「NHK NEWS おはよう日本」は、私自身最も見る機会の多い番組の一つである。平日は朝5時から8時まで放送していて、私が視聴するのは朝7時からが多い。出かける前にその日のニュースをコンパクトにまとめてくれるので、とても参考になる。

「おはよう日本」は、多くの若者にとって、NHKへの「入門番組」となっているようで、親が見ているので一緒にという学生も多い。大きな事件や災害のときには特に頼りになる情報源だ。私自身も、長年お世話になっている。

現在(2021年7月)の担当のアナウンサーは、私が見ることの多い7時台では平日が高瀬耕造さんと桑子真帆さん。そして土・日・祝日が新井秀和さんと川㟢理加さん。NHKらしい真面目さを基本としながらも、それぞれの個性がにじみ出るのが面白い。

アナウンサーに加えて、記者のリポートも魅力になっている。時折、「おっ!」と思わず見返すような力のこもったコーナーもある。NHKの未来を考えると、例えば「おはよう日本」のような番組で、アナウンサー、記者の個性が伸び、輝くようなプロセスがあったらいいと思う。

子どものころからの視聴体験を振り返ると、NHKのスタッフの方々の個性的な顔が鮮明によみがえる。

例えば、鈴木健二アナウンサー。「クイズ面白ゼミナール」の名司会が鮮明に記憶に残っている。圧倒的な存在感があって、スタジオで回答者に「書きなさい」と言うのが面白くてよくまねをした。

思わず「殿」と呼びたくなる、松平定知アナウンサー。「その時歴史が動いた」での堂々とした話しぶりが忘れがたい。

NHKの特派員や記者を経て「ニュースセンター9時」のキャスターになった磯村尚徳さんの「ちょっとキザ」だけれども知性に満ちた人となり、「NHKスペシャル〜電子立国日本の自叙伝」の相田洋ディレクターの情熱あふれるお仕事ぶりも印象深い。

「電子立国日本の自叙伝」の語りを担当された三宅民夫アナウンサーは、今、NHKラジオ第1の「マイあさ!」の朝6時40分からを担当されていて、相変わらずの信頼感あふれるお仕事ぶり。7時15分ごろに、「次は、スポーツ!」と言うときの三宅アナの口調が大好きで、ついほほ笑んでしまう。

こうして振り返ってみると、NHKのスタッフの中には随分個性的な人たちがいる。「公共放送の宝」だと思う。外部のタレントさんに番組を任せるのもいいけれど、NHKらしい真面目な親しみやすさからにじみ出る個性の輝きをこれからも期待したい。

未来のNHKで活躍する個性の「卵」や「原石」はないか。そんなことを考えながら「おはよう日本」を見ると、本当に楽しい。ちょっとおちゃめな高瀬耕造さん、感性のしなやかな桑子真帆さんがこれからどう「化ける」か楽しみだ

(NHKウイークリーステラ 2021年7月30日号より)

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。