撮影/三浦一馬
著名な美容研究家であり 自らが設立した美容スクールで後進を指導し、現役のメイクアップアーティストとしても活躍を続けるばやしてるさん(86歳)。長時間マスクをつけるのが日常的となった今の状況でも、表情豊かに笑顔で過ごすコツをうかがいました。
聞き手 松島志央里

●マスクの下をしゃっきり戻そう

——今はマスク生活が当たり前ですね。

小林 ええ。顔の表情が乏しくなりがちなうえに、顔の下半分を使わなくなる。美容業界では「もへじ問題」と言っています。

——へのへのもへじの、もへじ?

小林 「もへじ」に当たる顔の下半分がダラッと下がっていく問題です。

——口元と顔の輪郭ですね。

小林 顔の下半分は大人になって形成されるところで、いちばん年齢が出やすいところですから。対策としてはマスクの下で口を一文字にしてみましょう。への字ではなくて水平に。常に「一文字の左右対称かな」と心がけるだけで良いトレーニングになりますよ。

顔の下半分は大人になって作られる

子どもの顔は目から下の部分が短い→顔の下半分が伸びて大人の顔に整う→マスクをつけると下半分を意識しなくなる。

口元を一文字にするだけでトレーニングに!

気を抜くと口はへの字に下がりがち。意識して水平に。左右対称の一文字をキープ。

●笑顔の鍵は「口角挙筋」

——への字口元が定着すると不機嫌に見えますね。笑顔もぎこちなくなりそうです。

小林 そこで意識してほしいのが、口の端にある「こうかくきょきん」。歯を見せて「イー」、口を縦にして「オー」の形を繰り返す練習を、気が付いたときにやってみてください。


●マスク荒れはなぜ起こる?

——マスクによる肌のお悩みも小林さんのもとに寄せられていますか?

小林 男女問わずありますね。触れてこすれますし、呼吸の蒸気で常に湿っているので毛穴が開くという声も多いです。しかもマスクを外すと急に気化して蒸発しますから、乾燥もします。まずは顔を洗って清潔に。それから鼻とその周りの頬を収れん化粧水でケアして、肌を引き締めつつ潤いを与えるといいですよ。
…アストリンゼントローションとも呼ばれる、主に肌を引き締めるための化粧水。

イラスト/井竿真理子

 


 

●眉を変えると印象が変わる!

——メイクのポイントもマスク生活でだいぶ変わったのではないでしょうか。

小林 アイメイク用品が売れるようになったといわれています。中でも眉は表情にとって重要な部分。眉ペンシルで、少し描き足すくらいで印象が変わりますから、ぜひ活用してほしいです。今日は喜びの顔にしたいとか、厳しい顔で大きな契約を決めようという顔なのか、それは眉で相手に伝わります。

——どんな顔にしたいか、ですね。

小林 優しいのか、厳しいのか、強いのか。もういろんな感情をね、眉こそ表現できるツールなんです。男女問わず、マスク時代だからこそ眉に着目してほしいですね。

目や口の形は同じでも、眉の形や位置だけで印象は大きく変化。

●お手入れで眉はよみがえる

——その大事な眉は、どうやってお手入れするといいんでしょうか?

小林 眉尻から眉頭の方に向かって逆向きにブラッシングをするのが基本。眉毛専用の小さいブラシは薬局などで簡単に入手できますし、柔らかめの歯ブラシなどで代用してもいいですよ。そうやって根元の汚れやフケを落とすと眉毛の生え変わりがスムーズになります。最後に毛の流れに沿って整える。

男性も女性もこのお手入れを日常に取り入れると、生き生きした元気な眉毛に近づきますから、眉で表情や印象を作るのも、より楽しくなると思います。

「眉も髪と同じ“毛”です。根元に汚れがあると健康が損なわれます。まずは根元を清潔に」(小林さん)
イラスト/井竿真理子
♦インタビューを終えて 松島志央里
スタジオ収録時はアクリル板などで感染対策の距離をとりましたが、朗らかにお話しくださる小林さんにつられて私も自然と笑顔になりました。また笑顔で口角が上がると、声は高く明るい印象になるとうかがい、口角を意識した一文字体操を続けています。マスク生活が続きますが、工夫しながら小林照子さんのように前向きに毎日を過ごしたいです。

※この記事は、2021年6月23日放送「ラジオ深夜便」の「健やかに美しく(後編)」を再構成したものです。

(月刊誌『ラジオ深夜便』2021年10月号より)

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