考察もたくさん見ていて、最近はしんどい展開も続いていますが……。みなさん大丈夫です。もうすぐ(ききょうが仕えることになる)定子さまが登場します! 本当に凄いですから。本当に細かいところまでこだわって作られている作品ですので、何回も何回も見ていただければと思います」

最後は、観客席も一緒になっての記念撮影。出演者たちは、ドラマのスタッフが手作りした役名のボードを持ちながら、ファンミーティングの充実感に満ちあふれた会場を背景に、とびきりの笑顔を見せた。

なお今回のイベントの模様は、4月7日(日)午後5時30分から、総合テレビで全国放送の予定(NHKプラスでの同時・見逃し配信あり)。