この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年7月号(6/18発売)に掲載の、元「ラジオ深夜便」アンカー宇田川清江さんの特別寄稿より抜粋して紹介しています。


「ラジオ深夜便」は、放送が好評を頂き、「つどい」で聴いてくださる方々と会う機会を得た。更に幸せなことに、同じ名の雑誌まで登場、まさに放送・イベント・雑誌が三位一体となった番組である。

1996(平成8)年5月創刊、雑誌『ラジオ深夜便』の初代編集長・高橋忠行氏とは、いろいろと話し合った思い出がある。彼が主張したのは、当時の放送の「ゆったり感」を雑誌にも出したいという事だった。そこで話し合いの末に出た答えが、行間をたっぷり取るという事だ。なるほど専門家は、すばらしい発想を抱くものか! と私は感服した。

たしかにパッと本を開いた時に、びっしりと字が詰まっていたら、それだけでウンザリする人も居るに違いない。「行間を取る」事でゆったりと静かに放送を聞く時と同じ感覚に浸れるのだ。餅は餅屋だなあと、つくづく思った。

更に彼が主張したのは、本の「大きさ」だった。待ち合わせで人を待っている時、電車やバスの中で一人で居る時、たまたま並んだ行列で手持ち無沙汰の時、などなど、ひょいと手にする事が出来る「大きさ」。大きすぎず、小さすぎず、軽すぎず、重すぎず、「へえ!」「なるほど」「あら、そうなの」などの言葉が、自然と口から漏れたら、成功。

持って出る事を忘れたら、電車やバスの中で、「しまった」と残念に思うくらいの価値ある雑誌。その「程の良さ」が、雑誌『ラジオ深夜便』の魅力なのかなと、私は考えている。放送に、雑誌に、はまってくださる方が多いとは、うれしい事実である。

人が何かに嵌ると、その世界にまた浸っていたい! と思う。あの人の「ラジオ深夜便」をまた聴きたい。聴きながら眠りたい、と思ってくださったら嬉しい。

【プロフィール】
うだがわ・きよえ

1935(昭和10)年、東京生まれ。’64年にNHKを退職後、フリーアナウンサーとして活動。「ラジオ深夜便」の番組誕生とともにアンカーの一人となり、2010(平成22)年3月まで20年にわたって担当した。放送100年にあたる今年3月には、15年ぶりに「ラジオ深夜便」にアンカーとして出演。変わらぬ声を届けた。

過去に誌面で紹介した宇田川さんのハマりごと「三味線」についての振り返りなど、特別寄稿の続きは、月刊誌『ラジオ深夜便』7月号をご覧ください。

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