鈴木 あきえ
タレント。「王様のブランチ」(TBS系)のリポーターを10年にわたり担当し、人気を博す。その後、結婚・出産を経て、2019年からはEテレ「すくすく子育て」のMCを務める。現在は、3歳の男の子と1歳の女の子を子育て中。
大豆生田 啓友
子育て支援の専門家。玉川大学教授。幼稚園教諭の経験もあり、幼児教育・保育や子育て支援の実践研究を行う。NHKでは、Eテレ「すくすく子育て」などに出演。
テーマ「ひとりっ子&きょうだいの子育て」
「ひとりっ子&きょうだい」を育てるうえでの悩みや不安、迷い、喜びなど、リスナーから寄せられた子育ての日々を共有しました。
聞き手:村上里和アンカー
親だけではなく、“社会全体”での子育てを!
おたより✉ 岡山県・40代女性
私の子どもは4人姉妹で、1歳8か月、4歳、6歳、9歳です。子どもは人数が増えればそれだけ大変ですが良い点もあります。それは助け合いです。家族が増えれば家事の量も増えます。その中で私じゃなくてもできそうなことは、子どもたちや夫に頼みます。1歳の子でも脱いだ服は洗濯ネットに入れ、こぼしたものは小さなぞうきんでふこうとしてくれます。上の子たちは野菜を洗ったり、食器をかたづけたり、たたんでおけば洋服は自分たちの引き出しに入れてくれます。まだまだ手のかかることも多いですが、できないなりにやろうとしてくれる姿が、私の気持ちの余裕、ひとりでやってないんだといううれしさに変わります。それが姉妹の子育ての良い点だなあと感じています。
鈴木 きっと子どもたちは、ママのことをいつも観察しているんでしょうね。
大豆生田 親が頑張っている姿を見て、子どもたちがそういう姿を見せてくれると、本当にほほえましいですよね。
村上 ただ、きょうだいが多いとひとりの子にかけられる時間が限られるといった悩みを抱える方も多いと思うのですが、あきえさんはいかがですか?
鈴木 まさに悩んでいます。子どもがひとりだったときは、一緒にゆっくり遊べたり、その子のペースに合わせて向き合えたりできているなと思っていたんですけど。でも、ふたりになったらそれどころじゃなくて、毎日が過ぎ去っていく感じというか。お兄ちゃんの心の変化や、環境の違いで少し荒れ気味になったところも、本当はもっと向き合ってあげたいんだけど、できていない状況で。子どもの多い親御さんたちは、どんなふうにそれぞれ向き合っているのかなって気になります。
大豆生田 子どもは親子だけではなく、子ども同士で支え合うところがあるんですよね。保育園や幼稚園がまさにそうで、小さいころから子ども同士がお互いをケアし合う。だから、きょうだいが増えたからと言って、「自分は愛されてない」というふうに子どもが感じないのは、親との関係以外にもそういう子ども同士の関係を築いているからだと思います。
鈴木 ということは、ひとりっ子のご家庭も、保育園や幼稚園でのネットワークはとても大事なんですね。
村上 ひとりっ子の親御さんの中には、子どもがひとりっ子であることが発育に不利になるのではと心配する方もいるようですが。
大豆生田 それはまったくありません。むしろひとりっ子の子は、親からしっかり愛情を受ける良さという面では強いと思います。それが自分の強みだというふうに思ったほうがいいですね。また、子どもは親の愛情だけで育つわけではなく、例えば保育園や幼稚園など、いろいろな人たちの中で育てられるので、そこでたくさんの社会性を学んだり、親以外に助けてもらったりすることもとても大事だと思います。
村上 やっぱり子育てというのは、家の中だけでしているわけではないってことですよね。
大豆生田 そうなんです。だから今、日本では「社会全体で子育てをしよう」という方向に行こうとしているけど、まだまだ進んでいません。親ひとりがどうにかしなきゃいけないと思わされるから、みんなが自分の肩に全部背負ってしまっている。本来子育ては群れの中で、社会の中ですることが人間の子育ての特徴なので、もっといろいろな人の力を借りられるといいんですけどね。
鈴木 「他の人の力を借りたら悪いわ」という気持ちが先行するのではなくて、当たり前のように「みんなで子育てしよう」と言えるといいですよね。
きょうだいげんかは良いこと? 悪いこと?
