これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
昼間、人に会ったときのあいさつ、「こんにちは」。ほとんど無意識に使っていますが、改めて考えてみると、一体どういう意味なのでしょうか?ステキな大人の皆さん、ちゃんと説明できますか?


答え:こんにちは、とてもご機嫌がいいですねの略

詳しく教えてくれたのは、国立国語研究所の小木曽智信教授。

「こんにちは」を漢字で書くと「今日は」。「こんにちは」は、本来、このあとに続く言葉が省略されてできたあいさつだといいます。

実際に、室町時代に作られた狂言のりふ集『秀句がらかさ』には、「こんにちは、ひとしほきげんがようござる(きょうは一段とご機嫌がいいですね)」という文言が、あいさつとして載っています。

どうやら、当時は、相手に合わせた文言をその場で作るのが普通で、今のように、ひとことで言えるあいさつの言葉はなかったようなのです。

江戸時代には、さまざまな店ができ、店の人が客とあいさつを交わす機会も増加。かつ、いちいち長いあいさつをしていると客を逃してしまうため、「こんにちは」だけをあいさつとして使うようになった。

ところが、江戸時代の終わりごろに書かれた小説には、「こんにちは」が、あいさつの言葉として登場しています。つまり、「こんにちは」単体があいさつとして使われるようになったのは、江戸時代。

これは、長く平和な時代が続き、商業がどんどん発達していく中で、商人たちが短く省略した言葉を好んだため。確かに、「こんにちは」だけなら、より多くの人に次々と声をかけやすくなりますよね。

明治時代になると、国語の教科書に「こんにちは」があいさつの言葉として掲載された。これによって、「こんにちは」は、正しいあいさつ、標準的なあいさつとして、日本中に広まっていったと考えられる。

(NHKウイークリーステラ 2022年4月1日号より)