8月27日に行われた特別企画「青のオーケストラ ざんまいナイト」のひとつとして、NHK-FMで生放送された「粗品のクラシックためにならない話~青のオーケストラ・コラボSP」。

この番組が、9月23日(土曜・祝日)にラジオ第1でアンコール放送されることに! オンエアを前に、テレビでのアニメ放送、ネットでのライブ配信、ラジオ生放送が連動することになった、スペシャル感満載の「青のオーケストラ ざんまいナイト」の舞台裏をリポートしていきます。


アニメ制作の裏話、原作執筆時のエピソードも

アニメ「青のオーケストラ」の放送休止期間が明けた8月27日に、生配信&生放送された「青オケ ざんまいナイト」。いやぁ、いま考えても、青オケ・ファンにとっては、めちゃくちゃ熱い一日でしたね!
NHK NABE 公式サイトとNABE 公式 YouTube で配信が始まった午後4時40分から、NHK-FM での「粗品のクラため」放送が終わる午後9時(正確には8時59分 55秒)まで、およそ4時間20分。「青オケ」の声優陣&ゲストと一緒に、たっぷりと青オケの世界に浸れる、濃密な時間でございました。

左から、宮﨑あずさアナ、小林翔、千葉翔也、土屋神葉、佐藤未奈子

まずは“Z世代の公共メディア”である「NABE」のライブ配信。6月にも同じ「NABE」の企画として「“イッキ見”を出演者と同時視聴の会」が配信され、その様子は以前の記事でも紹介していますが、今回は第18話「真実」の本放送の同時視聴になります。出演者たちも、完成した映像を見るのは、これが初めて。緊張感が高まりますね。

配信のスタジオに集合したのは、青野一役の千葉翔也さん、佐伯直役の土屋神葉さん、小桜ハル役の佐藤未奈子さん、そして原作漫画の担当編集者である小学館の小林翔さん。司会は、NHK仙台放送局の宮﨑あずさアナウンサーが務めました。6月はリモート出演だった宮﨑アナですが、今回は念願のスタジオ参加。配信の後半では、アニメの制作統括を務める坂田淳チーフ・プロデューサーもトークに加わりました。

具体的な内容は、「青オケ」の公式SNSでもライブ配信の様子を次々と公開していたし、現在でも「NABE【NHK公式】YouTubeチャンネル」で視聴可能なので、詳細はそちらをご確認いただくとして。ここでは、画面には映っていなかった出来事を紹介していきましょう。

個人的に少し驚いたのは、今回の配信の構成を確認しようとして、スタッフの方に「構成台本、余っていますか?」と聞いてみたら、「紙の台本、ないんですよ」と言われたこと。えっ、どういうこと?

今回の構成台本は電子データになっていて、出演者・スタッフとも、タブレットで台本を確認している(カメラマンのみ、カット割りを考える都合があるので、特別にプリントアウトしている)そうです。ライブ配信中に、出演者たちがみんなタブレットを手にしたのは、そういうことだったんですね!

このタブレット、配信中に宮﨑アナが「登場キャラクターの一覧を表示して、それぞれの関係性を手書きで図式化していく」場面でも使われておりました。

また、この配信では撮影8Kカメラを使用して、その高精細画像を生かして1台のカメラから8つのポジションを切り出し(それぞれの映像で、別々のカメラワークが可能)、それをパソコンでコントロールしているとのこと。すっげえ、映像制作の現場って、そこまで進んでいるんだ……。ちなみに、NHK放送技術研究所の最新技術だそうです。

さて、配信の前には、宮﨑アナがヴァイオリンを演奏するサン・サーンス作曲「動物の謝肉祭」の「ライオンの行進」を収録。この演奏は、配信の後半、「粗品のクラため」の放送スタジオと中継が繋がるときに使用されることになります(どんなふうに使われたのかは、配信をチェックだ!)。
この曲を弾くときに、宮﨑アナは一切楽譜を使わずに演奏。また収録後にも、その場でいろんな曲を次々と弾きこなしていて、すべてが暗譜。おお、そんなにレパートリーがあるんだ!

