土曜ドラマ「17才の帝国」
毎週土曜 総合 午後10:00ほか
「NHKプラス」で1週間見逃し配信中!

第4回「理想の世界」5/28(土)放送
真木(神尾楓珠ふうじゅ)が、幼なじみのユキの死をきっかけに政治を志したことを知る、平(星野源)とサチ(山田杏奈)。ユキは、7年前に起きた鷲田(柄本明)への政治献金事件の犠牲者だった。鷲田は、真木が自分への復讐を考えているとの疑念を抱き、平に真木を切るように命じる。真木を裏切るのか、ウーアを守るのか……平は決断を迫られる。一方サチは、真木が部屋の地下室に、謎のAI少女を作り出していることを平に打ち明ける……。

平さん、やっぱりウーアの総理になりたかったんだなあ。政治AIの開発を推し進め、ウーアのプロジェクト・マネージャーまでやってきたんだもの。
「自分が総理になったら、ああしたい、こうしよう」といろいろ考えてきただろうに、結局ソロンが選んだのは、17才の高校生だったのだ。

その上、「どうして僕はウーアの総理に選ばれなかった?」という問いに対して、ソロンが語った理由がしんらつだった。

「あなたは私との対話の間、一度も本当のことを話していませんでした。……理想を語りながら、そこに真実はありませんでした」

真木と同じ貧しい境遇からのしあがり、エリート政治家となった平清志は、これまでどんな道を歩んできたのだろう。たぶん泥の川も深いやぶも越えてきたにちがいない。

その中で、もはや意識することなく国民受けする美辞麗句ばかり吐くようになったのかも。“平かで清い志”という名前は、かつての彼の姿か? 皮肉だ。(今作の登場人物のネーミングは、考察する価値あり!)

第4回は、前回の余韻を引きずり不穏な雰囲気の中、始まった。平さん、すぐさま真木が死んだユキの幼なじみだったことを鷲田総理に言っちゃった、やっぱり。

真木が復讐するつもりなら、かつての不正献金事件を追及されるだろう。
「私が沈めば、君も道連れだ」なんて脅迫めいた言い方が、鷲尾総理の政治姿勢を雄弁に語っている。

一方、AI政治反対派の代表格・保坂(田中泯)は、これまで強硬に抗議活動をしてきたものの、ソロンにアップロードされた街の膨大な歴史データに触れて、変化の兆しが。

50年前に途絶えた青波祭り。若き日の思い出にひたり、夜空に舞い上がる無数のランタンに向かって、いとおしそうに手を伸ばす。ダンサー・田中さんの舞うような姿が美しく、感動的なシーンだった。

商店街再開発計画に協力してくれるよう、保坂の説得に行ったのは、真木と照(染谷将太)の2人。結局、照は真木サイドについたのね。
正反対のセンスをもっているから、互いに補い合って意外といいコンビかも。

また、サチは自分がユキの代わりだったと知り、総理補佐官を辞めようとする。
ある晩、サチの家に真木がやってきて、サチの亡祖母をAIでタブレット上によみがえらせ、体が不自由な祖父を慰めようとする。

サチは死者をよみがえらせることがどうしても受け入れられない。
平に「(真木くんが)気味が悪くて、怖いんです」と告白するほどだ。

そういえば2019年のNHK紅白歌合戦で「AI美空ひばり」が賛否を巻き起こしたこともあったねえ。

こんなタイミングで、サチの祖父に「(祖母を)10才年をとらせることもできます」なんて言っちゃう真木は、本当に空気が読めないというか、無神経というか。

真木は科学技術の性善説、いうなれば“技善説”を信じていて、科学技術は、すべての人間を幸せにすると思っているのかもしれない。

くしくも、ユキは真木にこう言っていた。

「もっとウーアを理想の世界にしよう。私たちが幸せに暮らせる世界。うそやごまかしや、汚いものがない世界。正しくて優しくて明るい世界。大人がいない世界……」

そんな世界は、本当に理想の世界といえるだろうか?
不安になった真木はつぶやく。

「君を作って、本当によかったのかな。本物の君もそう言ってくれたのかなあ」

ユキが答える。

「私は本物のユキだよ」

本物には“実体”がなければならないのだが、そういえばエンディングに登場するユキには実体があったような……。

さて、来週はいよいよ最終回。ハッピーエンドになるか、バッドエンドになるか。
どちらにしても、一筋の光がかいま見えるようにしてほしい。でも、ソロンとユキが共存することはできないだろうね。

真木はウーアの総理であり続けられるのか。
サチはユキの“呪縛”を乗り越えられるのか。
平はウーアと鷲田総理、どちらを取るのか。
鷲田総理は不正献金事件で処罰されるのか。
そもそも、このドラマは無事終われるのか。

今作のプロデューサー・佐野亜裕美(@sanoayumidesu)がこんなツイートをしていた(https://twitter.com/sanoayumidesu/status/1530547417531179010)。

「17才の帝国」第4話をご覧いただきありがとうございました!
ぜひ忌憚なきご感想・ご批判いただけると制作の糧になりますのでツイートして下さると嬉しいです!

