ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、まひろ役・吉高由里子さんとざん天皇役・本郷奏多さんから!


吉高由里子さんの第10回振り返り

――道長と漢文や歌をみ合いましたが、どう感じられましたか?

きっと、この時代の交換日記みたいなことなんですよね。しかも、自分の気持ちを歌の中にすべて描くのではなく、ちょっと隠したり、相手に想像させる余白を持たせたり……。子どものうちから大人なことをやっているなあ(笑)、と思います。

人に読まれることのない2人だけの文字交換って、接吻せっぷんより色っぽいなって思いますね。絶対に見せられない心の中を見せ合っているわけですから。だからね、文字を書くことはいいものなんだぞ、と伝わったらいいなと思います。

──道長から「一緒に京都を出よう」と誘われました。

どうせ、まひろは道長しか愛せないじゃないですか。「2人で遠くの国に行っちゃいなよ!」と思いましたね(笑)。でも、まひろは我慢してしまう性格で、自分にはない可能性が道長にはたくさんあるということがわかっているからこそ踏み込めなかったんですよね。

「この国を変えてほしい」という願いを託したのも、「女性の自分には無理だ」と諦めていたからかもしれません。
このころは、限られた範囲の中で自分ができることを探すのが普通で、そこからはみ出すような大きな夢を持つのがすごく難しい時代だったんだなと思います。

今の感覚だったら、「“玉の輿”しちゃえばいいのに!」とか思っちゃいますけど(笑)。まひろには、当時の女性として生きる強い意志を感じましたね。


本郷奏多さんの第10回振り返り

──べのはるあきらの出家提案や、藤原みちかねの口車に乗せられた花山天皇。どのような気持ちだったのでしょう。

よしが亡くなって以降、他にすがるものがなかったのが大きいかなと思います。心から信頼できて、ちゃんと支えてくれる人も周りにいませんでしたし。たとえ重臣たちに止められても、「どうせ俺を心配しているんじゃなくて、権力を手放したくないだけでしょ」みたいな(笑)。

だから晴明から“出家”を勧められて、「それしかないかも……」と思ってしまったのだと思います。

道兼に対しては、父親から愛されていないという点で共感する部分があったのだと思います。最初はバカにしてやろうと思って呼びつけたんですけど、だんだん「お前、もしかしてかわいそうなのか? 俺と一緒なのか?」と少しずつ心を開いていって、最終的には信頼をおくようになって、一緒に出家する予定だったのに。

そんな道兼に裏切られたのは、かなり絶望的だったと思います。やはり周りを冷静に見られるほど、花山天皇の精神は成長し切れていなかったんですよね。一瞬にして、戻る場所も頼る人も全部を失ったことになるので、本当につらかったと思います。

──第10回で印象的なシーンを教えてください。

出家する前、「よいのこと、(重臣の)よしちからに言うておいた方がよいであろうか?」と、道兼に相談するシーンがありました。道兼が「おやめになった方がよろしいと存じまする」と答えるんですが、花山天皇はそれに対して「そうかな……」と返すんです。

この時代に「そうかな……」って言い方、違和感があって。「そうであろうか」「なにゆえじゃ」「なぜじゃ」とか、いくらでも言い回しはあるのに「そうかな……」と台本に書いてあったので(笑)。収録では台本通り「そうかな……」と言いました。

でも、ちょっとかわいいじゃないですか? この簡単なひと言に、花山天皇の子どもっぽさみたいなものが表現されているのかなとも考えられます。大石静さんの脚本の、こういう細かいエッセンスをこれからも大切に演じたいと思っています。