第18話「真実」の放送中は、アニメの緊張感のある内容に出演者たちも見入っていたけれど、放送後は具体的な感想をしっかりとトーク。アニメを見ているだけではわからない制作の裏話や、声優陣によるキャラクターの人物像の掘り下げ、原作の阿久井真先生と二人三脚で作品を作り上げてきた編集・小林さんが明かした執筆時のエピソードなど、青オケを好きな人にはたまらない話題が次々と登場します。

そのほかにも、作品のモデルになった千葉県立幕張総合高校シンフォニック・オーケストラ部(小林さんは同部の出身)の演奏を含めた紹介や、出演者による“こだわり3ポイント”、「N響×青のオーケストラ コンサート」の振り返り、アニメのエンディングテーマ「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」を手がけた霜降り明星・粗品さんや青野一の演奏を担当した東亮汰さんがラジオ番組のスタジオから生中継で参加したトークコーナーなど、これを見たうえで青オケを見直してみると、味わいがさらに深まること間違いなしの内容でした。

この配信と「粗品のクラため」は、どちらも「生」で、しかも「NABE」が使用していたスタジオは、「粗品のクラため」のスタジオがあるNHK放送センターとは別の場所。そのため、両方に出演する千葉翔也さんと佐藤未奈子さんは、ライブ配信の途中で移動することになりました。「粗品のクラため」との中継時には、そちらのスタジオに居なくてはいけないという、なかなかタイトなスケジュール。ほら、千葉さんは、こちらのスタジオに来てるでしょ?

「青オケ」エンディング曲に込めた粗品の思いが明らかに

「NABE」のライブ配信が終わると、そのまま「粗品のクラシックためにならない話」の生放送がスタートしました(そのため「NABE」の配信の最後には「粗品のクラため」冒頭のスタジオ映像が少しだけ収められています)。この「粗品のクラため」は、クラシック好きとして知られる霜降り明星の粗品さんが司会を務め、難解でとっつきにくいと言われるクラシック音楽を、小難しい話抜き、ムダ知識満載で楽しもうというクラシック・トークバラエティー。2022年から不定期の特番として放送されているこの番組、今回が3回目にして初の生放送となりました。

解説は、第1回放送から出演されている音楽評論家の片山もりひでさん。今回は「青のオーケストラ・コラボSP」ということで、主人公・青野一の声を担当した千葉翔也さんと、青野の演奏を担当したヴァイオリニストの東亮汰さんがゲスト出演。さらにナレーション(天の声)を、小桜ハル役の佐藤未奈子さんが担当。佐藤さんは「天の声」ということで、副調整室の横にあるアナウンス・ブースから参加しています。

このコラボが実現した背景には、もちろん、「青オケ」のエンディング曲である「夕さりのカノンfeat.『ユイカ』」の作詞と作曲を粗品さんが手がけていることがあります。今回の番組では、クラシック音楽のムダ知識(と言いつつも、実は「ためになる」話が多数含まれていますが。笑)だけでなく、この曲に込めた粗品さんの思いも紹介されることになりました。

番組自体は1時間40分という長さでしたが、そこには多くのコーナーが! 「青オケ」でも印象的に登場する「交響曲第9番『新世界より』」を作曲したドヴォルザークを取り上げた「作曲家のためにならない話」、東さんの高校時代の音楽活動に迫る「音楽家生態調査・東亮汰編」、片山さんが選んだ千葉さんへのおすすめの1曲など、番組のレギュラーコーナーと「青オケ」がコラボしています。

東さんは、高校の先輩である反田恭平さん(ショパン国際ピアノコンクールで第2位に輝いた、あの反田さんです!)の指揮で、「行きつけのラーメン店」を題材にしたオリジナル曲の合唱に参加したエピソードを披露。そのユニークな歌詞を佐藤さんが紹介して、粗品さんが全力で突っ込みを入れる場面もありました。

ほかにも、東さんによる「カノン」の生演奏や、「青オケ」の世界とおなじく 音楽系の部活動に励む高校生との生電話コーナー、青野一の人物像を千葉さんと東さんの言葉で掘り下げていく「音楽家生態調査・青野一編」などが続き、そこにリスナーからのメッセージも……。もうね、1時間40分では、全然足りないんですけど! フロア・ディレクターさんが「話をまとめて、次のコーナーへ」というカンペを、いつも出演者に見せているような状態。そんな、企画マシマシで時間に追われ続ける生放送を、粗品さんが的確に仕切っていきます。

そして番組の後半では、「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」に込めた思いを、粗品さんはNHKの番組では初めて語っていきます。原作を読んで感じた魅力を、歌詞の中で表現したいと思ったこと。アニメでは流れない2番の歌詞は、ヴァイオリン初心者であるキャラクター・秋音律子のことを思って書いたこと。作曲するときに「ヴァイオリン初心者が弾けるよう、開放弦のコードで作った」こと(初心者が弾ける工夫の詳細は、東さんが実演してくれます。ぜひラジオでチェック!)。自分も「カノン」が好きで、それをモチーフに生かそうと考えたこと……。
そこでは、お笑い芸人であると同時に、音楽活動に対して真摯に向き合っている、音楽家・粗品としての顔を見せていました。

ちなみに、粗品さんは「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」のレコーディング時に、こんなことも語っていました。多分、これは生放送の中でも、そこまで明かされていなかったよね?

