大阪城にほど近いオフィス街の一角にたたずむ山本能楽堂では、能や上方の伝統芸能の魅力を広く一般に伝える取り組みを続けています。能楽堂の事務局長も務める山本佳誌枝リポーターが“芸能の都”大阪の魅力について紹介します。

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コロナ禍でさまざまな公演が休止となった時期には、文化庁の事業として、デジタル技術を 駆使し映像の配信事業を展開した。演目はおめでたい席で演じられる能『高砂(たかさご)』。

*この写真は特別な許可を得て撮影されました。 写真/山本能楽堂(撮影:七咲友梨)

豊臣秀吉は天下人となった晩年、正妻の北政所に「能に暇なく候(能をするのに忙しくて暇がない)」と手紙を送るなど、能をこよなく愛し、自ら能を演じたことでも知られています。能は六百五十年前に観阿弥・世阿弥親子によって大成されましたが、その後大阪では、文楽、上方歌舞伎、上方舞、上方講談、上方落語、浪曲等、豊かで多彩な伝統芸能が生まれ、演じられ、育まれてきました。

今年は、大阪城天守閣復興90周年の記念の年。秀吉の思いが今も大切に人から人へと伝え続けられています。

再現された黄金の御座船(ござぶね)で大阪城のお堀巡りも楽しめる。

写真/大阪城パークセンター

松の名所を詠(うた)い込んだ数え唄『松づくし』。

太夫・三味線・人形が一体となった文楽。

写真/山本能楽堂

山本佳誌枝 (やまもと・よしえ)
公益財団法人 山本能楽堂事務局長。能楽の伝統を守りながらも「開かれた能楽堂」をコンセプトに、能楽の魅力を発信するために多方面で活動。〈関西発ラジオ深夜便〉「日本列島くらしのたより」に出演中。

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