「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」(以下、「カネオくん」)は、今の時代、とてもよく構成が考えられた番組だと思う。

番組のテーマの中心になるのは「お金」。お金は、確かに大切な存在。それなのに、真正面から取り上げられることは案外少ない。

社会のどんなことにも、お金は絡んでくる。話題になる文化や、ヒット商品、社会事象などもすべてお金がないと回らないし、なりたたない。そんな中で、子どもたちもまた、お金については敏感にならざるをえない。

大人たちは学校などの教育の中でお金の話をしたがらないけれども、子どもたちのほうが、自分の人生のさまざまな部分でお金が関わってくることを知っていて、率直に受け止めている。そもそも、子どもたちが受ける教育自体が、お金に左右されかねないきょうこのごろである。

「カネオくん」は、そんな時代に、さまざまな社会のストーリーの中に潜んでいるお金の秘密を解き明かしてくれる。お金を通して現代社会を理解し、また人間についての理解を深める番組なのだ。しかも、ゴールデンのバラエティーのど真ん中で。

9月25日放送の「みんな大好き!アイスのお金の秘密」でも、アイスクリームという慣れ親しんだ商品の背後にある「お金の秘密」に迫っていた。

楽しいスタジオトークを背後から支えるのは、本質に迫る綿密なリサーチ。たとえば、ロングセラーのモナカアイスのパリパリ感を出すためには、つくりだめはせず、製造から5日を目安に出荷するというのは、目からウロコであった。

職人技と言ってよいVTRも光る。やはりロングセラーのあずきアイスの製造過程で、あずきが跳ねたり、選別のために空中を飛んだりする映像には、一粒一粒が輝くような「シズル感」があった。

誰もが知っている「ガリガリ食感」のアイス。2000年代に入って、この商品をはじめとするアイスの売れ行きが伸びた背景に、「エアカーテン」技術で冷蔵庫のふたが無くなるイノベーションがあったというのは興味深い視点だった。

今の時代、子どもたちにも届くように大人たちが真剣につくっている番組は貴重である。「カネオくん」は、いわば極上の「社会科見学」。気になっているあのこと、このことの裏側で、お金がどう回っているのか、子どもたちは興味津々だろう。

そんな「子ども目線」を代表しているのが、「日直アシスタント」の田牧そらさん。MCの有吉弘行さんがいろいろと番組の趣旨やメッセージについてボケて、千鳥のノブさんが「ツッコミ」をするのもたいへんテンポがいい。

そのノブさんが「中の人」をつとめるカネオくんのアニメは表情豊か。チコちゃんと並んでNHKのバラエティー・キャラクターの「2トップ」と思われるカネオくんが、これからもどんな「お金」の「秘密」を見せてくれるのか、楽しみだ。

(NHKウイークリーステラ 2021年10月29日号より)

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。