「青のオーケストラ」 
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/

「青のオーケストラ」“イッキ見”を出演者と同時視聴の会
【NHK公式YouTube「NABE(なべ)」】
https://www.youtube.com/live/Htwgn9v_DPg?feature=share で配信中。


Eテレで好評放送中のアニメ「青のオーケストラ」。6月3日と4日には、第1話から第8話までを一挙に楽しむ“イッキ見放送”もオンエアされました。このうち3日の放送の際には、「青のオーケストラ」で各キャラクターを演じている声優陣や演奏家が参加した「裏トーク」を、NHK公式YouTube「NABE(なべ)」にてライブ配信。視聴者と同じタイミングで出演者が番組をイッキ見しながら、ここだけでしか聞けない裏話を繰り広げました。
今回のステラnet記事では、この生配信の裏側をリポートします。


居間でくつろいでいるかのように、みんなで番組を視聴

さて、今回の記事でご紹介する「『青のオーケストラ』“イッキ見”を出演者と同時視聴の会」は、Eテレでのイッキ見放送と同時に、NHK公式YouTube「NABE」で生配信されたコンテンツです。視聴者はテレビでアニメ放送を見ながら、パソコンやスマートフォンで、出演者がその場面の裏話を語る「裏トーク」を楽しむことができました。DVDなどの特典音声としてよくある、「オーディオコメンタリー」に近い形のものですね。生配信だったけど、YouTube「NABE」では現在も公開されているから、いつでも視聴可能。「青オケ」の放送を録画されている方は、うまくタイミングを合わせて再生すれば、6月3日と同じスタイルで楽しむことができます。うん、生配信当日の様子を取材していた私も、一視聴者として、改めて感動を味わえるわけだな。

ところで、この「NABE」って何? そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。ということで、少しご説明を。「NABE」は2022年3月にスタートした“Z世代の公共メディア”。YouTubeやTwitterなどのSNSを通じて、「サクっと短く、時にはじんわり、それぞれの日常を後押しする。」をコンセプトに、「沼にハマってきいてみた(沼ハマ)」「さくらひなたロッチの伸びしろラジオ(のびらじ)」「虹クロ」など番組とのコラボや、NABEオリジナルのライブ配信を実施しています。

ジャンルは、ライフスタイルやお金・資産に関するものから、時事問題の解説、防災、ラジオ劇場、バラエティー、音楽・伝統芸能まで多岐にわたり、ショート動画も含めると、YouTubeで公開されているコンテンツは、実に200本以上。「『NABE』にみんなが集い、自分好みのアレンジを楽しめるような場所へ」というコンセプトで運営されています。百聞は一見にしかずだから、まずはこちらにアクセスされたし。改めて見てみると、何でもありの取り組みですよね。「寄せ鍋」ってことなのかな? 

「青のオーケストラ」関連としては、大のアニメ好きでヴァイオリンも演奏するNHK仙台放送局の宮﨑あずさアナウンサー(かつて「あさイチ」でジョジョ立ちを披露したヒト)が、劇中に登場していたパッヘルベルの「カノン」を弾く動画などが公開されています。まぁ、宮﨑アナは他のNHKアニメについても熱っぽく語ってますけどね……(笑)。

ということで、お待たせしました、ここからが本題。今回の「NABE」のライブ配信となる「『青のオーケストラ』“イッキ見”を出演者と同時視聴の会」に出演したのは、「青のオーケストラ」の主人公・青野一役の千葉翔也さん、秋音律子役の加隈亜衣さん、小桜ハル役の佐藤未奈子さんという声優陣と、秋音律子の演奏を担当しているヴァイオリニストの山田友里恵さん。そしてアニメの制作統括である坂田淳CP(チーフ・プロデューサー)も参加し、進行は宮﨑アナが務めました。その現場に足を運んでみると……。

実は私、配信の現場を取材するのが初めて。これまで大河ドラマや連続テレビ小説などのドラマの収録現場、「NHKスペシャル」「NHK歌謡コンサート」などの番組も取材してきたのだけれど、今回の配信が東京・渋谷区にあるビルの1フロアに機材を搬入しての制作ということに少し驚きました。出演者控室も、スタジオの副調整室的なコントロール・スペースも、スタジオに相当する部分も間仕切りなく同じフロアにあって。へええ、こんな感じなんだ!

