NHK総合で不定期に放送されている「世界はほしいモノにあふれてる」のトークイベントが、9月20日に滋賀県草津市の立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催。9月23日に放送された「幸せのスパイス&ハーブをめぐる旅」をテーマに、学生と制作者が交流した。
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今回は、イベント終了後に開催した登壇者4名によるアフタートークを紹介します!
【イベント登壇者】 左から、9月23日(金・祝)に放送された「幸せのスパイス&ハーブをめぐる旅」のゲスト、スパイス料理研究家・水野仁輔さん、ディレクターを担当した佐々木浩人さん、「せかほし」ファンで今回の企画を立ち上げた竹田千夏さん(立命館大学食マネジメント学部4回生)、河本真尋さん(立命館大学食マネジメント学部3回生)。

「好きなことを仕事にする? しない?」

竹田 今回は、学びにあふれるお話をたくさん伺うことができ、ありがとうございました! 物事に興味を持ったら、まずはトライしてみるという水野さんの行動力は本当にすごいなと思いました。やはり、とても勇気がいることだと思うので。

水野 思いは形にしてみることで何かが見えてきます。行動しないと何も起こらないですしね。

佐々木 でも、そもそも、「何が本気で好き」で、「何がそこまで本当は好きじゃない」かって意外と分からず、なんとなくモヤモヤと行動できない人って多いような気もするんです。水野さんの場合は大学時代、カメラマンになりたかったんですよね。でも社会人になって全然撮影しなくなったことから、それほど好きじゃないことに気付いた。そして、今大学時代に思い描いていたのとは違う仕事、そして、好きなことを見つけていらっしゃる。

水野 そうですね。よく「好きなことを仕事にするためにはどうすればよいですか?」という質問を受けますが、僕はあんまり考えたことないんですよね(笑)。好きなことを趣味でやっているだけでは留まらないくらい、もっと時間を割きたい、例えば、長期休暇をとってでも何かをやりたいってときに、後から仕事にすればいいとも思っているんです。僕は20年間サラリーマンをやっていましたが、その間もカレー作りや本の執筆などの好きなことはできていたので、全然悩んでいませんでした。ですが、好きなカレーをもっと研究するために長期間の海外渡航をしたいってときに、初めてサラリーマンを辞めて、料理研究家になろうと決めました。

河本 今回お話をお聞きして、好きなことを仕事にされている方って、人生の選択肢をたくさん持っている方なんだなと感じました。だから私も、好奇心と行動力を大事に、いろんな世界を見て回りたいと思います。その経験を踏まえて、今後のキャリアを考えていきたいです。

佐々木 ちなみに、僕の場合は、「好き」になるために努力をすごくしましたね。だからNHKの番組をめちゃくちゃ見ましたし、テレビディレクターの仕事もたくさん調べました。それこそ、50年ぐらい前のNHKの紀行番組なども見ましたね。

水野 自己暗示をかける感じですね。

佐々木 そうですね。「テレビ」にたくさん時間をかけ、そして実際に仕事を行っていくなかで、「この仕事が好きなんだ」ってより強く思えるようになりました。だから、学生の「これぐらいの思いで、進路選んでいいのかな」という悩みは共感しますね。

水野 厄介なことに「好き」は変わるもの。僕が大学時代はカメラが好きで、今はカレーが好きなように。だから、流れに身を任せて全然関係ない業種の企業に入っても、面白いと感じる可能性もあるんですよね。今振り返ると、以前は「カレー」を突き詰める必要はないと思っていて。アイデアを生み出したり、自分なりの面白がり方を探したりすることが楽しくてやっているんですよね。その好奇心がなくなることがいちばん怖いですね。


「好き」なことはとことんやってみる

水野 僕は、自分の活動を通して、多くの人に「スパイスの魅力」を届けたい……とは正直思っていません(笑)。1人でも何か感じてくれたら、それだけでいいんですよ。

佐々木 僕は放送人として、自分が面白いと思うものをより多くの人に届けたいという思いはありますが、番組制作するうえで、想定する視聴者は母親なんです。具体的な人を想像しないと、“マス”の気持ちを動かすことも想像できなくて。そこは自分の一つの軸となっていますね。ただやっぱり、自分が面白いと感じた気持ちをいちばん大切にしています。

河本 私も自分の気持ちを大切にする方です。先日「海外協力隊」に応募したのですが、そのきっかけが、高校生の時にフィールドワークでウガンダに滞在した時の経験。現地の方は不便を感じながらも、すごく楽しそうに生活されていて、今よりも暮らしやすい環境にできたら、もっと多くの人が楽しい生活ができるんじゃないかなと。「してあげたい」というよりは、自分自身興味をもって、面白いなと思っているんです。自分が興味を持てるものに出会えていることは、幸せだなと思います。

水野 「これが面白い、私はこれが好き。だからやりたいんです」という考えは、とても共感します。すごく応援したくなります。とことんやってほしいですね。

竹田 私も自分のやりたいことをやって、そのなかでその活動が一人でも届いたらいいなって思います。私は「コーヒー」がすごく好きで、コーヒーをきっかけにすてきな出会いもありました。世界で広く愛されるコーヒーには、いろいろな広がりや可能性があると感じています。今後もコーヒーに携わっていきたいと思っています。


“好き”を連鎖させていく番組「せかほし」

佐々木 せかほしでは、ステキなモノをきっかけにして、皆さんが興味を持って、お店やその国に出向いてみたり、そこで店主や友人と新たに出会うなど、新しい世界を開くキッカケとなってほしいと思って、番組を制作しています。

実際、せかほしファンの方から「自分の中の好きが連鎖していくところが、この番組の魅力」という声を耳にしました。竹田さん、河本さんもそんな思いを持ってくださっているかもしれませんし、水野さんも好きの連鎖を紡ぎながら、人生を楽しまれている方。番組MCの鈴木亮平さん、JUJUさんも、それぞれの好きなものを一切否定しない、自分の好きが守られる場所づくりを行ってくださっています。そういった方々とご一緒できていることは、本当に幸せなことだと思っています。

河本 今回、「せかほし」をテーマにイベントを実施したいという私たちの思いに対し、すてきで面白い大人の方々がたくさん協力してくださったことに本当に感謝しています。就活をしているなかで、「大人はこわい」って思うこともあったんですが(笑)、大人だから、学生だからではなく、人として向き合うことが大切だと改めて感じました。

竹田 私も、大好きな「せかほし」と一緒にイベントが実現できて、今とても感動しています。「イベントをやりたい!」という率直な思いから行動をおこし、みなさんの優しさに支えられて、今日実現することができました。今後も、いろんな人のご縁を大切にしながら頑張っていきたいです。本当にありがとうございました!


それぞれの「好き」とそこから広がる可能性について語り合ったアフタートーク。「好き」という思いを大切に、「せかほし」という番組を通して人と人がつながる。そしてまた新たな「好き」が生まれていく。そんな広がりを生み出す力こそが、この番組の魅力。「世界はほしいモノにあふれてる」を見れば、きっと「私は好きなモノにあふれてる」と気がつく日が来るだろう。