「青のオーケストラ」 
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/


アニメ「青のオーケストラ」で、秋音律子の声を担当する声優の加隈亜衣と、小桜ハルを担当する佐藤未奈子。2人による対談の後編では、律子とハルがお互いの胸の内をすべて明かして、新たな関係性を築きあげることになった第8話「G線上のアリア」の、アフレコ収録の舞台裏などを紹介する。


緊張の初共演、お互いの印象は?

――加隈さんと佐藤さんは、この作品が初めての共演ですよね。それぞれ相手にどんな印象を持ったのか、聞かせてもらえますか?

佐藤 加隈さんは本当に優しくて、頼りがいのある先輩ですね。私は、青野くん役の千葉翔也さんとは別の作品で共演したことがあったんですけど、それ以外は全て「初めまして」の方々だったんでよ。特に加隈さんは、それこそ私が声優を目指す前から存じあげていたので、本当に「りっちゃん(を演じるのは)、加隈亜衣さんだ!」って、なって……。初めてのアフレコの日はものすごく緊張していて、恐る恐るアフレコブースに入って、隣に座らせていただいて……。

加隈 うん、緊張感が見えてた(笑)。

佐藤 でも、加隈さんから話しかけてもらって、すぐに「連絡先も交換しよう」と言ってもらえたので、めちゃくちゃうれしかったです。

加隈 想像していたよりもたくさん言葉を返してくれたし、一生懸命喋ろうとしてくれている感じがすごく伝わったので。たまに、緊張しすぎてお互いに「あっ…」で終わってしまうこともあるから。
収録前、私は「喋ってくれる子だといいな」と思っていたから、そんな未奈子ちゃんでよかったな、と思う部分がすごくいっぱいありましたね。

佐藤 うわぁ、うれしい。

加隈 第3話でハルが初めて登場する、律子とハルが喫茶店で会話するシーンは特にそうなんだけれど、ハルのセリフは当初の想定よりもゆったりしたほうがハルらしさが伝わると判断されたみたいで、ボールド(声優がセリフを喋るタイミングを示すマーク)を取っ払って「ここは自分たちの間でお願いします」とディレクションをいただくこともあるから。キャラクター性を大切にしてもらえるありがたさを感じつつも、その分、きっとプレッシャーも大きいよね。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

佐藤 はい。いきなりプレスコ(セリフを先行して収録する手法)に変更されることもあって、びっくりしてしまいます。あのシーンも、最初はいつも通り映像に合わせて収録しましたよね。何回か録った後に、監督から「映像に合わせなくいいから、お芝居の流れに合わせて掛け合いをしてください」というオーダーをいただいて、映像が全部消えしまって……。私、プレスコはやったことがなかったので、「マジか!!」って思いました。

加隈 うふふ(笑)。

佐藤 でも、加隈さんがうまくリードしてくださって、りっちゃんのセリフを聞いて、それを受けて演じられたから、お芝居としては逆にやりやすかったです。そしてアフレコが進むにつれて、たくさんお話ができるようになりました。一緒に「青オケ」のイベントにも参加できて……。

――佐藤さんにとっては、記念すべき初イベントが「超体験NHKフェス」の「青のオーケストラ トークショー&コンサート」だったんですよね?

佐藤 そうなんです。そのとき「初イベントの記念に」って、イヤリングをプレゼントしていただいたんです。私が「せっかくだから、お揃いのものを身に着けませんか?」って提案したら、一緒に買いに行ってくださって。

加隈 キャラクターのモチーフの色(秋音律子は赤、小桜ハルはピンク)を教えてもらっていたので、「どれが似合うかな?」「これ、桜の形だよ。『小桜』だから、桜がいいかも」なんて言いながら選んでいましたね。

佐藤 しかも、赤とピンクがあって。

加隈 そうそうそう。お揃いでね。ちょうどよかった。

☆「超体験NHKフェス」の舞台裏で。(写真提供:佐藤未奈子)

――すてきな先輩ですね。佐藤さんはハルを演じるときに、加隈さんも含めて先輩たちにアドバイスしてもらうこともありますか?

