「太陽の塔」などの前衛芸術や、「芸術は爆発だ!」などの名言のかずかず、凄みのある風貌でおなじみの芸術家・岡本太郎(1911~1996)。その作品群をモチーフにした、Eテレのミニ番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」が今、すごい人気です。7月の初回放送ではEテレ深夜での放送にもかかわらず、SNS上で話題沸騰。その流れでNHK放送博物館にて「展覧会 タローマン」が開催されることになりました。
そもそも「タローマン」とは? 「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」の主人公・タローマンは、ウルトラマンのような巨大ヒーローです。顔は「若い太陽の塔」、体は「太陽の塔」と、岡本作品をモチーフにした外見。その任務は地球を襲う奇獣たち(これも岡本作品がモチーフ)から人類を守ることです。
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ユニークなのは1970年代初めに制作された特撮ドラマという設定で、あえて当時のアナログな特撮手法で、チープなセットやコスチュームを採用していること。奇獣とタローマンの格闘シーンは思わず笑ってしまうアナクロ感です。さらにロックバンド「サカナクション」の山口一郎さんがマニアとして(これも架空)登場、インタビューが挿入されているという念の入れようです。
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展覧会では、タローマンや奇獣たちの着ぐるみはもとより、台本やセット模型、架空の販売グッズに加えて、岡本太郎とNHKとのかかわりも紹介。放送だけではわからない(あるいは気づかない)情報満載で、番組をより深く楽しめるようになっています。放送博物館への入館者ですが、展示開始日の10月18日から11月15日までで入館者10,386人(昨年度は1年間で30,829人)、ステッカー(メンコ)および冊子(タローマン大ずかん)の配布数がそれぞれ約5,000という大盛況。特に11月3日(木・祝)には1,275人というコロナ禍以降の最大数を記録しました(もちろんタローマン展を見た後、当館の別の展示も見ていただけるので、うれしい限りです)。
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客層は生まれたときからデジタル漬けのZ世代から、親子連れ、「ウルトラマン」リアル世代の60代以上まで幅広く、企画展示室はラッシュ時の通勤電車並み。密を避けるために、入館者が一気に展示室に行かないよう誘導するなどの工夫が必要なくらいでした。入場者に話を聞くと、多くは上野の東京都美術館と放送博物館をハシゴしていて、グッズ購入(Tシャツやバッジ)は都美術館、じっくり見るのは放博という流れのようです。展示の評価は高く、「こんな充実した展示が無料でいいんですか?」といわれて苦笑を禁じ得ない場面もしばしば。
展示品の撮影は自由なので、展示室は大撮影会の趣です。撮影に夢中で閉館時間に気づかない人もいて、館員や警備員が退館をうながすことも珍しくありません。展示室内のタローマンのコスチュームは、初めの数日間、都美術館で展示中だったため、当館のタローマンのマネキンは裸。胸に「出張中」の張り紙をして対処していましたが、「これはレアだ!」と喜んで撮影される方もいて、これには驚きました。
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さて、タローマンはなぜこんなに人気なのでしょうか。番組のアナログ感、アナクロ感が若い世代には新鮮で、高齢者には懐かしい、そんな理由もあるでしょう。しかし、私見では、岡本作品独特のエネルギー、ユーモア感覚、温かみのある色彩と形が番組に満載で、そこにヒントがあるように思います。番組の各回のテーマはすべて岡本太郎のメッセージとなっていて、サブタイトルにいわく「孤独こそ人間が強烈に生きるバネだ」「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」「真剣に、命がけで遊べ」……。岡本作品(とタローマン)は、元気のない今の日本で、老いも若きも知らず知らずに求めている「何か」を強烈に発信しているようです。それはいったい何なのか……。答えは、放送博物館に足を運ぶことで見つかるかもしれませんよ。
今年は「太陽の塔」が象徴した大阪万博から55年、次の日本国際博覧会2025年は、放送100年の節目。岡本太郎と万博と放送博物館との不思議な縁を感じます。展覧会はあと数週間続きますが、コロナの第8波が懸念されている中、感染対策に留意しながら、もっともっと多くの方々にご覧いただきたいと、館員一同願っています。
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(取材・文 NHK放送博物館 野崎博之)
1階ロビー展示:12月11日まで/3階企画展:12月4日まで開催中 ※休館日除く
https://www.nhk.or.jp/museum/project/2022/2022110101.html
※関連情報
Eテレ「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」
https://www.nhk.jp/p/taroman/ts/M7359Q6PQY/schedule/
総合「タローマンヒストリア」 12月3日 放送決定!
https://www.nhk.jp/p/taroman/ts/M7359Q6PQY/blog/bl/pNdv7B2a61/bp/pbOxGGDRJ9/
東京都美術館「展覧会 岡本太郎」
https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_tarookamoto.html