朝廷の高級官吏を〝おくげ様〟といいます。字で書くと「公家」と「公卿」にわかれます。
公家は全員の総称ですが、このなかで太政大臣・左大臣・右大臣を「公」、大納言・中納言・参議・三位以上の朝臣を「卿」といいます。したがって公と卿のポストにある朝臣が「公卿」といわれて、朝廷での最高級官僚になるのです。
〝官位〟という言葉がありますね。官というのは官職(ポスト)のことで、位というのは位階(くらい)のことです。第32回のドラマの中では、清盛の官位がいろいろと問題になっているので、このへんのことをすこし説明させてください。
まず位階ですが一位から八位まであります。それも「正」と「従」にわけられます。さらに四位以下は正と従がさらに「上」と「下」にわけられます。したがって一位から三位までは正従で6階級、四位から八位までは正従をさらに上下にわけて20階級、あわせて26階級ありました。
いっぽうの官職のほうは、朝廷に「庁」という役所が設けられ、それぞれの庁に大臣やそれを補佐するポストが設けられました。
主な庁として神祗官・太政官・中務省(中宮職を含む)・式部省・治部省・民部省・兵部省・刑部省・大蔵省・宮内省・弾正台などの中央官庁と、地方官としての大宰府や按察使・鎮守府などが置かれていました。
これらを総称して「太政官制」といいます。
すでにお気づきですね。ナニナニ省とかナニナニ大臣などという呼びかたは今も健在です。つまり今の日本政府も太政官制を踏襲している部分があるのです。
明治維新のときに徳川幕府を廃止して、天皇親政(王政復古)を掲げ太政官を復活させて以降、戦後の新憲法下でも、政府や高級官僚の呼称は基本的には変わりませんでした。
清盛の大納言という職は太政官内のポストです。この役所での最高職は太政大臣で、以下左大臣・右大臣・内大臣とつづき、その下が大納言・中納言で、さらに参議・大弁・中弁・少弁・小納言・大外記・大史・少外記・少史とつづきます。
〝左遷〟というのは左大臣が右大臣に降格されることをいいます。天皇の左側から右側に移されるのを、手前からみると左側に移されるようにみえたからです。
(NHKウイークリーステラ 2012年8月24日号より)
1927(昭和2)年、東京生まれ。東京都庁に勤め、広報室長、企画調整局長、政策室長などを歴任。退職後、作家活動に入り、歴史小説家としてあらゆる時代・人物をテーマに作品を発表する。