これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
今回は、視聴者の方から届いた質問をおさらいします。「もみじは、イチゴやブドウと違って食べるわけではないのに、なぜ〝もみじ狩り〟と言うのでしょうか?」 (鈴木保宏さん・70歳)う〜ん、確かに!


答え:〝狩り〟じゃないとお下品だったから

詳しく教えてくれたのは、京都ノートルダム女子大学・鳥居本ゆき名誉教授。

「もみじ狩り」 という言葉が生まれたのは、平安時代。そしてそれは、平安貴族ならではの独特なルールから名付けられたものだと言います。

秋が深まると一斉に色づく山 や木々を見て楽しむ、いわゆる「もみじ狩り」は、古くから日本人に好まれてきました。しかし、平安時代の貴族たちは、ふだんは都の中で生活し、特別な目的があるとき以外、平安京の外に出かけることはありませんでした。

さらに貴族の移動手段は、主にぎっしゃや馬。自分の足で歩き回ることは、貴族としてはあるまじき行為、極端にいえば、下品だとされていたのです。

とはいえ、やはり、山一面に広がるもみじを見たい! 絶景を求めて山中を自由に散策したい! と考えた貴族たち。目をつけたのが「狩り」でした。

狩りは、「ものもうで」や「物見」と並んで貴族が都の外に出る立派な口実。しかも、獲物を探すために、足で歩き回るのも当然です。そこで、表向きは狩りに行く(だから下品ではない)という体裁にすべく、「もみじ狩り」という言葉を生み出したのです。これがやがて江戸時代の庶民に広まって、現在まで残っていると考えられるそうです。

現存する文献で、「もみじ狩り」という言葉が初めて登場した和歌。平安末期の歌人・源俊頼によるもので、「にわか雨がやんで、山でもみじ狩りをしようとしたが、強い風が吹いてきてしまった」という情景を詠んでいる。

(NHKウイークリーステラ 2021年12月17日号より)