おたより✉ 奈良県・40代男性
6歳の女の子、3歳の男の子、0歳の男の子の子どもがおります。6歳と3歳がとにかく何でも張り合って家の中を走り回るは、おもちゃはひっくり返すは毎日けんかしています。リモコンでもおもちゃでも取りあいのけんかが多いです。お姉ちゃんには「そこで相手にするから余計にけんかになるねんで。相手は3つも年下なんやし自分とは違うんやから思い通りにはいかへんよ」と諭しているんですが、長女はヒステリックに怒ることが多いので、さらに火に油で弟もぎゃーとなる毎日です。次第に私も大声で怒ることが増えたような気がして落ち込んでしまいます。とはいえ、けんかのあとにふたり一緒に何かに夢中になっていたりすると、姉と弟って良いなあと感じるのです。
鈴木 私の家と全く同じですね。このパパのお気持ちがよくわかるんですけれど、うちも1歳半の娘が3歳のお兄ちゃんのおもちゃが気になるんですよね。だから取っちゃうんですよ。お兄ちゃんは、最初は「やめて」とか言っているんですけど、なかなか伝わらないから手が出ちゃう。私もパッと行って叩いたことを怒っちゃうんですけど、よくよく聞くと「先に妹がここをかんできたんだ」とか。上の子にもしっかり寄り添ってあげたいなと思うんですが、手が出ることを先に怒ってしまうという。皆さんはきょうだいトラブルが起きたときは、どうされているのかなって私も聞きたいです。
大豆生田 専門家である前に親としての当事者の話をさせていただくと、うちの2番目の子どもが男の子で3番目が女の子で、2つ違いでなんですけど、もう小さいころは毎日けんかでした。だから私の家も一緒で、怒らずに冷静に叱るなんてできないから、いつもいい加減にしてっていう感じでしたね。やっぱりこのケースは誰がやっても難しいんですよ。ですから、まずは親御さんにも「十分に自分も頑張っている」というふうに思ってほしいなと。その中で大事なことは、子ども側にも言い分があるんですよね。これは保育園や幼稚園でもそうなんですけど、それぞれの言い分をちゃんと聞いてあげる。「なんでそうなっちゃったの?」というのをそれぞれに聞く。あるいは嫌だった気持ちに耳を傾ける。自分の思いを聞いてくれることで、人はそこで「だって、こうだったから」と言えば、「なるほどね。それは嫌だったよね」と答えることができる。結局、それによって気持ちが収まることもあるんですよ。
これはイヤイヤ期の対処法もそうなんですけど、基本的にはその子の気持ちをちゃんと受け止めることが基本です。でも、「そうやったけど、イヤイヤが止まらないんです」という声がありますが、そうなんです、やったからってうまくできるとは限らない。そのときに、私がいつも申し上げるのは、「その瞬間だけで決まるものじゃない」ということ。子ども自身も自分がうまくいかなかったときや、怒ったときにちゃんと聞いてもらえたことが、後々成果として出てくることがあります。私の家も、今は2番目のお兄ちゃんなんかは本当に妹思いでして。2人とも大学生なんですけど、お兄ちゃんから「僕が今ご飯を作るから待っててね」と妹にご飯を作ってあげたりしているんですよ。あんなに無謀にけんかしていた2人がですよ。だから、やはり子育ては長期的なものでもあるので、ちゃんとそのときに自分が大事にされた記憶というのがとても大切だと思います。
鈴木 子育てについて学んだことやアドバイスを実践してうまくいかなかったからといって、「なんだ効果なかったじゃない」ではなくて、長期的に見たときに必ず半歩でも進んでいるというふうに捉えたほうがいいですね。
大豆生田 そうです、子育ては本当に長期戦なんですよね。その瞬間だけで決まることじゃないので、そのときに丁寧にやったことが、あとになって成果として表れると思っています。
村上 おたよりのパパは、上のお姉ちゃんのほうに「3つも年下なんだから、思い通りにはいかないよ」と語りかけることで収めようとしたということですが、上の子に諭すだけではよくないということですね。
大豆生田 そうですね。子どもからすると「お姉ちゃんなんだから、お兄ちゃんなんだから」と言われても納得いかない部分もあります。「だって、僕が大事にしていたおもちゃを勝手に使っちゃったんだもん」という思いがあるわけじゃないですか。だから、おもちゃを取られたほうの気持ちを聞いてあげることのほうが、結果的にはお姉ちゃんも「もう弟を怒ったりしないよ」という気持ちになりやすいと思うんですよね。
鈴木 親としては、とっさに「やめなさい」と叱るのではなく、「どうしたの?」って聞いてあげることが大事ですね。うちの3歳のお兄ちゃんは結構妹を叩くことがあるのですが、そのようなときは?
大豆生田 叩くのは止めていいと思います。ただ、そのときも「ダメ!」と言うよりは「それ、痛いからもう嫌」と、パパとママも嫌だというのをしっかり表情で伝えることも大事ですね。
村上 きょうだいに関しては、上の子に我慢をさせしすぎてしまっているということを気にしている方も多いと思うんですけど、上の子への対処法などおすすめのことはありますか?
大豆生田 よく声をかけてあげることが大事です。「あのときのあれ、ママ助かったよ」とか、「いつもそういうふうにしてくれてありがとうね」とか、「ちゃんとママはわかっているからね」という言葉を子どもに添えてあげること。それだけで、子ども自身も「自分がやっていることをママにわかってもらえているんだ」という気持ちになれると思います。
村上 ズバリ、きょうだいげんかを減らす方法は存在するのでしょうか?
大豆生田 ないですね。でも、きょうだいげんかは良いことでもあるんです。お互いがちゃんと気持ちを出し合える。今外に出て、けんかはできないですからね。これは、きょうだいがいることのメリットと思ってもいいと思います。あんなに感情を出してぶつかり合えるという関係の中で、自分で折り合いをつけたり、相手に思いやりを持ったりするというのは、すごく重要な場だと思いますよ。
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