これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
フライドチキンに竜田揚げなど、油で揚げた料理が多い鶏肉。でも、肉を揚げた料理には、とんカツや牛カツもありますよね。それなのに〝から揚げ〟といえば、なんといっても鶏肉が定番。それって一体なぜでしょうか?


答え:鶏肉は3つの理由で奇跡の肉だから

詳しく教えてくれたのは、北里大学獣医学部の有原圭三教授。
から揚げに鶏肉ばかりを使うのは、鶏肉には、揚げるとおいしくなる要素が奇跡的に3つそろっているからだと言います。

その要素の1つめが、コラーゲンの量。コラーゲンは、皮膚や骨を作るたんぱく質の一種ですが、これを多く含む肉は、加熱によってかたくなるという性質を持っています。

しかし鶏肉は、牛肉、豚肉と比べるとコラーゲンの量がとても少ないため、高温で揚げても、やわらかさが保たれるというわけです。

コラーゲンは筋肉を取り囲んでいる膜のようなもので、65度以上で短時間加熱されると縮んで筋肉を圧迫。これを食べると「かたい」と感じる肉に。つまり、コラーゲンが少ない肉のほうが、筋肉が圧迫されず、加熱後もやわらかい。

要素の2つめが、水分量。肉のおいしさの基準として、水分=肉汁が豊富でジューシーかどうかがよく言われますが、調理前の肉の水分含有量で、鶏肉は、牛肉、豚肉を抜いてトップ。つまり、最もジューシーなのです。

鶏肉を高温の油の中に入れると、まず表面の水分が蒸発。すると、その隙間に油が入り込み、表面だけが一瞬で加熱され、壁を作る。この壁で中に水分が閉じ込められるため、鶏のから揚げはいちばんジューシーなのだ。

要素の3つめは、脂が溶ける温度です。日本人の平熱は、約36〜37度。それに対して、鶏肉の脂が溶けるのは、牛肉や豚肉よりも低い30〜32度。だから、冷めてしまったから揚げでも、口の中に入れるとその熱で脂が溶けるため、おいしいと感じやすいのです。

脂は、口に入れると唾液によって脂肪酸に分解される。そして舌がその脂肪酸を感知すると、脳に味を伝える能力が格段にアップ。よりおいしいと感じる。つまり、脂が口の中で溶けやすい鶏肉は、おいしいと感じやすいということ。

鶏のから揚げは、やわらかく、ジューシーで、冷めてもおいしい。この三拍子がそろった、まさに最強の料理!なのです。

(NHKウイークリーステラ 2022年2月25日号より)