これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
夜に布団に入ってもなかなか眠れない。そんなとき、「ヒツジを数えると眠れる」という話を聞いたことはありませんか? でも、それってなぜ、猫でもなく犬でもヤギでもなく、ヒツジなのでしょうか?


答え:「ヒツジ」と言うとリラックスするから でも日本語じゃダメ

詳しく教えてくれたのは、眠りのメカニズムについて長年研究している、日本睡眠改善協議会の白川修一郎理事長。

眠れないときに、ヒツジを数えるのは、それによって体がリラックスして、眠る準備を始めるため。そもそも人が眠るときには、体全体の動きをコントロールしている自律神経のうち、体が活発なときに働いている「交感神経」よりも、リラックス状態になる「副交感神経」のほうを優位に働かせる必要があります。

呼吸が落ち着くことで、交感神経よりも副交感神経が優位となり、眠っている状態へと導かれる。

その切り替えのスイッチになるのが、呼吸です。そして、この切り替えに、ヒツジという言葉が非常に適しているというのです。

といっても、日本語の「ヒツジ」はダメで、「Sheep」と、英語でないと意味がありません。もともとこの習慣は、英語の「Sleep(寝る・睡眠)」と「Sheep(ヒツジ)」の発音が似ていたことから始まったものだといわれています。

寝る前にヒツジを数える習慣は、「sleep」 と「sheep」が似た発音だったことから英語圏で始まった。これが欧米のアニメなどが翻訳された際、日本でも定着したと思われる。

さらに、sheepが「ゆっくり息を吐く言葉」であり、「それを繰り返す」ことに意味があると白川理事長。

つまり、いわゆる日本語の「ヒツジが1匹、ヒツジが2匹……」と唱えたのでは、息をゆっくり吐くことにはならないので、呼吸を落ち着け、眠りに導く効果は期待できないというわけです。

「シープ」と繰り返したときの呼吸、自律神経の状態、脳波を測定。すると、やがて呼吸はゆっくり、副交感神経が優位な状態に。実験開始7分後には眠りについた。
一方、「ヒツジ」を繰り返し唱えても、呼吸は浅くて速いまま。リラックス状態に切り替わることはなかった。

(NHKウイークリーステラ 2022年2月18日号より)