もともと原作を読んでいて「深い作品やな」と思っていたんですよ。孤高の天才やった男がオーケストラではこうだとか、初心者の女の子がゼロから楽器を始めていろんな気持ちの変化があったりだとか。漫画やから、音が聴こえなくて、言うたら不利やないですか。オーケストラをモチーフにした作品って。それでも心理描写がすばらしくて、すっと伝わってくる。そのときに感じた、何かに青春を捧げている学生たち、彼らに「いま体験している時間はとても貴重なものだから、後悔しないように楽しんでほしい」という思いで、この曲を書きました。

作曲が先で、第2段階が作詞やったのですが、そこでもアニメの制作スタッフと話をさせてもらって、そのときにめちゃくちゃイメージが湧いたんですよね。先方から「青春感やエモさを大事にしたい」という話と、モチーフになった学校がこういう場所にあって、帰り道には潮風が感じられて、みたいなことを聞いて、めっちゃいい打ち合わせができたんですよ。オーケストラの音が重なっていく楽しさや、青春の高揚感みたいなものも伝わっていたら、うれしいですね。

僕は「音楽の道でもがんばろう」と決めて、音楽活動を行うときは、お笑いに割く時間を削って取り組んできたんです。そのときに2個、でっかい目標があったんですよ。1個は「アニメソングを作る」こと。これは今回、すばらしい形で叶いました。あと、もう1個、「指揮者をしたい」という目標があって。それは今回できたかと言われたらそうじゃないですけれど、この曲の中でN響のみなさんにストリングス演奏を担当していただいて、アレンジに関して細かいやり取りをさせてもらって、もう感激でした。こちらのお願いに対して返ってきた音が、もうすごすぎて……。だから実質、夢が2個叶った気分です。めっちゃうれしかったです。

「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」のレコーディング時に、N響の弦楽メンバーと記念撮影。最前列は、東亮汰。

この「夕さりのカノン feat.『ユイカ』」、古今東西の音楽を知り尽くしている片山さんも大絶賛。そして千葉さん・東さんも、出演者としてこの曲には強い思い入れがあるわけで……。ということで、出演者のみなさんから曲について、粗品さんにたくさんの質問が飛び交いました。

さらに生放送中には、サプライズとして、阿久井真先生からのスペシャルメッセージが!
粗品さん、千葉さん、東さんへの思いや、「青オケ」の音楽にまつわるエピソードがつづられたメッセージを、佐藤さんが読み上げました。そして、番組の最後には 阿久井先生からリスナーの皆さんへぜひ聴いてほしいという1曲として、芥川也寸志作曲「交響管弦楽のための音楽」から第2楽章が紹介されました。なぜ、この曲が選ばれたのか、原作漫画を読まれている方は、思わず「ニヤリ」ですよね? この曲についての阿久井先生のイチオシのポイントも語られていますので、ぜひ放送を確認してみてください。

終了間際には、東京都の土屋神葉さん(!)から粗品さんへの質問も読まれる中で、生放送は無事に終了。その後は、出演者みんなでスタジオを移動し、SNSで公開するオフトーク動画を撮影。あ、普通にスマホで撮影するんですね!
さらに再放送の際に使用する佐藤さんのコメントを収録して、この日のすべてが終わりました。

「NABE」生配信と「粗品のクラシックためにならない話」放送で、アニメ「青のオーケストラ」の魅力を伝えていた「ざんまいナイト」。その内容を把握しておけば、クライマックスの定期演奏会に向けてドラマチックな盛り上がりをみせていくであろうアニメ本編を、さらに楽しめること間違いなしです!


「粗品のクラシックためにならない話」(再放送)
ラジオ第1(全国放送 ※山形・新潟県除く)
9月23日(土曜・祝日)午後2:05~2:55、午後3:05~3:55(途中ニュース中断あり)
番組ホームページはこちらから

 「青オケざんまいナイト 特別配信」(NABE【NHK公式】YouTubeチャンネル)はこちらから

取材・文・撮影/銅本一谷