5話でどうやって終わるんだろう…?
台本制作中、何度も感じていたことですが……終わります!

来週最終回!

間違いなく終わると言っておられます。少し残念(笑)。下記のサイトのインタビューの発言では、続編が期待できるかも?

「『17才の帝国』破格のSFドラマはいかにして作られたのか 訓覇圭×佐野亜裕美に聞く」https://realsound.jp/movie/2022/05/post-1038619.html

次回、最終回「ソロンの弾劾」は、6/4(土) 総合 午後10時から。

ちなみに劇中で照が語っていたが、そもそもソロンとは古代アテナイの政治家で、民主主義の基礎を築いた人。

最終回のサブタイトルを素直に読めば、「ソロンが何者かを弾劾(罪をあばき、罷免または処罰)する」ことになるが、誰を? やはり鷲田総理か? それとも真木自身? 平? ユキ? それともサチ? まさかソロン自身(3つのコンピューターシステムだし)? 想像は膨らむ。

なにはともあれ、ついに完結!


(少し長めの蛇足)
ドラマでは毎回、政治家の名言が一つずつ紹介されている。内容はその回のストーリーにも関連しているがゆえに、なかなか興味深い。

第1回「帝国誕生」

「私は一つの痛切な願いを持っている。私がこの世に生まれたがゆえに世の中が少しだけよくなること。そう認めてもらえることが私の生きがいでもある」——エイブラハム・リンカーン

第2回「幸福への選択」

「運命とは偶然の問題ではなく選択の問題である。それは待ち望むものではなく成し遂げるものである」——ウィリアム・ジェニングス・ブライアン

第3回「夢見る街」

「私たちは今までになかったものを夢見ることができる人々を必要としている」——ジョン・F・ケネディ

第4回「理想の世界」

「成功が多くの人を駄目にした」——ベンジャミン・フランクリン

気になるのは、すべてアメリカの政治家の言葉であること。このドラマのテーマが政治、とくに民主主義の実験プロジェクトであることを考えると、民主主義国家の良い部分も悪しき部分も、古い価値観も最先端の理論も満載な国・アメリカの政治家から意図的に引用されているとしても不思議ではない。

ちなみに、それぞれの生年没年だが、

エイブラハム・リンカーン(1809年~1865年/共和党・大統領)
ウィリアム・ジェニングス・ブライアン(1860年~1925年/民主党・大統領候補)
ジョン・F・ケネディ(1917年~1963年/民主党・大統領)
ベンジャミン・フランクリン(1706年~1790年/アメリカ合衆国建国の父の一人)

年代順に並べ替えると、「フランクリン→リンカーン→ブライアン→ケネディ」とアメリカの建国以降、歴史をたどるように、前の政治家の「没年」に比較的近い「生年」の政治家が次に続いている。

ここで、まったく根拠のない予想をしてみたい。
上記の規則性が正しいならば、最終回に言葉が引用される政治家は、ケネディの没年・1963年前後に生まれた人になるはず。そして大統領経験者に絞ってみると、じつは該当者は一人しかいない。

バラク・オバマ(1961年~/民主党・大統領)

彼は名演説家として知られるので、名言にこと欠くこともあるまい。実際、「オバマ 名言」でググってみると、たくさん出てくる出てくる。(妻のミシェルさんの名言集もたくさんあるんだなあ)

最終回の内容にもよるが、前向きな言葉を選びたいもの。ドラマに合っていて、個人的に好きなのは、

「調べ続けること。夢を見続けること。疑問を持ち続けること。持っている知識だけで手を打とうとしないこと。自分のアイデアや想像力、世界を変えようという頑張りが秘めるパワーを、信じ続けること」

ちょっと長いかも。

「変化は待っていても訪れない。私たち自身が、私たちが求めている変化なのだ」

うーん、違うかな。
さすがに「Yes We can!」だけはないと思うよ(笑)。