NHKの番組に対する「ほめ言葉」として、「こういう番組がある限り、喜んで受信料を払いたい」というものがある。私の友人、知人だけでなく、世間の人からもしばしばそんな言葉を聞く。

連続テレビ小説、大河ドラマ、ニュース、災害報道、NHKスペシャル、それぞれの人が「受信料を払いたい」と感じる番組はさまざまだろう。最近私が「これはいい」と改めて思ったのが、BSプレミアムで放送された「映像の世紀プレミアム」だ。

出発点となった「映像の世紀」は、戦後50周年、NHKの放送開始70周年、映像(映画)が発明されてから100周年を機に、NHKとアメリカのABCの国際共同取材に基づいて制作され、1995年から'96年にかけて〈NHKスペシャル〉の中で放送された。

それから25年余りの歳月がたっても、全11集の印象をくっきりと思い出すことができる。本当に力の入った優れた番組はそれだけの生命を保つという証明だろう。

原シリーズの“スピンオフ”として放送される「映像の世紀プレミアム」、最近見たものでは「東京破壊と創造の150年」「中国“革命”の血と涙」があり、どちらもすばらしかった。時間を忘れて思わず見入ってしまったほどである。

番組の魅力は、何と言っても大変な手間をかけて収集し、厳選したであろう素材の数々。冒頭から最後まで、当時の映像だけで構成されたその流れの中に、膨大な情報量が託されている。私は「NHKオンデマンド」の配信で見たけれども、繰り返し見て勉強しているという人も多いと聞く。

映像には、解説や文脈を超えてリアリティーが立ち上がる力がある。情報過多な現代だからこそ、映像自体に語らせる番組のあり方が貴重である。

歴史上の人物も、私たちと同じように「今、この時」を生きていたのだと感じさせるのは、最高の歴史教育ではないだろうか。

俳優の山田孝之さんと、アナウンサーの山根基世さんによる語り、そして加古隆さん作曲の音楽は、番組を支える「黄金の三位一体」。これからも長く続いてほしい。

公共放送NHKに視聴者が期待する役割としては、冒頭に挙げたような大河ドラマや“朝ドラ”、ニュースや災害報道に加えて、幅広く優れたコンテンツの制作を望む声は強い。

NHKが人々の心を動かす番組を生み出すことで、日本はもちろん、世界の放送文化が前に進んだら、こんなにすばらしいことはない。

その意味で、「映像の世紀」から「映像の世紀プレミアム」へとリレーされた番組づくりは、NHKならではの心遣いのきめ細かさ、丹念な職人魂などが込められた世界に誇るものになっている。NHKの良心がそこには映っていると感じる。

(NHKウイークリーステラ 2021年9月17日号より)

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。