ちなみに、機材の搬入・設営は、前日の午後1時から。配信中にヴァイオリンを演奏する予定の宮﨑アナの楽器チェックは前日のうちに行われたそうです。記事冒頭の写真を見ていただくとわかるとおり、今回の配信に、宮﨑アナは仙台放送局から参加(ちなみに彼女は、この日の午前中、公開生放送の地域番組「大好き♡東北 定禅寺しゃべり亭」のMCも担当しておりまして。大忙しだ)。そして、演出を担当するグレーヴァ遼ディレクターはNHK盛岡放送局にいて、東京と盛岡と仙台を回線で結んでの配信になります。えええ、そんなことができるんだ!? テレビ番組だと、中継でもない限り、演出するディレクターが現場にいないって、なかなか考えられないんだけど。配信って、なんか、すごい。

一方、出演者たちが登場するセットは、こんな感じのもので。友達の家のリビングにみんなで集まって、ワイワイ言いながら番組を視聴するようなイメージですね。巨大なクッションにゆったりと身を任せつつ、手前に設置されたモニターに映し出される「青のオーケストラ」イッキ見放送を見ながら、自由気ままにおしゃべりをする、と。ちなみに、このセットの美術コンセプトは「家でアニメを見ているような感覚でくつろいで、副音声的にリラックスして話せる空間」だそうです。おお、まさにそんな雰囲気ですね!


出演者打ち合わせ終了後に、生配信がスタート

さて、午後3時の配信開始に向けて、午後1時から回線のチェックとカメラリハーサルが始まりました。ここではスタッフが出演者のスタンドインを務め、カメラ位置の確認やマイクチェックを行っていきます。さらにイッキ見の終了後にもアフタートークを実施して、そこでは山田友里恵さんがヴァイオリン演奏を披露するため、その音合わせも行われました。

今回の配信の制作統括である福原伸治CPは東京にいて、フロア・ディレクターを兼務。配信開始の45分前、福原CPと出演する千葉さん、加隈さん、佐藤さん、山田さん、坂田CPが打ち合わせスペースに集まり、オンラインで盛岡放送局と仙台放送局を結んで(グレーヴァ遼ディレクターと宮﨑アナは、パソコンの画面の中)、段取りの確認がスタート。

あのう、本番開始まであまり時間がないけれど、間に合うのでしょうか?……と、余計な心配をしてしまいましたが、配信開始から終了まで2時間半という長丁場ではあるものの、そのうち1時間40分はイッキ見しながらの「裏トーク」。出演者同士のゆっくりまったりとした掛け合いで、まるで一緒にソファーでくつろぎながら見ているかのような視聴体験をベースにしていました。そこで誰が発言を仕切るのかという基本的なことや山田さんの演奏につなげる段取りなどを確認して、20分ほどで打ち合わせが終了しました。

生配信の直前には、「青のオーケストラ」作者の阿久井真先生が、描き下ろしイラストを添えたツイートを公開していて、これに気づいたスタッフと出演者も大いに盛り上がっていました。
そして、いよいよ生配信がスタート!