佐藤 ハルちゃんのセリフっていうよりは、全般的にお芝居のことについて結構お聞きしていますね。例えば第6話の、下校途中にみんなでチキンカツを買って食べる場面で、ハルちゃんにはなかったけれど、食べながら喋るセリフがあったんですよ。そのときに「食べながら会話をするって、どうやってるんですか?」って、加隈さんと千葉さんに質問したりしてました。

あと、このアニメって、リアクションだけで気持ちを伝えるとか、吐息だけで驚くとか、そういう表現も多いですよね。普段の生活の中では、びっくりしたときの吐息って、あまり音にならないんですけど、アニメだとそれを出さなくちゃいけなくて。それを土屋神葉さんがやっていらっしゃるのを見て、その自然な感じがすごくお上手で、「あ、盗もう」って思いました。

加隈 うんうん。私も現場を踏むごとに「あ、こういうやり方もあるんだ」っていうのを少しずつ吸収していって、先輩たちに比べたらまだ全然だけど、「こうしてください」って言われたときに応えられるものが自分の中に増えてきた感じかな。でも、アフレコの現場ごとに悩みながら、反省しながらですよ。

佐藤 加隈さんくらいキャリアがあっても、反省があるんですね……。

加隈 もう、どんどん増えて。キャリアがそんなに長いわけじゃないけれど、むしろ新人のときのほうが迷いが少なかったかもしれない。今はいろいろ考えることができるようになって、それだけ自分の選択肢も増えているから、「こっちがいいのかな?」「あ、考えすぎちゃった?」みたいになって。もっと純粋な気持ちでやればよかった、って思うときもあれば、考えが全然足りなかったなぁ、と思うときもあって、頭がぐちゃぐちゃになりながら臨んでいたりもしますね。


涙が止まらなかった、夜の公園での会話

――ところで第7話では、酷い仕打ちをしてハルを転校に追い込んだ篠崎の声を聞いて、ハルが立ちすくんでしまう場面がありました。その篠崎は鈴代紗弓さんが声を担当されていますね。

佐藤 鈴代さんの篠崎の声は、普段演じていらっしゃるキャラクターの声とは全く違っていて、でも「青オケ」ではめちゃくちゃ篠崎だし、私はもう篠崎の声を聞くだけで胸が苦しくなってしまうので……。それこそ、ハルの登場シーンがない第1話や第2話のオンエアを見ていて、篠崎が後ろで一言喋っているだけでも「うわっ」と動揺してしまって。ハルちゃんにとってはあの声がトラウマになっていると思うので、私自身もハルちゃんとして聞いちゃいますね。

加隈 でも、その鈴代ちゃんが、実は小学生のころの青野も演じているんだよね。第8話で未奈子ちゃんは、青野の鈴代ちゃんと篠崎の鈴代ちゃん、両方と共演したわけだけれど、どんな感じだった?

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

佐藤 演じているときは全く別物として聞いていたので、やりにくさとかはなかったですね。ただ単に「鈴代さん、すごいな!!!」って。篠崎の声はすごく苦手だけど、子ども時代の青野くんは全然。ひたすら「かっこいいなぁ……♡」って思いながら、収録していました(笑)。

――この記事が公開されるころに、第8話の、律子とハルが夜の公園で、それぞれの気持ちを全部ぶつけ合って絆を深めていくシーンが放送されます。このシーンを録る前に、お2人で相談されるようなことはありましたか?

佐藤 特に「こうしましょうね」という相談はしていませんでしたが、ずっと「あのシーン、もうすぐ来ますね」みたいな会話はありましたよね。

加隈 そう、毎回カウントダウンして、みたいな(笑)。「遂に来週だね」って。

佐藤 そんな話はしていたけれど、あの公園のシーンは、りっちゃんとの掛け合いが本当に大事だったので、「これ、家で練習したら、本番のテンションが下がってしまうかも」と思って、あえて練習せずに、加隈さんのセリフをしっかり聞いて、それを全部受け止めることでハルちゃんの素直な感情を表現しよう、という思いで臨みました。

加隈 あ……、ごめん。私、練習していっちゃった。

佐藤 えええええ(爆笑)。

加隈 いや、ほら、律子の中でも、いちばん繊細なシーンだったから、あそこは! モノローグとセリフが交錯していたり、過去に戻ったりもしていたので。ハルでいうと、その前の第7話でたくさん話していたところがあったけれど、ここでは律子がちゃんと言わないと、ハルの心には響かないだろうなと思っていたから、気負いすぎなくらいにドキドキしてたんですよ。
アフレコのとき、涙を流しながらセリフをいうシーンって自分も泣いちゃうと鼻声になっちゃうし、その後のセリフまで鼻声にならないようにどこかで冷静になって臨まないといけないことが多くて。私の場合、テストでは涙が出ても本番はより冷静に臨んで涙が出ないことが多いんだけど、このシーンは練習もテストも本番も全部涙が出てしまって。もう体当たりで、気がついたら……、という感じですね。ね、あのシーン、やっぱりいいよね。

佐藤 いやぁ、よかったです。もう泣けてしまって。それが泣こうと思って泣くんじゃなくて、もう自然と「うわぁぁぁ」となって、涙が溢れるところが、めちゃくちゃあって。りっちゃんの別録りのセリフで、「ハルの一言が、どれだけ私を救ってくれたか......」みたいな言葉があって、それを録っているときに私はうしろで聞いていて、声を出さないようにしながらも「ぅぅぅぅぅ」って、涙が止まらなくて……。

