満開のサクラソウを前に。東京・小平の自宅にて。

毎日「ラジオ深夜便」のエンディングで放送され、根強いファンを持つ「誕生日の花と花ことば」。その監修者で、本誌に「ひと花いち話」を連載している鳥居恒夫さんが「誕生日の花」の成り立ちと、植物への思いを語ります。

この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年7月号(6/18発売)より抜粋して紹介しています。


すんなり決まった366の花

「誕生日の花と花ことば」の選定は園芸研究家のやなぎ宗民むねたみ*1さんと二人で行いました。366種の植物を選ぶところから始めたのですが、まずはそれぞれでこれと思う植物を出し合ってみたら、偶然にも同じものが多くて。意識したのは、季節はもちろん、お正月や節分などの行事や、日本の文化に合うものを選ぶこと。身近な植物のほうが親しみが湧きますから。

花ことばは放送を聞いた人が元気になるような、ポジティブなものを選びました。大変だったのは、新たに描いてもらった366枚のイラストすべてのチェックです。花びらや葉の付き方など細かいところまで神経を使う作業で、かなりの時間がかかりました。

*1 1927〜2006年。民藝運動の創始者・柳宗悦むねよしの三男。


植物に関わる仕事は天職

私は幼いころから植物が好きでした。小学1年生で終戦を迎えましたが、当時は庭も小学校の校庭も植えられていたのは芋ばかり。花なんか育てていたら非国民という時代です。それでも植物好きな両親や祖母の影響か、植物採集をしたり、お小遣いで種を買ってくるような子どもでした。父が持っていた分厚い植物図鑑を寝床に入ってよく眺めていたものです。

大学を卒業後、神代植物公園や夢の島熱帯植物館に勤めました。常に植物に接していられる仕事は天職だったと思います。

園芸家と称される人はたくさんおられますが、バラはバラだけ、ランならランだけと専門性が高い方が多い。私は野生のものも園芸植物もどちらも好きなんです。このことが仕事をするうえでは幸いしました。植物園にはいろんな植物があって、いろんなお客さんがやって来る。だからあらゆる植物について知っていなければならないわけです。あまり興味のなかった植物でも、知っていくうちにだんだんと好きになってくる。人間と同じですね。

【プロフィール】
とりい・つねお

1938(昭和13)年、愛知県生まれ。大学卒業後、東京都職員として東京都立神代植物公園、夢の島熱帯植物館などに勤務。退職後は植物・園芸研究家として普及活動に従事。特にサクラソウには造詣ぞうけいが深く、著書も多数。「さくらそう会」の世話人代表を務めている。

今では6000枚ほどになったという植物スケッチを始めたきっかけや、「植物と人の“通訳”になりたい」と語る鳥居さんのお話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』7月号をご覧ください。

購入・定期購読はこちら
創刊300号!7月号のおすすめ記事👇
▼特別寄稿 宇田川清江(元〈ラジオ深夜便〉アンカー)
▼「誕生日の花」制作秘話 鳥居恒夫(植物・園芸研究家)
▼神津はづきが語る 母・中村メイコ
▼放送100年! 歴史を秘めた“ラジオ塔”ほか