生配信は、イッキ見放送の20分前に始まりましたが、具体的な内容については、こちらをご覧いただけれれば、丸ごと楽しむことができます。休憩なしの2時間31分23秒(終了時間は目安として決まっていたものの、トークの流れの中で終わっていい、ということだったので、この時間になりました)、出演者のみなさんが前のめりになって放送を見ていたのが印象的でした。

個人的な注目ポイントとしては、
○配信の仕事が初めてで緊張している佐藤さんに声をかけた千葉さんへの、加隈さんの「そんな手を使っているの?」というツッコミ。
○監督の岸誠二さんは、顔にボールがあたる音にとてもこだわっていた。
○加隈さんは、青野ママ推し。
○佐藤さんは、演じているハルの登場シーンがないにもかかわらず、第1話のアフレコに足を運んで見学していた。
○山田さんは律子がヴァイオリン初心者のため、できるだけ下手に弾くことを心がけたが(目指したのは“しずかちゃんのヴァイオリン”だったそう)、アニメで演奏を聞いてみると考えていたより上手く聴こえた。
○加隈さんは律子のセリフの第一声が鼻歌だったから、とても緊張した。
○千葉さんはアフレコ開始前に、自分でヴァイオリンを購入。そのとき、店の人に「僕、俳優なんです」と説明した。
○宮﨑アナはヴァイオリンを練習するときに、2種類の弱音器を使用している。それを聞いた加隈さんは「律子のセリフを練習するときのために、声優にも弱音器がほしい」。
○佐藤さんは原作の漫画を読むときに、その場面に登場する曲を聴きながら読む。坂田CPの「それは役作りのために?」という問いに対しては、「趣味です」と即答。
○佐藤さんはハルのことが大好きで、家にはハルに関するグッズがたくさんある。
○千葉さんは、第2話の夕方の河川敷で青野が「カノン」を弾くシーンは、何度見ても感動する。今回のように、みんなで見ていても泣けてくる。
○加隈さんの武田先生評は「みんなとなじんでいない、孤立している人に声をかけるのが天才的に上手い」。「1現場に1武田先生いてほしい」とも。

……といったところでしょうか。まだまだ、いろんな裏話が飛び出したのですが、それは、ぜひご自身で確認してみてください。みなさんが口にしていたように「みんなで見ることで、いろんな発見がある」ことを感じられると思います。


イッキ見放送の終了後も配信は続き、アフタートークを展開。そこでは山田さんの生演奏によるバッハ作曲「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番からプレリュード」も堪能することができました。

千葉さんが語っていたように「スタジオがスタジオでなくなったかのような、ほかの音が消えてしまうような」美しい音色が響き、とても贅沢な時間が流れていました。しかも、この曲は、透明感のある明るさが律子の真っすぐな性格に合っているという理由から、山田さんが選んだもの。作品を視聴した直後の演奏だったから、きっと気持ちも込めやすかったと思われて、それが感じられるような熱演となりました。

福原CPによると、その演奏中は生配信の視聴者から寄せられるコメントがぴたりと止まり、みんながしっかり聴き入っていることがうかがえたそうです。そりゃ、そうだ。これだけの演奏を聴かせられた日には……。ブラボー! 演奏が終わると拍手マークが大量に表示され、宮﨑アナが演奏に感激した視聴者からのコメントをリアルタイムで読み上げていきます。
やがて配信終了の時間が迫り、出演者たちはそれぞれが考える「青オケ」の魅力や、今後の見どころ、生配信の感想をトーク。そして午後5時30分過ぎに生配信は無事終了しました。
みなさん、おつかれさまでした!!!

生配信の終了後、グレーヴァ遼ディレクターからは、
「この配信は、アニメファン・声優ファン・クラシックファンなど多方面のみなさまに楽しんでいただけるように制作していました。昨今はアニメを見ながらSNSで感想を言い合うなど、一昔前とは視聴形態も変わってきており、そうした新しいスタイルに合った配信を、NABEというプラットフォームを通じて提供できていたら幸いです。出演者のみなさま、関係者のみなさま、そして何よりこの配信をご視聴いただいたみなさまに感謝いたします」
というコメントが届きました。

アニメ「青のオーケストラ」は、海幕高校オーケストラ部の定期演奏会に向けて、これからドラマチックな盛り上がりを見せていくと思われます。その前に、ぜひ、この「裏トーク」もチェックしておいてくださいね!

取材・文・撮影/銅本一谷