加隈 涙腺が崩壊していたよね(笑)。音響スタッフさんたちも「じゃ、このシーンは、もう時間を気にせずやってください」と言ってくださって。それこそ、スタッフさんもみんな、あの夜の公園にいたような感じがありました。

佐藤 確かに。

©阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

加隈 ただ、自分たちの思いが強ければ強いほどいいかというと、それもまた違って。難しいところだよね。自分の思いを全部乗せてしまうと、自己満足で終わってしまうときもあるくらい、繊細じゃないですか、想いの込もった場面って。

佐藤 そうなんですよね。

加隈 ここは感動のシーンですよ!ってことではなく、たくさん悩んだハルと律子のお互いを想い合う気持ちや、届けあった先に生まれた気持ち、一つ一つのやり取りの気持ちの流れが見てくださった方の心に届いていたらうれしいですね。

佐藤 りっちゃんとハルちゃんはそれまでも仲が良かったけれど、どこかに遠慮みたいなものがあって、でもこのシーンが終わってからは、それがなくなって本当に親友になれた感じがしたので、これからの2人の関係性がとても楽しみですね。

完成した第8話をまだ見ていないから、このシーンにどんな感じで音楽が乗ってくるのか、そしてアニメーターさんたちも絵で、りっちゃんとハルちゃんの表情から思いを表現してくださっていると思うので、そこに私たちの声のお芝居が重なって、全部が合わさったときにどんなシーンになっているのかも、すごく楽しみにしています。

――いろんな人たちの力が集まって一つの作品ができ上がるという意味では、アニメ作りは、さまざまな楽器のアンサンブルで音楽を作り上げるオーケストラと似ているかもしれませんね。

佐藤 原作の中に「オーケストラの演奏というのは、曲に想いを込めた作曲者がいて、それを『音』にして伝える演奏家がいて、受け取る聴衆がいる。だから演奏家は『仲介人』なんだ」という描写があって、それは私たち声優の仕事にも当てはまるな、と思いました。すてきな原作があって、セリフを書いてくれた脚本家がいて、それを私たちがキャラクターとして読んで、想いがアニメを見ている人に伝わっていく……。やっぱり、すごく似ていると思います。

加隈 私は、このアニメは「こういう意図を持っている作品なんだ」と考えながら見るタイプの作品ではないのかもしれない、と思っているんです。オーケストラが演奏する曲を含めて、音楽って「この曲を聴いたら、こんなことを感じ取らなきゃいけない」と決まっているものではないと思っていて。演奏家のみなさんは、作曲の経緯やバックボーンを勉強されて、作者がこういう想いを曲に織り込んだのではないかと考えて、同じ方向を見ている人たちがそれぞれの想いを込めて一緒に演奏をする。でも、それを聴いた方たちが何を感じるのかは、どこに焦点をあてて聴くかで受けとり方が違ってきますよね。「青オケ」で言えば、青野視点なのか、律子視点なのか、あるいは先輩世代、親世代でも見え方は違ってくる、というのが、作品のおもしろさ。きっと、それぞれ感想が違っていて、いろんな感想がたくさん出たほうがいい作品なんだろうなって思っています。そうなるように丁寧に作られている作品だと感じているので、自分も、嘘偽りなく収録に臨んでいきたいなと思っています。


【おまけ】
加隈 というわけで、未奈子ちゃんにとって、記念すべき初取材!(拍手)。 おつかれさまでしたー。

佐藤 ありがとうございます! めっちゃ緊張しましたぁ……。

加隈 すごいよ、こんなにしっかり喋れたら。よかった、よかった。

佐藤 いやいや、変なところがあったら、全部カットでお願いします!(笑)

→インタビューの前編は、こちらへ。


加隈亜衣(かくま・あい)
9月9日生まれ、福岡県出身。2011年に声優としての活動を開始し、2013年の「selector infected WIXOSS」主人公・小湊るう子役などで人気を集める。近年の代表作は「無職転生〜異世界行ったら本気だす〜」エリス役、「ちみも」鬼神はづき役、「ひろがるスカイ!プリキュア」虹ヶ丘ましろ/キュアプリズム役ほか。NHKでは、「アニ×パラ〜あなたのヒーローは誰ですか〜 パラカヌー編」鶴見希衣役など。


佐藤未奈子(さとう・みなこ)
10月22日生まれ、埼玉県出身。声優養成所を卒業した後に、ナレーターとして
の活動を開始。2020 年に放送された「地縛少年花子くん」の赤根葵役で、アニメ声優としてのデビューを果たした。そのほかの出演は、2021年の「ゆるキャン△SEASON2」巫女役ほか。

 取材・文/銅本一谷