「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーをステラnetでも。今回は柴田祐規子アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』8月号で。

「日曜美術館」のロケで京都にちょくちょく行きます。京都を取材した番組をたくさん制作してきたディレクターから「京都人の朝食は基本的にはパンなんです」という話が出ました。そうなの?! ネットで検索すると、パンの消費量は全国でも1、2を争うとか、パン屋さんが多いとか、いろいろな情報が出てきました。

パンといえば、最近読んだ本にも登場しました。『じゃむパンの日』は作家の高橋源一郎さんがラジオで紹介しているのを聞いて猛烈に読みたくなり、ネット注文でようやく入手。作者のあかぞめあきさんは2010年に芥川賞受賞後、若くしてお亡くなりになっています。唯一のエッセー集となったこの本は、実にキュートで胸にみる短編小説のようでした。

『しろがねの葉』で今年1月直木賞を受賞したはやあかねさんの『わるい食べもの』にもパンが登場します。このエッセーは、お茶を入れて何かおいしいものをつまみながら読みたい1冊。千早さんの食への頑固なこだわりを聞いていたつもりが、いつの間にか遠い日の記憶や人の温かさに浸っている、そんな絶妙な味わいが魅力的です。

読み終えて気付きました。赤染さんは京都出身。千早さんは学生時代から長く京都に暮らしていたよう。だから2人のエッセーにはパンが登場? なんてことはないでしょうけれど、パンと京都、本の世界でもつながっていました。

京都駅は中央口にも八条口にもパン屋さんがあって、どちらの店もにぎわっています。

ロケバスのドライバーが「ウチの近所に工場があるせいか、ボクは○○が好きです」とひいきのパン屋さんを教えてくれました。ちょっと癖になる味なんだそう。そう聞いたからには行かなくちゃ。店に入ると、ひしめきあいキラキラと輝いているパンたちが目に飛び込んできます。カスタードクリームパン、あんパン、ピーナツクリームパン、ハムサンド、カツサンド、卵サンド……買い込んで、袋はずっしり。新幹線に飛び乗りました。

(しばた・ゆきこ 第4土曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年6月号に掲載されたものです。

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